. 東京-北京フォーラム 公式サイト - 2011年開催 第7回

特別分科会

2016年9月27日 (火曜日) 13:30-17:45  ⇒ 報告はこちら

全体テーマ:日中の人的移動は両国関係の新風となれるか
~生活、就労、観光、留学―民間で進む日中台交流の課題と展望
前半テーマ:両国民間で進む人的移動と交流の実態と課題
後半テーマ:日中の人的移動を両国関係の追い風にするための何が必要か

 ※プログラム・パネリストは変更になる場合がございますので、予めご了承ください。
司会

小倉和夫(国際交流基金顧問、元駐フランス・韓国大使)
福本容子(毎日新聞社論説委員)
王惠(北京市政府新聞弁公室元主任、ニューススポークマン)

パネリスト

 
【日本側】

小倉和夫(国際交流基金顧問、元駐フランス・韓国大使)
福本容子(毎日新聞社論説委員)
江川雅子(一橋大学教授)
加藤鮎子(衆議院議員)
杉村美紀(上智大学総合人間科学部教育学科教授)
日野正夫(東日本旅客鉄道株式会社常務取締役、鉄道事業本部副本部長) ※前半のみ
山下晃正(京都府副知事) ※前半のみ

【中国側】

王惠(北京市政府新聞弁公室元主任、ニューススポークマン)
劉江永 (清華大学当代国際関係研究院教授)
羅玉泉 (国家旅遊局駐日首席代表)
李茜(雲南省政府新聞弁公室主任、ニューススポークスマン)
李文麗 (海信日本公司(ハイセンスジャパン)総経理)
段跃中 (日本僑報出版社総編集長)
 

 8月21日午後、北京において開催中の「北京‐東京フォーラム」で分科会「安全保障対話」が開催されました。

IMG 237日本側からは、長島昭久氏(衆議院議員、元防衛大臣政務官)と石破茂氏(自由民主党政務調査会長、衆議院議員、元防衛大臣)が、中国側より陳 建氏(中国国連協会会長、元駐日本国特命全権大使)と李 薇氏(中国社会科学院日本所所長)が基調報告を行いました。またパネリストとして、日本側より西原正氏(平和安全保障研究所理事長、前防衛大学校校長)、明石康氏(元国連事務次長、本フォーラム日本側実行委員長)、山口昇氏(内閣官房参与、防衛大学校総合安全保障研究科教授)、秋山昌廣氏(海洋政策研究財団会長、元防衛事務次官)、五百旗頭真氏(防衛大学校校長、東日本大震災復興構想会議議長)、中谷元氏(衆議院議員、元防衛庁長官)が、中国側より熊 光楷氏(中国国際戦略研究基金会名誉会長)、姚 云竹氏(中国軍事科学院世界軍事研究部研究員)、黄 星原氏(中国人民外交学会秘書長)、張 沱生氏(中国国際戦略研究基金会学術委員会主任)、王 逸舟氏(北京大学国際関係学院副院長)がパネリストとして参加しました。司会は国分良成氏(慶應義塾大学法学部長、教授)と楊 伯江(中国国際関係学院教授)が勤めました。

 

 110821 e chinkenまず、陳健中国国連協会会長から中国側基調報告がなされました。このなかで陳氏は、「中国と日本の間では、安全保障分野に関する協力は非常に少ない」とした上で、「中日の2つの大国は、アジアの安全保障に然るべき役割を果たさなければならない」と指摘しました。そしてその障害として、日中両国間の相互信頼の欠如を挙げ、相互が相手国を仮想敵ではなく適切に位置づけることと、両国の共通利益を拡大させることが必要であると述べ、両国の共通利益としてシーレーンの確保などを例に挙げました。また尖閣諸島について、「なぜ係争があることを日本政府は認めないのか。係争を棚上げして共同開発を議論すればよい」と主張しました。そして最後に、「中日両国はアジアの安全保障に然るべき役割を果たすべきであり、古い考えを捨て、胸襟を開いて議論したい」と述べました。

 

 110821 d nagashima次に長島氏から日本側の基調報告がありました。長島氏は日中関係につき、「戦略的互恵関係というスローガンは設定されているが、相互信頼が確立されていない」と指摘し、「戦略的」とは長期的な視野で二国間関係を見ること、両国で国際的な役割を果たしていくこと、過去を忘れずに未来志向で思考すること、そして互いの見解の相違から目をそらさないこと、の4つの要素があると述べました。その上で、海洋問題について、仮想敵国ではなく海洋秩序の建設という視点から見るべきであるとし、中国側に①最近の中国の積極的な海洋進出の目的は何なのか、②領土の主張は確立された国際法に基づきなされるべきであり、南シナ海における中国の「9ドットライン」の主張や、排他的経済水域に関する中国の主張と海洋における航行の自由との整合性についてどう理解しているのか、③海洋における境界確定について、中国は日本との間では大陸棚延長論を主張し、ベトナムとの間では中間線による解決を主張しているが、この二重基準をどう説明するのか、という疑問を投げかけました。さらに、日中間には海洋問題に関する意思疎通のメカニズムがないことを指摘し、中国側における海洋法執行機関を整理する考えの有無や、日中間の包括的な危機管理メカニズムの必要性、そして政治レベルでの意思疎通のメカニズムの必要性を指摘しました。そして最後に、安定的に発展していくために両国が知恵を出し合う段階に来ている、と締めくくりました。

 

 110821 e wanここで会場は自由討論に移りました。まず王氏が発言し、「両国はハイレベルにおいて、東シナ海における厳密なメカニズムの構築に取り組むべきであり、暗黙のルールだけでは足りない。係争海域における現状維持が必要との意思を政治的に持つことが必要。」と指摘しました。また、「責任あるマスコミの報道が必要であり、ナショナリズムを煽ることを防止する必要がある。」と述べ、「双方の敏感な問題に関わる問題について、問題を拡大させないよう責任感を持って報道してほしい」と求めました。

 

 110822 g yamaguchi山口氏は陳氏の発言に関連し、「日中両国が互いを仮想敵と見なすことを絶対に避けるべき」とまず指摘したうえで、両国の共通利益の拡大について、東日本大震災への対応など非伝統的な分野での協力の可能性を指摘するとともに、両国の専門家の間の議論の量の少なさが大衆の議論の質に反映されているのではと問題視しました。そして海上における危機管理メカニズムを構築し、緊張感の高まりを回避することが必要であり、また政治的リーダーシップの下でこの問題を協議する場を育てていくことが必要と述べました。

 

 次に熊氏が発言し、アジアにおけるアメリカの存在について、「日本の対米追随の戦略は中日関係にも影響を与えている。アメリカは日本のグローバルな役割について、常に異なる態度をとってきた。」と指摘するとともに、中国の急速な台頭とアメリカのアジア回帰、そして日本の不安定性を、アジアにおける安全保障の大きな要素であると指摘しました。その上で日中間の共通利益の拡大と競争の激化を指摘するとともに、日本はアメリカのアジア戦略の駒と見なされており、日本は戦略的な選択を迫られている、日本は中国の発展を受けて自らをどう位置づけるのか、アジアの安全保障はこの3か国の関係に左右されるであろうと述べました。

 

 110821 e nishihara西原氏は、「中国の対外政策は混乱が見られる」と反論し、①中国の南シナ海における領土問題への対応における矛盾、②戦略的互恵関係というスローガンと昨年の衝突事件後の中国の対応との矛盾、③中国国内の歴史教育における矛盾、の3点を指摘しました。その上で、これらの問題に関するオープンな議論が日中関係を発展させることに繋がると述べました。そして最後に、海上における危機管理メカニズムに関する陳氏の積極的な提案に賛意を示しました。

 

 110821 e cyo次に張氏が発言しました。同氏はまず仏独和解を例に引きながら、日中両国は和解し、win-winの関係を構築することが可能であると指摘し、「一つの山に二匹のトラは住めない」との例えに反対するとともに、2005年の日中関係の悪化に触れつつ、昨年の日中関係の悪化は過去の例ほどに悲観するべきではないと述べ、むしろ改善しているとしました。そして戦後の日本の平和発展を胡錦濤国家主席が評価したことを指摘し、日本における中国脅威論の拡大に留意しつつも、長期的に見れば両国関係は発展してきていると評価しました。最後に、海上における危機管理メカニズムに賛意を示し、政治・外交・軍事部門におけるホットラインと共に、両国のシンクタンク間での多層的なメカニズムの構築を通じて危機を未然に防止すること、危機管理のみならず、東シナ海の境界画定問題等における共同開発を通じ「衝突の解決」を目指すべきであること、そして共通の利益を有する分野での「チャンスの管理」として、重要な問題における食い違いを回避すべきであると主張しました。

 

 110821 d akashi明石氏は、「2匹のトラの間には大きな力の差がある。小さなトラが隣の山の大きなトラに頼る方が、小さなトラが大きな牙を持とうとするより良い。」と指摘し、東アジアにおける秩序形成に対する日米同盟の必要性に理解を求めました。次に国際関係における「意図と能力」の問題に触れ、「意図は状況に応じて変わり得る。能力の面を無視することはできない」と指摘し、国際政治の現実の側面に目を向け、中国を含むどの国に関しても、武力に頼らない平和的解決の方向に進んでいるのか、全体の状況を厳しく検証しなければならないと述べました。そして最後に、海上における危機管理メカニズムの構築の議論に賛意を示しました。

  

 110821 e ko黄氏は近年の南シナ海における中国の軍事活動の積極化について、事実に反しており、中国が戦後新たに占領した島は無い、また中国政府は一部の侵略行為を防止するために行動していると述べました。次に尖閣諸島について、アメリカの関与が大きなファクターであると指摘するとともに、この問題は国交正常化の過程において棚上げされており、係争がないと主張することは事実に反する、また双方ともに国内法に基づきこの問題に対応すれば大局に影響を与えるため慎重に解決する必要がある、などと述べました。また、中国の戦略的利益は経済の発展と良好な国際環境の維持であると述べ、日本の戦略的利益と一致する筈であると指摘しました。さらに、相互信頼が両国の目指すべき最も重要な目標であると指摘しました。

 

 110821 e akiyama秋山氏は、冷戦後の日米同盟の「再確認」の経緯の中で、中国から何度も冷戦後の同盟強化の必要性を問いただされたこと、軍国主義の復活ではないかと指摘されたことに触れつつ、近年の中国の軍事費増加の理由や海洋活動の活発化について、逆に説明して欲しい、と指摘しました。そして陳氏の仮想敵の議論について、仮に仮想敵を想定すればどの国とも相互信頼を構築できないのではないかと指摘しました。そして、中国の軍事費の増大は、今後、日中・米中間のセキュリティ・ジレンマを招くのではないか、それは中国の国益にも反するのではないか、と問題提起しました。

 

 110821 d 01姚氏は中国の海軍の発展について、中国は第一列島線の内側を聖域にする考えはない、中国海軍が外洋に出て国際的な役割を果たすためには第一列島線を通過しなければならないのであり、中国が軍事力の透明性を図ったところで通過の事実が周辺国の疑念を招くのであれば無意味である、南シナ海においても、中国は交渉により解決を図ることで一貫した立場である、と指摘しました。またアメリカが排他的経済水域内で偵察活動を行うことには反対する、これは中国に対する敵意のある行動であると主張しました。さらに、南シナ海の航行の安全の確保は各国共通の利益であるが、自由航行の問題を主権問題や排他的経済水域における軍事活動の問題に関連させることには反対であると述べました。そして中国海軍の空母保有について、目的は中国の領土の保全であり、また拡大する国益を守るために遠洋への投射能力を持たねばならないと指摘しました。また、空母は非軍事的行動、人道的支援を行うことも可能であること、また中国人民は軍事力の増強は必然と見ていることを紹介し、防御的な国防政策は不変であると強調しました。最後に、空母を中国が保有していけない理由は何か、なぜ空母の保有から中国脅威論を唱えるのか、と日本側に疑問を呈しました。

 

 110821 e nakatani中谷氏は陳氏の仮想敵国論につき、日本の安保理常任理事国入りになぜ中国は反対するのか、と述べ、常任理事国入りを支持すれば日本が仮想敵であるとの疑念は解けるのではないかと指摘しました。そして両国間の防衛交流についてはその少なさを認め、中国側の更なる協力を求めました。軍事情報についても、日本は全て公開している、隠しているのは中国であり、見せ合う関係にならなければ相互信頼は保てないと指摘しました。さらに、衝突事件後の中国の対応を批判した後、NATOのような東アジアの安全保障のテーブルを作ること、そして相互に世界の安全保障に責任をもって協力するために、国連において対等な立場に立つことが必要であると述べました。

 

 110821 e iokibe五百旗頭氏は、「中国は今後どのような自画像を描くのか」という自身の問題意識を述べ、軍事力の過度な使用は適切でないことは歴史からも明らかであると指摘しつつ、改革・開放以来飛躍的に台頭し、軍事的にも拡大してきた中国の戦略的目標について、もはや近代化という目標は達成されている、周辺地域での優位の確保や資源・シーレーンの確保なのかと問いかけました。その上で、資源やシーレーンの確保は必ずしも自国の軍事力の拡大に直結するものではなく、またグローバルな役割を果たすためというナショナリズムを理由にすることも適切ではない、何を戦略的意図としているのか非常に興味があると述べました。その上で、中国はパワーポリティクスの時代の観点が非常に色濃く残っていることを指摘し、空母の数が他国より少ないから作る、といった道を選ぶことが果たして賢明なのか、と述べました。

 

 最後に、陳氏より、「中国の国防の近代化は中国の基本的な国策であるが、視点が問題である。他国が中国を問題視するのは、悪く言えば自信の無さ、あるいは中国を仮想敵と見なしているからであり、他国が同様の行為を行えば脅威とは見なされないであろう」「南シナ海の9ドットラインについては、中国は当該地域で歴史的に古くから活動しており、海洋法に鑑みれば遺伝的な権益がある、また係争地域については固有の領土であるとの十分な根拠がある。二重基準との批判は当たらず、係争地域と認めた上で交渉を行っている」と主張しました。また、南シナ海において中国はイノセントである、南シナ海が核心的利益であると発言したのは退役軍人であると指摘するとともに、日米同盟には台湾問題に関わらない限り反対しないと述べ、「再確認」時に理由を問いただしたのは周辺事態に台湾が含まれるとされていたからと述べました。さらに国連安保理改革については、数が増えすぎることへの懸念、そしてG4の日本以外の国に対する反対の声の存在を指摘し、日本を支持するかは中国の民意にかかっている、相互信頼がそこまでの度合いに達していない段階で支持することは難しく、日本が中国を仮想敵と見なさないことが必要であると述べました。衝突事件については、日本が国内法で処理しようとしたことが民主党の大きなミスであったと述べました。

 

 長島氏は、冒頭で触れた孫文の「西洋の覇道、東洋の王道」論にもう一度触れ、国益の拡大に従い軍備も拡大するのは当然との議論に対し、ライジング・スーパー・パワーとしての自覚を抱き、他国の抱く印象についても配慮すべきである、現に中国が南シナ海で周辺国に懸念を与えている事態を心配していると指摘しました。そして、明治日本の軍拡の経緯に触れながら、中国側の韜光養晦(とうこうようかい)の外交方針を堅持するとの方針につき、本当の意味で自国の力を賢明に使っていく努力を求めました。

 

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