. 東京-北京フォーラム 公式サイト - 2008年開催 第4回

分科会:経済対話

 

分科会経済対話1

 まず司会の安斎隆氏から、テーマは中国経済の現状と展望、マクロ経済の課題、アジア全体の課題の三つであるとし、現在の中国は発展しているが所得・地域格差があり、社会保障、環境悪化などに問題があると指摘しました。アジア経済全体の発展のためにも、日中が互いに緊密な連携をとっていく必要があると紹介されました。

分科会経済対話2 それに応じ、中国側の徐長文氏は、現在の日中経済協力について、WTO加盟以降中国は二桁の経済成長を遂げてきたが、その理由は①改革開放以降経済発展を加速するとともに、法的な整備を行ったこと、②中日間の経済協力が大変大きな役割を果たしたなどと指摘に議論する時期に来ているのではないかと提案しました。

 一方、日本側の武藤敏郎氏は、①WTO加盟以来世界の工場としての中国の地位が確立されたこと、②それは外需主導型の成長で、貿易黒字を増大させたなどの特徴があるとしつつも、昨日(9月15日)のリーマンブラザーズの破綻に触れ、サブプライムローンに今後の米国の低迷は、中日間のFTA構築も真剣長引くと予想されるが、それでもアフリカなど後進諸国の発展と国内の内需拡大により中国の10%近い成長は来年も可能だろうと予測しました。ただし、巨額の経常収支黒字が続いたときに貿易摩擦が起こる可能性があり、インフレに対する賃金引き上げ等による物価の価格調整は必要という認識を示し、経済の非効率性を高める工夫や次の経済成長のドライバー=個人消費の拡大が不可欠としました。

 以上について、インフレの抑制、商品過剰在庫の適正化、消費意識の拡大、それに対応するための所得格差の改善などが議論されたが、消費拡大のためには、中低レベル所得層の増収が不可欠とされ、沿海部以外の中西部の経済発展が必要と中国側は認識していました。

 日本側からは、現在までの米国が牽引する世界経済が不安定になっている現在こそ、日中協力の拡大は安定化要因になるので、認識を共有して互いの経済成長戦略を改善することが必要で、グローバリゼーションに対する考え方を再検討する段階に来ているのではないかと指摘しました。

 確かに中国はグローバリゼーションに徐々に対応し、いままで発展途上国としてうまくやってきたが、その成功体験にとらわれず、今後は責任ある経済大国として為替の安定や金利政策、金融自由化、企業会計の透明化などに第二段階の発展=構造改革が求められているという意見がでるなど活発な議論がなされました。

 このほか、FTA、通貨、中国の不動産バブルなどについて多くの議論が交わされましたが、互いの立場や状況を尊重する必要があるということで、前半は終了しました。

 経済分科会後半の議論は、施用海氏と福川伸次氏による基調報告から始まりました。施氏からは、中日関係が以前と比べてよりインタラクティブになって きており、両国の貿易協力関係には大きなポテンシャルがあることが強調されました。一方の福川氏は、石炭利用技術の改善や原子力エネルギーの利用と言った 技術交流や産官学の連携における可能性が極めて大きくなっており、日中経済関係においては「量の拡大よりも質の進化が必要である」と述べました。そして、 質を高めるための一つのアプローチとして企業協力の拡大を指摘し、それを促進する条件として、①投資協定の締結、②FTA,EPAの締結、③情報提供や交 流機会の提供における政府と民間企業の協力の三つを挙げました。

分科会経済対話3 その後会場では、6人のパネリストを含めて活発な議論が繰り広げられました。

 最初のトピックは、今後の日中経済関係の拡大・進化が取り上げられました。まず徐長文氏は、両国の貿易協力は急速に発展し、中国企業の対外投資も増大してい るとし、日本の市場のオープン化が急務であることを強く訴える一方で、日本側が中国に赴いて企業誘致をするなど、積極的に中国にアプローチしていく必要性 に触れました。

 日本側からは、清川佑二氏が省エネや環境の分野で中国政府が協力関係拡大のために全力で取り組んでいることを高く評価する一方 で、「協力を要する現場のニーズと日本が提供できる技術とのマッチングを図ることが必要」として改善の余地を指摘したほか、知的財産権の保護や法整備の不 備など、中国の直接投資への具体的な課題にも触れました。さらに古賀信行氏は、「技術移転の際に『相互信頼』といった漠とした概念を語るのではなく、『何 が問題なのか』『何が阻害要因なのか』を詰めていかなければならない」と、日中関係がすでに一つ上のステージへと進化していることを指摘しました。

  次に、日中関係が世界経済に与える影響について議論が移ると、鈴木寛氏は米国の大手証券会社の破綻が報じられたこの日にこの分科会が開催されることは象徴 的な意味を持つとして、GDPベースで欧米が厳しい経済状況にある中でアジアの堅調な実需が清澄な要であることを引き合いに出し、「米国のヘゲモニーが崩 壊する中で、日中は世界経済、世界金融に対してどういう役割を果たしていくかということを真剣に考えなければならない」と述べました。同氏は、司会の袁岳 氏が「世界経済のrule makingにも日中が協力して関っていこう」と述べた提案に対しても歓迎の意を表明し、「政治レベルでも経済レベルでもいろいろな窓口があり、そこを起 点にして両国の合作を進めていくことは非常に大きな意義がある」と語りました。一方で、具体的な日中協力の点では、環境エネルギーについては非常にしっか りとした枠組みがここ数年でできたことを評価する一方、必ずしも協力がうまくいっていない分野もあり、それらに関しては健全な意味での官民協力が不可欠で あるとしました。

 次いで会場では、通貨・為替の問題が大きなトピックとなりました。小島明氏は2000年~01年に為替の問題で日本が非常に悲 観的になったことを過去の例として取り上げ、お互いの為替変動によってビジネスが影響を受ける度合いを下げることが必要としました。そこで、通貨安定のた めには「何らかの形での共通通貨は、ビジネスにおけるマイナスを軽減できるのではないかと思う」と述べました。

 また、古賀氏は現在の中国の管理 変動相場制に触れ、中国側に対して「もっと自由な価格形成という議論が起こってもいいように思う」と問題提起をしましたが、これに対して鄭新立氏は輸出の 成長速度への影響をまず前提として考えなければならないとして、「一気にそのようなことが起これば、輸入が激減してしまう。一歩一歩段階を踏んでいかなけ れば、日本など周辺諸国の経済成長にも影響するだろう」と述べました。

 最後に福川氏がこの分科会を総括する形で以下のように述べ、経済分科会は終了しました。

 「このフォーラムは世論をどう作っていくかということに主眼があるが、そろそろ経営者同士が民間主導でビジネスを論じ合うという時期に来ていると思う。民間が話し合い、民間が政府を引っ張っていく。そういう場を作っていくことを強く提案したい」。

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