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8月21日午後に行われた分科会「経済対話」前半では、午前の全体会議後半で行われた議論を引き継ぐ形で行われ、「経済再構築に向けた日中協力」をテーマにより詳細な議論が行われました。
小島明(日本経済研究センター研究顧問)が日本側司会、魏建国(中国国際経済交流センター秘書長、元商務部副部長)が中国側司会を努め、武藤敏郎(株式会社大和総研理事長)、石田徹(前資源エネルギー庁長官)、山口廣秀(日本銀行副総裁)、河合正弘(アジア開発銀行研究所長)、張暁強(中国国家発展改革委員会副主任)、李剣閣(全国政治協商会議委員、中国国際金融会社代表取締役会長)、蘇寧(中国人民銀行元副総裁、中国銀聯代表取締役会長)の各氏がパネリストとして参加しました。
まず、小島明氏(日本経済研究センター研究顧問)は、「3月11日の東日本大震災で日本の工業生産が一気に低下しが、日本のメーカーが協力し、東北地方のメーカーに技術者を派遣するなど、生産能力を急速に回復させた」と述べ、いわゆる日本の「現場力」がサプライチェーン・システムの復旧に大いに貢献したことを指摘しました。同時に、日本のサプライチェーンが復旧しても、デフレや財政赤字問題、少子高齢化等、依然として日本の経済に構造的な問題が残存しているとし、「こうした構造的な問題は新しいモデルの再構築やイノベーションを行わないと解消できない」と述べて既存の法制度を状況に応じて変えることが肝要だとしました。
張暁強氏(中国国家発展改革委員会副主任)は、「中日の経済協力により、日本の高い技術力を中国に取り入れて、相互的な経済成長を享受することが可能」と指摘。その条件として経済政策のパラダイム転換を行うことが重要であり、「中日間のマクロ経済政策の調整」、「二国間の経済協力(環境対策、情報、物流における産官学の協力)」、そして「東アジアFTA」の3つのポイントが重要だとしました。
武藤敏郎氏(株式会社大和総研理事長)は、まず、日本経済の現状とその見通しについて、東日本大震災による被害から回復するのは間違いないとしつつも、円高やソブリンリスクの問題が懸念材料であるとして、注意を促しました。そして、日中の経済協力については、「中国企業にとっては、日本の技術力やブランド力を取り込み、アジアの有力企業に成長することができれば、日本の雇用も維持することとなり、双方にとって望ましい」と述べ、それぞれの経済合理性に基づく経営的判断として両国企業の連携が行われることが肝要だとしました。
魏建国氏(中国国際経済交流センター秘書長、元商務部副部長)は、日中間の貿易関連の伸びが鈍化しつつあることを示しつつ、「中日の経済関係を強化するために、FTAの早期締結、政治的な信頼関係の構築を行うべきだ」と強調しました。
資源エネルギー庁長官を務めた石田徹氏は、日本のエネルギー政策について、「オイルショックにおいて我が国のエネルギー構造の転換が図られたが、今回の福島の原発事故を契機にエネルギー構造の転換を再度図るべきである」との見方を示し、「日中間では省エネ、環境分野で協力すべきであり、とりわけスマートグリッドで協力する余地が大きい」と述べ、環境分野での日中協力に強い期待感を表明しました。
一方の李剣閣氏(全国政治協商会議委員、中国国際金融会社代表取締役会長)は、「中日間では金融分野において協力が必要」と強調。「中国の外貨準備は日本を上回り、世界第1位となった。この外貨準備を米国の金融資産に偏重して投資するのはリスクが高い。外貨準備を効率的に用いることが重要になりつつある」と述べ、中国が日本のプラザ合意からその後のバブル経済発生・崩壊に至る教訓を研究していることを明らかにしました。
河合正弘氏(アジア開発銀行研究所長)は、人民元について、「スピード感を持った切り上げが必要」と述べ、これによりインフレの抑制が可能となり、これがひいてはアジア全体の経済に大いに資すると主張し、さらに人民元の国際化については、「市場開放を行うべきであり、中国の債券を購入してもらいやすくなる環境を整備すべき。人民元のレートを柔軟化させることが重要と強調しました。
以上で分科会「経済対話」前半の議論は終了し、後半は新たなパネリストが登壇し、議論を継続します。
カテゴリ: 経済対話
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