. 東京-北京フォーラム 公式サイト - 2010年開催 第6回

【記事】 外交・安全保障対話 前半

 

 記事 外交安全保障対話 前半1

 8月31日午後に開催された分科会「外交・安全保障対話」では、「東アジアの安全保障と世界への貢献」をテーマに日中のパネリストにより活発な意見交換が行われました。前半は日本側パネリストとして、添谷芳秀氏(慶應義塾大学法学部教授、東アジア研究所所長)、明石康氏(財団法人国際文化会館理事長、元国連事務総長)、山口昇氏(防衛大学校綜合安全保障研究科、元陸上自衛隊陸将)、西原正氏(財団法人平和・安全保障研究所理事長)、藤田幸久氏(参議院議員、参議院財政金融委員長)、国分良成氏(慶應義塾大学法学部学部長、教授)が、中国側パネリストとして、劉江永氏(清華大学国際問題研究長副所長)、張沱生(中国国際戦略研究基金会学術委員会主任)、呉傑明氏(国防大学軍隊建設軍隊政治工作教研部主任)、李薇女史(中国社会科学院日本研究所所長)、胡飛躍氏(中国医学科学院医学情報研究所研究員教授)が出席しました。基調報告は石破茂氏(自民党政務調査会長、元防衛大臣)、陳健氏(中国国連協会会長、元駐日日本大使)が行い、司会は若宮啓文氏(朝日新聞社コラムニスト)と呉寄南氏(上海国際問題研究院学術委員会副主任、研究員)が務めました。

 最初に中国側の陳健氏より「東アジアの安全と日中両国の協力関係」について基調報告が行われました。冷戦の終結をきっかけに東アジアを取り巻く情勢が大きく変化したことが述べられ、冷戦当時に発生した問題のみならず冷戦後に新たに発生した問題に対しても、日中は協力して解決に当たらなければならないと述べられました。具体的には、朝鮮半島の安定化・統一化を実現すること、領土を巡る紛争を平和的に解決すること、海上輸送の安全を保障することが挙げられました。冷戦後に生じた課題として、食品安全、環境問題、ヒューマンセキュリティ等の課題に対しても、中日両国で協力しながら解決することの重要性を強調されました。一方、そうした協力を阻害する要因として、中日間に存在する相互不信とが、双方を主要な協力パートナーとしてみなすことができない状況を指摘。日本に根強い中国脅威論に対しては、中国が30年に及ぶ「改革・開放」を今後も堅持すること、また、中国側は核兵器を保有しない国に対しては核を用いない、また核兵器を先制的に使用しない原則を堅持すると表明されました。さらに、駐日大使として日本に3年間赴任した経験から、日本が平和主義を国是として堅持し、軍国主義には決してもどらないこと、また核兵器を永遠に保有しないことを確信していると語り、中国側の対日不信の払しょくにも期待を表明されました。

記事 外交安全保障対話 前半2 続いて日本側は石破氏が基調報告を行いました。石破氏は将来的にアジア太平洋地域、特に東アジアにおいて、米中両国が決定的かつ主導的役割を果たしていくであろうとし、日本は「サブ・プレーヤー」的存在にならざるを得ないとの見通しを述べられ、中国の自覚と責任ある行動に期待を表明されました。また、日本としても中国の脅威を誇張するのは誤りであり、中国に対しても言うべきことはきちんと言うべきであると主張されました。そして日本が中国に対話を求める事柄として、中国における軍へのシビリアン・コントロールの問題、中国と他国の信頼関係を構築していく上での軍事費の透明化、バランスオブパワーの問題、そして、日本が協力しうる分野として農業、省エネ、一人っ子政策下における医療福祉のシステムの構築などを挙げました。最後に集団的自衛権を行使できない日本の現状を指摘され、イランやアフガニスタンの戦後復興など、米国が果しえない分野での日中協力についても、両国間で話し合う必要性をを訴えました。

記事 外交安全保障対話 前半3 以上の基調報告を踏まえてパネリストの方々による討論が始まりました。

 まずは米オバマ政権発足後に活発化している核軍縮の課題に関し、日本側より核保有国で核軍縮を提言していないのは中国だけという現状の指摘があり、張氏より、核廃棄については常に意識しており、核のない世界を望んでいること。また中国として核軍縮に真剣に取り組んでいきたいと明言されました。

 次に国分氏は民生の重要性を訴え、日本側は中国の軍事や経済における急成長が引き起こす国際的な問題に懸念を示しました。さらに、中国が自国の利益に固執し、所得の偏在やインフラの未整備の問題を引き起こし、東アジア諸国との衝突の危険性を提示しました。これに対して、中国側は医療衛生等の分野で積極的に国際協力を行うと述べ、急激な社会発展と都市化に配慮し、社会保障や医療衛生を重視することをアピールしました。また、カンボジアにおけるPKOで日中の協力を例に挙げ、国際貢献においても日中は協力して取り組むことができると述べました。

 東アジアにおける米国の影響に関して、東アジアの平和と安全を維持するために米国の影響力は必要不可欠であるとの日本側の主張に対して、中国側より、この地域における米国の影響力が支配的である現実は認めるし、排除するつもりはないが、新しい状況のなかで、日本やインドを含め、パワー・バランスは変わっていくべきとの指摘がなされました。ただし、米国が領土問題を含む中国の内政問題に関与するようなことがあれば、断固反対するとの原則論も強調されました。その一方で、中国は軍事的にも経済的にも米国と対峙もしくは超えることはないであろうという見通しも表明され、中国、米国、日本がこの地域の安全と平和のために、協力しあうことが重要であると指摘されました。

 また近年話題になっている北朝鮮問題に対して日本側は中国に強行的な姿勢を取るように求めましたが、中国側は厳格な制裁は北朝鮮の国民に過度な負担をもたらし、体制の改革を求めず、制裁のみを行ったとしても朝鮮半島の平和は実現しないと述べました。

 前半の終了間際に、明石氏が国連憲章51条で保障されている集団的自衛権についての課題を提起しました。日本の集団的自衛権の姿勢に関し、石破氏は日本の集団的自衛権における現在の政府見解を示し、日本は国連憲章51条により集団的自衛権は保有しているが行使はしないのが現状であると述べられました。そして、この姿勢は変化する情勢に応じて変わるべきだという認識を示し、集団的自衛権を認め、軍事力の抑止的利用を規定する安全保障基本法の制定が必要であると指摘し、、前半が終了しました。

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