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特定非営利活動法人 言論NPO ・ 中国日報社
【調査協力】
日本:世論総合研究所
中国:零点研究コンサルティンググループ・北京大学
日本の言論NPOと中国日報社は、日中の両国民を対象とした共同世論調査を今年7月から8月にかけて実施した。この調査は、最も日中関係が深刻だった2005年から日中共同で毎年行われているものであり、今回で10回目となる。調査の目的は、日中両国民の相互理解や相互認識の状況やその変化を継続的に把握することにある。
この調査は2005年から2014年まで10年間継続して実施すること、そして調査結果を「東京-北京フォーラム」の議論の題材として取り上げることで、両国民の間に存在するコミュニケーションや認識のギャップの解消や相互理解の促進のための対話に貢献することを、言論NPOと中国日報社は合意している。
日本側の世論調査は、全国の18歳以上の男女(高校生を除く)を対象に7月24日から8月10日まで、訪問留置回収法により実施され、有効回収標本数は1000である。回答者の最終学歴は、高校卒が45.8%、短大・高専卒が16.7%、大学卒が25.2%、大学院卒が1.6%だった。
これに対して、中国側の世論調査は、北京、上海、成都、瀋陽、西安の5都市で18歳以上の男女を対象に、7月14日から7月25日の間で実施され、有効回収標本は1539で、調査員による面接聴取法によって行われた。標本の抽出は、上記の5都市から多層式無作為抽出方法により行われている。回答者の最終学歴は中学校以下が15.6%、高校・職業高校・専門学校卒が43.1%、大専卒が25.2%、大学卒が15.0%、大学院卒が0.9%だった
なお、この調査と別に、言論NPOと中国日報社は、有識者へのアンケート調査を世論調査と同じ内容で実施した。日本ではこれまで言論NPOが行った議論活動や調査に参加していただいた国内の企業経営者、学者、メディア関係者、公務員など約2000人に質問状を送付し、うち628人から回答をいただいた。回答者の最終学歴は、大学卒が62.9%、大学院卒が29.1%で合わせて92.0%となる。また、有識者は一般の日本人の傾向とは異なり、79.5%が中国への訪問経験があり、78.9%が、会話ができる中国人の知人を持っている。
中国では北京大学が実施主体となり、学生・教員を対象としたアンケートを7月23日から8月3日までの間に、北京大学、清華大学、中国人民大学、国際関係学院、外交学院の学生・教員を対象に行い、813人から回答を得た。また、同時期に会社員、政府関係者、マスコミ関係者などの有識者にも同じアンケートを実施し、201名から回答を得た。これらの回答を合算し、合計で1014人の回答内容を中国有識者として分析した。
日本人の「相手国に対する印象」は、「良くない」(「どちらかといえば良くない印象」を含む、以後同様)が93.0%となり、調査開始以来初めて9割を超えた昨年(90.1%)よりもさらに悪化した。
一方、中国人では「良くない印象」は86.8%となった。依然として8割を超えているが、過去最悪の92.8%だった昨年よりは改善している。また、「良い印象」(「どちらかといえば良い印象」を含む)を持っている中国人は、昨年の5.2%から今年は11.3%と2倍以上に増えている。
また、この一年間の印象の変化については、日本人で66.7%(昨年34.3%)と7割近く、中国人でも57.3%(昨年14.0%)と6割近くが、相手国に対する印象が「悪くなった」と答えており、「悪くなった」と感じる両国民は昨年よりも大幅に増加している。
日本人では中国の大国的な行動を印象悪化の理由とする人が多い。中国人は、昨年よりは減少したが、尖閣と日本人の歴史認識を理由としている人が依然、多い。
日本人が中国に「良くない印象」を持つ最も多い理由は、「国際的なルールと異なる行動をするから」が55.1%(昨年47.9%)で、「資源やエネルギー、食料の確保などの行動が自己中心的に見えるから」が52.8%(昨年48.1%)で続いている。昨年最も多かった「尖閣諸島を巡り対立が続いているから」は53.2%から50.4%へ減少し、今年は4番目の理由となった。尖閣諸島を巡る対立を理由に挙げる人は後退し、中国の力を背景とした行動を「良くない印象」の理由とする人が増加した。
一方、中国人が日本に「良くない印象」を持つ理由では、「日本が魚釣島を国有化し対立を引き起こした」の64.0%(昨年77.6%)と、「侵略の歴史をきちんと謝罪し反省していないこと」の59.6%(昨年63.8%)の2つが突出している構図は昨年と同様である。ただ、昨年と比較するとこの2つを挙げる人は減少している。反面、「一部政治家の言動が不適切だから」が31.3%(昨年25.2%)と日本の政治家の言動を理由とする人が増加している。
日本人が中国に「良い印象」を持つ理由では、「留学生の交流など民間交流により中国人の存在が身近になっているから」が39.7%(昨年32.3%)で最多となり、民間交流の展開が中国に対するプラスの印象に寄与している。
中国人が日本に対して「良い印象」を持つ理由としては、「日本製品の質は高いから」(57.2%、昨年は49.4%)、「日本人はまじめで努力家で積極的に仕事をするから」(53.8%、昨年は54.4%)、「日本人は親切で、マナーを重んじ、民度が高いから」(52.6%、昨年は39.2%)などが半数を超え、日本のモノづくりの技術への高い信頼感と、日本人の国民性に対する高い評価がプラスの印象に寄与している。
昨年5割(49.4%)あった「戦後にめざましい経済発展を遂げたから」は今回19.7%と30ポイントも減少した。
相手国に対する感情が悪化している現在の状況について、日本人では「望ましくない状況であり、心配している」と回答した人が32.5%、「この状況は問題であり、改善する必要がある」と回答した人が46.9%となり、合わせると8割近くが国民感情の悪化している現状を問題視している。
中国人も同様で、「望ましくない状況であり、心配している」と回答した人が35.2%、「この状況は問題であり、改善する必要がある」と回答した人も35.2%で、合わせて7割が、国民感情の現状を問題視している。
日本人が中国について「思い浮かべるもの」で今年、最多となったのは、「大気汚染」の41.2%(昨年34.0%)で、例年最多の「中華料理」(34.0%、昨年は39.7%)を上回った。「尖閣諸島問題」を挙げる人は28.6%(昨年34.1%)と3番目に多いが、昨年よりは減ってきており、やや国民意識の中で「尖閣」が鎮静化していることがうかがえる。
中国人が日本について「思い浮かべるもの」は、昨年と同様に「釣魚島」(46.6%、昨年は57.5%)と「南京大虐殺」(35.3%、昨年は50.3%)が最も多い回答になったが、こちらも昨年と比べ大幅に減少してり、日本に対する見方もやや落ち着き始めている。「日本料理」(16.4%、昨年は9.5%)、「富士山」(12.5%、昨年は9.7%)といった政治的な問題に関係しないものが増加に転じており、鎮静化の兆候とも見ることができる。
「知っている相手国の歴史上の出来事や事件」で、日本人で最多となったのは、「尖閣諸島における中国漁船衝突事件」(79.2%)になるなど、比較的最近の出来事に対する印象が強い。ただ、それ以外でも戦前・戦後を通じて、それぞれの歴史的事実について概ね2割程度が知っており、日本人の中国の歴史に対する理解は幅広い。
中国人では「満州事変、盧溝橋事件、南京大虐殺」が今年も76.5%(昨年91.4%)で最多となり、新設の「魚釣島の国有化」が49.6%で続いている。全体的に過去の戦争に関連する出来事についての理解が高く、戦後の日本の歩みに関する事実を知っている人はそれぞれ1割程度に過ぎない。ただ、その中でも「魚釣島の国有化」や「安倍総理靖国神社の参拝」(24.9%)など、最近の日中関係に伴う出来事を知っている人は相対的に多い。
日本人が「知っている中国人の政治家」では、依然として「毛沢東」が92.0%(昨年90.1%)と最多となるなど、過去の指導者の知名度は高い。その一方で、「習近平」は58.8%(昨年48.3%)と未だ6割に達しておらず、4割の日本人は今でも中国の指導者を知らないことになる。首相の「李克強」は10.1%(昨年8.0%)と依然1割程度にとどまっている。
中国人が「知っている日本の政治家」では、「安倍晋三」首相が昨年の47.4%から75.2%へと大幅に増加して最多となっており、「小泉純一郎」が42.8%(昨年50.2%)で続いている。
日本人の69.0%(昨年66.9%)と約7割が中国を「社会主義・共産主義」の国と理解している。この傾向は過去10年を通して見ても大きな変化はなく、最も多い中国認識として一貫して7割前後で推移している。中国を「全体主義(一党独裁)」(40.1%、昨年37.4%)と「軍国主義」(35.9%、昨年33.9%)と見る人がこれに続いている。この10年間では中国を「全体主義」と「覇権主義」と見る認識が徐々に高まっており、「全体主義(一党独裁)」は2007年から項目に加えたが、その時は27.4%、「覇権主義」は今年22.6%だが、調査を開始した05年は11.8%である。
一方、中国人で最も多いのは日本を「資本主義」と見る39.7%(昨年42.1%)である。尖閣諸島の日本の国有化後に行われた昨年の調査では、日本を「覇権主義」と見る中国人が48.9%と急増したが、今年は36.7%と落ち着きを見せている。「軍国主義」と見ている人も昨年の41.9%から今年は36.5%へ減少したが、それでも4割近く存在している。この10年で見ると、「軍国主義」や「民族主義」との見方は後退を続けており、「軍国主義」は05年の60.3%から減少し、「民族主義」も今年は25.8%(05年は49.5%)とそれぞれほぼ半減している。代わってこの間増加したのは「国家主義」と「覇権主義」で、初めの調査時点での結果と比較すると「国家主義」は今年は37.5%で06年の27.5%から10ポイント、 「覇権主義」も10年の調査の22.4%から10ポイント以上増加している。
戦後日本が世界に標榜してきた「平和主義」は今年10.5%(05年11.8%)、「民主主義」は14.4%(05年は23.7%)、国際協調主義も6.7%(05年は13.9%)とそれぞれ1割程度に過ぎず、この10年間改善が見られないどころか、 むしろ認識は後退している。
日本人の7割は中国人を「信用できない」と考えており、6割以上が「利己的で不正直、非協調的、頑固で好戦的」などと見ている。一方、中国人の6割は、日本人は「好戦的で信用できず、不正直、利己的で非協調的」と思っている。
前年比で見ると、日本人の中国人の国民性に対する評価は悪化傾向にあるが、中国人の日本人の国民性に対する評価にはやや改善が見られる。
日本人で現在の日中関係を「悪い」(「どちらかといえば悪い」を含む、以後同様)と判断しているのは、83.4%(昨年79.7%)と8割を超え、過去最悪の水準となった昨年よりもさらに悪化している。
一方、中国人で現在の日中関係を「悪い」と判断しているのは67.2%(昨年90.3%)で、昨年から2割程度も減っており、尖閣諸島の日本の国有化で悪化した昨年の両国関係に対する中国人の認識は、やや落ち着きを取り戻している。
ただこの67.2%は、これまでの10年間で見れば日中関係の悪化の起点となった05年の調査の54.9%を上回る厳しい水準であることには変わりない。
今後の日中関係の見通しについては両国民で悲観的な見方がさらに強まっている。
日本人の36.8%(昨年28.3%)が日中関係は今後も「悪くなっていく」(「どちらかといえば悪くなっていく」を含む、以後同様)と見ている。日中関係が「良くなっていく」(「どちらかといえば良くなっていく」を含む、以後同様)と改善に向かうと見ている日本人は8.0%(昨年13.1%)に過ぎない。
中国人で今後の日中関係を「悪くなっていく」と見ている人は49.8%(昨年45.3%)と5割に迫っている。この水準はこの10年で見るとこれまで最悪の05年時の46.6%を上回っている。日中関係が「良くなっていく」と見る中国人もわずかに増えているが、17.7%(昨年15.1%)程度である。
日本人が考える日中関係の最大の懸念材料は「領土問題」であり、58.6%で突出しているが、昨年調査の72.1%からは大きく減少している。「中国の反日教育」を障害と見る人が42.9%で続いている。新設の選択肢である「日中両国政府の間に政治的信頼関係がないこと」も35.0%と4割近くになっているほか、「国民間に信頼関係がないこと」を指摘する人も25.5%あり、合わせると6割が政府や国民間に信頼関係がないことが、関係改善の障害と捉えている。
中国人も、例年同様に「領土問題」が懸念材料と考える人が64.8%(昨年77.5%)で最も多かったが、こちらも12ポイント減少している。日本の「歴史認識や歴史教育」を指摘する中国人も31.9%(昨年は36.6%)あり、昨年よりも減少はしているが、この2つが依然として懸念材料となっている。ただ、日本と同様に、中国でも政府や国民レベルの信頼関係がないことを関係改善の障害と見ている人は少なくなく、「政府間の信頼関係がないこと」は25.4%、「国民間に信頼関係がないこと」を障害と見る人は15.5%、と合わせて4割を超えている。
日中関係を両国にとって「重要である」(「どちらかといえば重要」を含む、以下同様)と考えているのは、日本人では70.6%(昨年74.1%)と7割を超えており、日中関係が厳しい中でもその重要性に対する評価は高い水準が続いている。しかし、これをこの10年を通して見ると、最も低い水準となる。
中国人も65.0%が日中関係を「重要である」と判断しており、依然高い水準が続いているが、昨年の72.3%から減少し7割を切り、過去10年間でも最も低い水準となっている。
特に中国の場合、2010年には92.5%の中国人が日中関係を重要だと答えており、これと比較すると減少は約30ポイントになっている。
その「重要である」理由については、日本人は「アジアの平和と発展には日中の共同の協力が必要だから」という回答が55.8%で最多だが、中国人では29.4%で5番目にとどまり、「両国が世界第2位、3位の経済大国」であることが48.6%(昨年41.6%)、「隣国同士だから」が45.5%(昨年54.7%)が最も多い。中国では、日中関係の重要性に対する認識が一般的な理解にとどまっている現状がうかがえる。
日中関係と日米関係の重要性を比較すると、日本人は50.1%(昨年52.2%)が、「どちらも同程度に重要」と考えている。「日米関係の方が重要」は36.4%(昨年37.4%)と昨年同様4割程度あり、「日中関係の方が重要」はわずかに3.7%(昨年2.9%)に過ぎない。
中国人は、中日関係と中米関係は、「同程度に重要」が40.3%と最も多かったが、昨年の54.2%からは大幅に減少している。代わって増加したのは「中日関係の方が重要」の22.0%で昨年の10.2%から倍増し、「中米関係の方が重要」の22.5%(昨年24.0%)と並んでいる。
また、日本人の55.7%(昨年56.1%)は米国と中国を比べると「米国により親近感」を覚えており、「中国により親近感」を感じるのは5.6%(昨年5.8%)に過ぎない。
中国人はこれまでと同様に日本と米国の「どちらにも親近感を感じない」が44.4%(昨年50.3%)で最も多く、「米国により親近感」が30.7%(昨年28.1%)で続いている。日本に「より親近感」を感じる人は4.4%(昨年3.0%)に過ぎない。
日本人は、中国と韓国との関係を47.0%(昨年49.6%)が「どちらも同程度に重要である」と回答し、「日中関係がより重要」は15.6%(昨年20.0%)で、「日韓関係がより重要」の12.4%(昨年13.9%)をわずかに上回っている。
中国人も、日本と韓国は「どちらも同程度に重要」が43.5%で最も多いが、「中韓関係がより重要」と考える中国人は33.3%もあり、「中日関係がより重要」の6.5%を大きく上回っている。
親近感の比較では、日本人で「韓国により親近感を感じる」のは37.2%(昨年45.5%)と最も多く、「中国により親近感を感じる」は5.0%(昨年5.9%)に過ぎない。ただ、「どちらにも親近感を感じない」が31.8%(昨年24.6%)もある。
ところが、中国人は「韓国により親近感を感じる」との回答が52.7%と半数を超え、「日本により親近感を感じる」はわずか3.5%である。ただ、「どちらにも親近感を感じない」が21.8%ある。
※この設問は今回の調査では中国のみで行った。日本の設問は5月から6月にかけて実施した第2回日韓共同世論調査のものである。
日本と中国がアジアの課題で協力していくことについては、日本人は「賛成」(「どちらかといえば賛成」を含む、以後同様)は66.1%(昨年68.6%)と6割を超えており、「反対」(「どちらかといえば反対」を含む、以後同様)は7.7%(昨年6.9%)に過ぎない。
中国人も「賛成」は52.2%(昨年53.0%)と半数を超えているが、こうした協力に「反対」する人も33.5%(昨年36.1%)と3割存在する。
協力するべき具体的な分野としては、日本人は「大気汚染などの環境問題」(85.6%、昨年は81.9%)、「食の安全・安心」(80.2%、昨年は67.1%)の2つが8割を超えて突出しており、具体的な課題での協力に関心が集まっている。これに「北朝鮮の核問題」が67.3%(昨年71.4%)、「東アジアの平和維持」が59.6%(昨年57.6%)で続いている。
これに対して中国人では協力すべき内容を具体的に絞り込めていない。最も多いのは「東アジアにおける平和維持」だが、37.8%(昨年40.0%)で4割を超えていない。続いて、「原子力の安全問題」が33.8%(昨年27.3%)と続いているが、それ以降は8位の「軍事安全保障問題の協力」(22.8%、昨年は15.6%)までが10ポイント以内に並んでいる。
相手国への訪問について、日本人では中国へ「行きたくない」と答えた人は70.4%(昨年69.5%)となり、過去7回の調査では最も多い。
中国人では、日本に「行きたくない」は72.6%(昨年74.0%)と昨年からわずかに減少したが、依然7割を超えている。
日本人の64.4%(昨年60.7%)は日中間の民間レベルの人的交流が両国関係の改善や発展にとって「重要」(「どちらかといえば重要である」を含む、以後同様)と考えている。
中国人でも、「重要」と考える人は63.4%(昨年67.7%)と高い水準にあり、両国民ともに民間レベルの交流の重要性を認識している。
民間レベルの交流が「重要」である理由については、日本人では「交流を通して国民間の相互理解が深まるから」が70.7%(昨年66.2%)、「相手国について実際の理解が深まるから」が66.8%(昨年60.6%)と7割前後で並んでおり、日本人は民間交流を「国民間の相互理解」を進めるためのものだという理解が多い。
一方、中国人は56.7%(昨年46.0%)と半数以上が「両国の共通の利益を拡大するための基盤となるから」と考えており、民間交流に対して、「国民間の相互理解」よりも、「共通利益」を拡大するための基盤を期待している。ただ、「政府間外交を補完する基盤の一つとして期待できるから」は13.0%(昨年22.0%)にとどまっていることから、中国人は民間交流に政府間外交とは異なる独自の役割を求めている、と考えられる。
日本人は、現在、日本と中国の間で「政府間外交」が「有効に機能していない」が16.2%、「どちらかといえば有効に機能していない」が32.7%となり、合わせて48.9%と5割近い日本人が日中間の政府間外交を「有効に機能していない」と判断している。「どちらともいえない」と判断を保留している回答も46.2%と多く、「有効に機能している」(「どちらかといえば有効に機能している」との合計)は合わせても4.5%に過ぎない。
一方、中国人では、「有効に機能している」が13.7%、「どちらかといえば有効に機能している」が37.3%で合わせると51.0%が、日中間の政府間外交を「有効に機能している」と回答している。しかし、「有効に機能していない」(7.6%)、「どちらかといえば有効に機能していない」(22.0%)を合わせると29.6%と3割が、政府の外交を「有効に機能していない」と判断していることは注意を要する。「どちらともいえない」と判断を保留している回答も19.1%と2割近くある。
「有効に機能していない」理由としては、日本人では「領土や歴史認識に関する対立」をしていることが72.8%で最多となり、次いで「中国のリーダーの政治姿勢」(57.5%)が続き、この2つが突出している。また、中国人でも、「領土や歴史認識に関する対立」(55.4%)が最も多いが、これに「日本のリーダーの政治姿勢」(47.7%)が続いている。
ただ、日本人は39.5%と4割近くが「日本のリーダーの政治姿勢」を問題視しており、中国でも15.4%と2割近くが「中国のリーダーの政治姿勢」を指摘している。
2012年5月以後、開催されていない日中の首脳会談の必要性については、日本人は64.6%(昨年64.9%)が「必要である」と答えており、「必要ではない」と回答したのは7.7%(昨年7.6%)と、1割にも満たない。
一方、中国人で「必要である」と回答した人は52.7%と5割を超えているが、昨年の57.1%よりは減少している。「必要ではない」と回答した人も37.1%(昨年37.3%)と4割近くもあり、日本の認識と開きがある。
その日中首脳会談が開催された場合、どのような課題について議論すべきかについては、日本人では「両国の関係改善に向けた広範な話し合い」(45.8%)が最も多く、「尖閣諸島に関する領土問題」(32.2%)が続いているが、「歴史認識問題」は13.9%に過ぎない。
一方、中国人では、その「尖閣諸島に関する領土問題」が49.2%で最多となり、「歴史認識問題」が38.1%で続いている。ただ、「両国の関係改善に向けた広範な話し合い」も35.7%ある。
日本人では、「日中関係が発展しても、歴史問題を解決することは困難」(42.7%、昨年は45.1%)との見方が最も多い。過去10回の調査を通して見ると、2011年以降この認識が継続して高く、現状の日中関係の困難が反映している。「日中関係が発展するにつれ、歴史問題は徐々に解決する」という楽観的な認識は22.2%(昨年20.5%)と2割程度にとどまっている。
中国人では、「中国と日本の関係が発展するにつれ、歴史問題は徐々に解決する」という楽観論が34.1%(昨年35.4%)が最も多く、「歴史問題が解決しなければ、中日関係は発展しない」と考える中国人は31.4%と、昨年(37.9%)よりも減少している。日本人に最も多い、「中日関係が発展しても歴史問題の解決は困難」は26.9%(昨年24.1%)と2割程度である。
日中間で解決すべき歴史問題に関して、日本人の56.0%(昨年58.6%)が、「中国の反日教育や教科書の内容」と考えており、「中国メディアの日本についての報道」の43.1%(昨年43.4%)が、続いている。ただ、「侵略戦争に対する日本の認識」(25.7%、昨年は26.4%)、「日本の歴史教科書問題」(16.8%、昨年は20.0%)など日本自身の問題を挙げる日本人も2割程度存在する。
中国人が歴史問題で解決すべき課題と感じているのは、「日本が侵略の歴史をきちんと反省し、謝罪すること」(54.8%、昨年は61.0%)など、今年も日本の歴史認識を問うものが上位を占めている。
日本の首相の靖国参拝について、日本人では「首相としての立場で参拝しても構わない」と容認する人が40.7%(昨年46.0%)で最も多く、「私人としての立場なら構わない」の27.5%(昨年も27.5%)を加えると日本人の7割が参拝容認派である。これに対して「公私ともに参拝すべきでない」は昨年の 9.9%からやや増加したものの、15.0%と2割未満である。
中国人は「公私ともに参拝すべきでない」が59.5%(昨年62.7%)と今年も約6割である。「首相としての立場で参拝しても構わない」の8.2%(昨年9.0%)と、「私人としての立場なら、参拝しても構わない」の20.9%(昨年20.4%)を合計しても、参拝容認は3割に満たない。
日本人の64.3%(昨年62.7%)、中国人の76.2%(昨年82.2%)がそれぞれ、「日中間に領土問題が存在している」と考えている。
ただ、その解決方法については両国民の認識は大きく異なっている。日本人で最も多かった回答は、「両国間ですみやかに交渉して平和的解決を目指す」の48.4%(昨年49.1%)で、「国際司法裁判所に提訴し、国際法に則り裁決すべき」が41.2%(昨年42.4%)がこれに続いている。
これに対して中国人では、「領土を守るため、中国側の実質的なコントロールを強化すべき」との回答が63.7%(58.1%)で最多となり、「外交交渉を通じて日本に領土問題の存在を認めさせる」が47.1%で続いている。「両国間で交渉して平和解決を目指す」は32.6%(昨年は43.6%)、「国際司法裁判所に提訴し、国際法に則り裁決すべき」は13.7%(昨年20.1%)でいずれも昨年から減少している。
ただ、「解決を急がずに、まずは偶発的な軍事衝突を回避する」は日本で27.1%(昨年21.7%)、中国でも26.1%(昨年24.6%)と3割近くあることは注目される。
そして、日本人の63.1%(昨年67.7%)、中国人の66.9%(昨年82.3%)が尖閣諸島を巡る日本と中国の対立が、両国の経済に影響を及ぼしていると考えている。
自国にとって軍事的な脅威だと感じる国について、日本人はこれまでの過去9回の調査と同じく、「北朝鮮」(68.6%、昨年は73.4%)に最も強い「軍事的脅威」を感じているが、「中国」と回答する日本人も昨年の61.8%から64.3%に増加し、「中国」が、「北朝鮮」にほぼ並んでいる。中国人は「米国」に最も強い軍事的脅威を感じているが、昨年の71.6%から今年は57.8%へと減少した結果、「日本」が55.2%(昨年53.9%)と「米国」とほぼ並ぶ形で、中国人の軍事的な脅威となっている。
「中国」に「軍事的な脅威を感じる」日本人にその理由を尋ねると、「しばしば日本の領海を侵犯しているから」が71.9%(昨年71.4%)で最も多い。これに「日中間には、尖閣諸島や海洋資源で紛争があるから」が65.2%(昨年62.6%)と、「中国が軍事的な増強を続けているから」が53.8%(昨年53.9%)で続いている。全体的に、東シナ海に現実に存在している緊張感や中国の軍事的な拡大が、日本人が中国に脅威を感じる理由となっている。
中国人で、日本に軍事的な脅威を感じる、と回答した人にその理由を尋ねると、「日本は米国と連携し軍事的に中国を包囲しているから」が58.2%(昨年44.6%)と昨年を大幅に上回り、最多となった。そのほか、「侵略戦争への謝罪や反省の気持ちが揺らいでいる」が52.4%(昨年69.9%)、「釣魚島を占領しながら領土問題の存在を認めない」が51.9%(昨年56.6%)で続いている。「集団的自衛権の行使容認に伴い、日本の憲法平和条項を修正しようとする動きが強まり、現実性が増しているから」が、昨年の4.7%から14.5%へと拡大しており、日本の安全保障政策の動きを反映した数字の変動も見られる。
日中間で軍事紛争が勃発する可能性について、日本人では、「起こらないと思う」が38.0%で最も多いが、昨年の46.7%よりかなり減少した。依然、「わからない」との回答も32.9%(昨年29.3%)と3割は存在するが、「将来的には起こる」(26.1%、昨年は21.3%)と、「数年以内に起きる」(2.9%、昨年は2.4%)は、合わせて29.0%と3割に迫り、昨年の23.7%を上回った。
中国人では、「将来的には軍事紛争が起こる」と判断しする人が、42.2%(昨年35.3%)と今年で最も多い。「数年以内に起こる」も11.2%(昨年17.4%)あり、合わせると53.4%と半数以上の中国人が、軍事紛争勃発の可能性を認識している。
こうした北東アジアの平和環境に関する常設の議論の場の必要性を尋ねたところ、日本人では47.2%(昨年52.6%)が「必要である」と半数近くが賛成しているが、中国人では、「必要である」との回答が、昨年の54.0%から43.0%へと減少し、逆に、「必要でない」が昨年の34.1%から38.7%へと4割近くに増えてきており、意見が分かれている。
ただ、そのような多国間枠組みが「必要である」場合、「どの国が参加すべきか」について定まった見方は形成されていない。日本人では「日本」と「中国」「韓国」がいずれも8割を超えて突出しており、日中韓で東アジアの安全保障の多国間対話の枠組みを形成すべきとの見方が強い。また米国や北朝鮮、ロシアを加えることを半数以上が支持している。
これに対して中国人は自国の「中国」が参加することを80.4%(昨年73.7%)が支持しているが、その他ではロシアが57.4%と昨年の38.3%から増加しており、米国が51.2%(昨年54.2%)と半数以上の支持を得ているのは3か国だけである。日本と韓国の参加を期待するのはそれぞれ43.1%、39.1%である。
これからの世界政治をリードしていく国や地域については、日本人が選択したのは、昨年の55.5%から44.9%に減少したものの、「米国」が最多で突出する形となっている。これに「G8、G7」の38.1%(昨年31.8%)が続く構図は昨年と同様である。一方、「中国」を選んだ日本人は5年連続で減少しており、今回は11.3%(昨年16.2%)となった。
中国人が考える「世界をリードする国や地域」は2010年の調査以降「米国」が最も多く、「中国」がそれを追いかける構図となっていたが、今年は「中国」が41.8%(昨年41.6%)で最多となり、「米国」は逆に昨年の42.7%から31.3%に減少している。これからの世界は中国と米国がリードしていく、という意識は昨年と同様であるが、今年は「中国」がより指導力を発揮する世界を描き始めている。
将来、日本と中国がアジアの中で平和的な共存・共栄関係を実現できるのか、それとも、対立関係が継続するのか。この設問に日本人の54.6%、中国人も50.3%が、「平和的な共存・共栄関係を期待するが、実現するかはわからない」と回答している。将来も「対立関係が継続する」と見る日本人、中国人はそれぞれ17.3%、20.7%と同じような水準である。将来は「共存、共栄はできる」とする中国人は16.5%いるが、日本人は7.8%に過ぎない。
2030年の中国経済に関する日本人の予測では、「中国経済は順調に成長することすら難しくなり、将来は極めて不透明にある」が34.4%(昨年29.3%)で最も多く、「中国経済の成長は続くが、米国に並ぶのは難しい」が23.0%(昨年24.9%)で続いている。中国が米国を抜いて世界最大の経済大国になる、と見る日本人は5.1%(昨年5.0%)に過ぎない。
日本の2030年の予測で中国人で最も多いのは、「世界第3位の経済大国で軍事大国ではない」の28.1%で、昨年の24.4%から増加している。次に多いのは、「経済大国の地位も影響力も低下する」の24.6%(昨年33.1%)で、「経済大国の地位は低下するが影響力は保持している」の23.6%(昨年23.8%)を合わせると、48.2%と半数近くが「経済大国の地位は低下する」との見方を持っている。
日中間の経済関係について、日本人は「両国経済は競合しており、win-winの関係を築くことは難しい」(「どちらかといえば」を含む)との見方は、昨年の42.8%から47.1%に増加しており、デメリットと捉える見方が拡大しつつある。
一方、中国人は「両国経済は相互に補完しており、win-winの関係を築くことができる」(「どちらかといえば」を含む、以後同様)との見方が昨年の58.6%から62.9%に増加するなど、日中間の経済関係を前向きに捉えており、日本側との認識と異なっている。
今後の日中の経済関係について、政治的な対立から経済が一定の距離を置けるかに関して、日本人は、「政冷経冷に至る」の36.2%(昨年40.1%)と、「政冷経熱が維持できる」の35.3%(32.1%)が拮抗している。一方、中国人では、「政冷経冷」へ向かうとの見方が52.7%(昨年56.5%)と半数を超え、「政冷経熱」を維持することができるとの見方の38.9%(昨年38.3%)を大きく上回っている。
中国の報道・言論の自由に関する、日本人の認識はこの10年の調査を通しても変わっておらず、今年も48.6%(昨年45.7%)と半数の日本人は、中国では「報道の自由はある程度認められているが、実質的には規制されている」と認識しており、「中国では情報の規制が厳しく、報道や言論の自由はない」との見方も30.2%(昨年33.3%)ある。
これに対して、中国人の57.1%(昨年49.7%)が、日本でも報道は「実質的に規制されている」と思っており、その割合が昨年よりも増加している。日本では「報道や言論の自由がない」という認識は昨年の20.3%から15.7%へとやや減少したものの、全体では依然として7割の中国人が、日本では報道や言論が規制されているか、自由がないと認識している。
日本人で、自国のメディアの日中関係報道を「客観的で公平だ」と思っている人は、26.8%(昨年25.4%)しかなく、「そう思わない」の方が30.5%(昨年は25.1%)と上回った。ただ、「どちらともいえない/わからない」が、42.4%(昨年36.3%)と4割を超えている。
中国人では73.9%(昨年84.5%)もの人が中国のメディアの日中関係の報道を「客観的で公平な報道をしている」と見ており、日本人の見方と対照的になっている。ただ、「そう思わない」が13.3%と昨年の7.5%から増加している。
インターネット上の世論は民意を適切に反映しているのか、では、日本人で「適切に反映していない」(「あまり適切に反映してない」を含む、以後同様)と思っている人は51.7%(昨年54.4%)と半数を超えている。
中国人でも、「適切に反映していない」との回答の50.9%(昨年46.1%)と5割を超えおり、「適切に反映している」は38.6%と、昨年の47.5%から10ポイント以上、減少している。
これまで過去9回の世論調査は、日本と中国の両国民間の直接交流がきわめて少なく、相手国に関する認識は、ほとんどを自国のニュースメディアからの間接情報に依存している状況を明らかにしている。10回目となる2014年の世論調査でも、この傾向は基本的に変わっていない。
日本人のうち、「中国への訪問経験がある」と回答した人は14.3%(昨年14.7%)に過ぎない。この状況は調査を2005年に開始してからほとんど変化していない。
また「親しい」、「多少話をしたりする」中国人の友人がいる日本人は合わせて21.1%(昨年20.3%)である。つまり日本人で中国への渡航経験や、中国の知人との交流経験がある人は2割前後であり、こうした交流の度合いは、この10回の調査を通じてほとんど変化はない。
中国に関する情報の接触は、「日本のメディアを通して中国の情報を知る程度」が73.9%(昨年76.1%)と圧倒的であり、「中国の文化に直接触れたことがある」(10.7%、昨年は8.6%)、「中国のメディア(テレビ番組や新聞)、あるいはインターネットなどを見たことがある」(13.7%、昨年は10.9%)はそれぞれ1割程度である。
また、日本人の中国に関する情報源は96.5%(昨年95.0%)が「日本のニュースメディア」であり、その76.1%(昨年79.7%)が「テレビ」から最も多くの情報を得ている。つまり、日本人の中国に対する印象や認識は、中国への訪問や中国人との会話といった直接情報ではなく、日本のメディア、とりわけ「テレビ」に依存して形成されている可能性が高く、この構造もこれまでと同様である。
中国人の日本人との直接交流の度合いは日本人と比べてもさらに乏しい。「日本への訪問経験がある」と回答した人は、昨年の2.7%から6.4%へと増加を見せたものの、「訪問経験がない」との回答が93.3%(昨年97.2%)と大勢を占めている構図は変わっていない。また、「親しい」、「多少話をしたりする」日本人の友人がいる、と回答する中国人も合わせて3.1%(昨年3.3%)にすぎず、この10年間に大きな変化が見られない。
中国人の日本に関する情報の接触は、「中国のメディアを通して日本の情報を知る程度」が80.1%(昨年80.3%)と圧倒的である。ただ、「日本のメディア(テレビ番組や新聞)、あるいはインターネットなどを見たことがある」(23.7%、昨年は14.3%)、「日本の文化に直接触れたことがある」(17.0%、昨年は8.6%)も、それぞれ昨年よりも伸びており、日本の一般世論と比べて高くなっているのが特徴的である。
また、日本に関する情報源の割合も、日本世論とは傾向が異なっている。91.4%(昨年89.1%)の中国人が「中国のニュースメディア」と回答しており、その78.8%(昨年79.7%)が「テレビ」だと回答している。この他にも「中国のテレビドラマや映画など」が61.4%(昨年65.3%)、「中国の書籍(教科書を含む)」も37.4%(昨年36.3%)と多く、情報源が中国の中で多様化している。中国人のほとんどが中国のテレビニュースを主体に、中国のテレビドラマ、映画、書籍を通じて日本に対する印象や認識を形成していることがうかがえる。
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