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8月21日午後、分科会「政治対話」が行われました。今回の分科会では、松本健一(内閣官房参与 麗澤大学経済学部教授)、芮成鋼(中国中央電視台(CCTV)アナウンサー・司会者 )の両氏が司会を務め、日本側パネリストとして藤井裕久氏(内閣総理大臣補佐官、 前財務大臣)、加藤紘一(日中友好協会会長、元自由民主党幹事長)、蓮舫(内閣総理大臣補佐官 前内閣府特命担当大臣)、そして中国側からは呉建民(上海国際問題研究中心主席)、趙啓正(全国政治協商会議外事委員会主任)、葉小文(全国政治協商会議常務委員 中日友好21世紀委員会委員)の各氏が参加しました。
まず中国側から趙啓正氏が発言し、自身の経験としてオーストラリアの高官さえもが日中関係の行方に大きな関心を払っていることを紹介し、「中日関係は両国の範囲を超えてますますアジア全体に影響を与えるようになっている。戦略的な視点で、未来を見通すための視野を広げて、ズームレンズで捉えなければならない」としました。また、国交正常化以降多くの先人達が日中関係の発展のために努力を続けてきたことについて、「今日まで中日関係が構築されたのは容易なことではなかった。だからこそ、私たちはそれを大切にしなければならない」と強調しました。
日本側からはまず、藤井氏がEUにおけるドイツとフランスの関係を例に出し、「いま、お互いに信頼がないと言われているが、隣国にはそういう摩擦は十分ありうる。日本と中国は、今問題になっているような摩擦を乗り越えなければならないし、乗り越えられると信じている」と両国関係の今後の見通しを語りました。
葉氏は、「中日の一部の問題だけに眼を向けるのではなく、アジア全体を見通す必要がある」さらに、「力に頼って解決する時代は終わった」とも述べ、「共通の経済利益を土台にし、将来を見通すことで、政治相互理解が深まるだろう」と指摘、中国の発展はどの国にとっても脅威ではないとの見方を示しました。
その後、加藤氏は、日本のナショナリズムに3つの種類があることを指摘した上で、「領土問題での争いで顕著にみられるナショナリズムは煽ると非常に危険。政治家はこのナショナリズムを利用すると、国も党内もまとめやすいが、そうするとブーメランのように自らに返ってきて、結局は失敗する」と述べてその危険性を語り、そのようなことのないよう、「日中関係はよほど注意して、いい関係を保つように努力しなければならない」としました。
呉建民氏は主に、日中双方の発展の歴史と世界における今後の日中関係についての持論を展開しました。まず、アジアの発展が、①戦後の日本、②アジアの4大経済地域(台湾、香港、シンガポール、韓国)、③70年代以降のASEAN、④中国、そして⑤インドという、5つの段階を経てきており、「中国はこの30年間、日本の輸出主導型経済に学んできた」として、アジア経済の目覚しい発展が互いに学び合ってきたことの証左だと述べました。そしてまた、歴史問題や領土問題についてすれ違いがあるとはいえ、それ以上に重要な共同利益のために、協力して良い結果を出すべきだとして、これからは日本の環境にやさしい経済、エコな社会を学ぶべきだとの認識を示しました。
最後に蓮舫氏は、中国と馴染みの深い自らの経歴を紹介しながら、「物心ついた時から、いつも『日中』には『友好』という言葉がついてきた。本当に友好であれば使われないはずで、極めて異例のこと」と振り返りました。そして、「国交正常化40周年を迎える来年、言葉ではなく、本当に中国が好き、日本人は信用できるという時代を早く持ってこないといけない。本来の信頼関係がないままでは、新しい時代に、豊かなアジアというチャンスの場所を後世に渡すことができない」として、真の相互理解に向け、さらに一層の努力が必要との見方を示しました。5年前から始まった日中の戦略的互恵関係についても、「何が問題で、どこを改善すればいいのか。この先のアジアの時代を迎えるために、現実的な議論を進めていきたい」とも述べました。
政治対話前半は以上で終了し、後半は会場との議論が始まります。
カテゴリ: 政治対話
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