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木村伊量 朝日新聞ヨーロッパ総局長
劉北憲 中国新聞社常務副社長兼副編集長 「中国新聞周刊」社長 高級編集者
添谷芳秀 慶応義塾大学法学部教授
今井義典 日本放送協会解説主幹 小林陽太郎 富士ゼロックス株式会社相談役最高顧問 工藤泰志 言論NPO代表 山田孝男 毎日新聞東京本社編集局総務
朝比奈豊 毎日新聞社常務取締役 加来洋二郎 アセットマネジャーズ株式会社顧問 国嶋矩彦 日本電気株式会社執行役員常務 胡一平 笹川平和財団主任研究員 田中英夫 株式会社セブン銀行常勤監査役
熊澄宇 清華大学教授
朱 霊 チャイナデイリー総編集長 範士明 北京大学国際関係学院助教授 博士 張一凡 チャイナデイリー香港版執行編集長 チャイナデイリー評論員
▼ 「第3分科会発言要旨/前半」 をよむ
▼ 「第3分科会発言要旨/後半」 をよむ
第3分科会では以下3点をテーマに約4時間班にわたって白熱した議論が展開された。すなわち、①世論調査から何がよみとれるのか、②メディアはそ れにどのような影響を与えているのか、そして、③互いの違いを乗り越えてどのような協力関係を築くことができるのか、の3点である。
まず、日本側から問題提起があった。日中両国の関係については、どちらの国民とも歴史認識を除いて、日中関係について、「普通」「どちらとも言え ない」が6割程度占めており、さほど悪くない認識をもっているという結果が出ている。それにもかかわらず、両国民が互いの国について軍国主義や国家主義の 印象をもっている背景には、メディアがステレオタイプ的な考えや前提のもとに情報を処理していることの影響があると思われる。つまり、日中間の認識ギャッ プや、反日、反中的な感情については、メディアがそれを増幅させている可能性があるのではないか。
また、中国側の問題提起として、世論調査はひとつの参考情報であって、それに全面的に依存して世論を解釈することは適当ではないこと、またメディ アとひとくくりに議論することは適当ではなく、メディアの種類、報道内容も多様であり、従ってその影響や効果も異なることを配慮すべきである点が指摘され た。
その後、両国のパネラー間で、歯に衣を着せぬ率直な議論が展開された。例えば、反日デモにおいて中国政府の対応に日本人は不快感を抱いていたが、 中国メディアは一枚岩の報道をしていたのではないか、中国政府は謝罪をすべしという報道があってもよかったのではないかという質問が出された。また、藩陽 総領事館事件について、繰り返し映像を放映した日本側の報道のあり方に対して、中国メディアは情報操作であると捉えていたことが伝えられた。さらには中国 メディアには未だ言論統制があるのではないかなど、互いに疑問に抱いていたことを率直にぶつけあう場になった。この議論のプロセスで、互いの誤解や相違点 が何であるのか共有されていった感がある。
後半は、メディアにかかる3つの圧力と節度の問題が議論された。メディアは3つのP、すなわちPublic, Politics, Profitの圧力を常に受けながら、社会の公器としての使命を果たすことが求められているが、この点は両国ともに共通するメディアの本質課題である。人 々の知る権利を尊重し、ぎりぎりのところまで真実を伝える役目を果たしながらも、自らの影響を配慮し節度ある報道の仕方も考えるべきであるという指摘も あった。
また、日中問題を扱う際、特に両国のメディアが留意すべき点がある。すなわち、数多の情報から、報道対象となる情報を選択する際には、メディアの 主体性が影響することは免れない。その際ステレオタイプ的な考えをできるだけ腐食することである。中国は大きな転換期にあり、従来の考え方では予測困難な ところがある。また、中国自身が決めかねている点も多いだろう。このように変化率の大きな状況下では、個々の事件が脈絡なく個々ばらばらに起きることがあ る。だが、報道記事を記す際には、これらを意図的に体系立てて説明しようとする傾向があり、その際、ステレオタイプの枠組みにはめてしまうことが多い。 「社会主義国なのだから、反日デモをコントロールできたはずだ」というように、決め打ちをして記事を記しがちである。だが、今、必要なのは、両国とも大き な転換期の最中にあり、常に大きく変化していることを率直に受け止め、固定観念や偏見をできるだけぬぐい去って報道することである。
議論の終盤では、今後、日中の認識ギャップを埋めるための具体案について話し合われた。まず、複数の参加者が提案したのは、文化交流を促進するこ とである。政治が冷えきっている現状を鑑みれば、政治や経済よりも文化を軸にした交流のほうが、より速効性があると考えられる。テレビドラマやアニメなど は両国を理解するのに手ごろで多くの人々に親しまれ易い。15年ほど前は日本のテレビドラマが中国で流行し、日本を理解することに大いに貢献した。だが、 現在は韓国のドラマが主流となっている。両国のドラマをより積極的に放映することは、日中双方の国民の認識ギャップを埋めるために有効であろう。
最後に、ジャーナリスト交流が提案された。今回のフォーラムのように、継続的に議論を続けるためのプラットフォームが必要であるが、更に一歩進め て、日中両国のメディア関係者が互いに相手国を訪問し国情を理解する機会を作るべきである。外務省は、2006年度より、中国の青少年1200人を対象に 日本に招聘する交流事業を開始したが、メディア関係者についても一定規模の人数を継続的に交流する機会を作ることは大変有益である。この共通認識のもと、 分科会として、メディア関係者の交流事業を提案することになった。
2006年08月04日 03:16
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