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「第9回 東京-北京フォーラム」は10月26日から2日間にわたって北京で行われ、政治、経済、安全保障及び両国民間の深刻な感情悪化の問題に関して、日中両国を代表する約80人の有力者、有識者、ジャーナリストが熱心に対話に参加した。
今回、私たちは北京での2日間の対話に、特別の覚悟で臨んだ。
それは、「対話の力」で困難を乗り越えるという、民間外交(公共外交)の責任を果たすためである。そして、この決意こそ、「東京-北京フォーラム」の9年前の創設以来から、私たちが守り続けてきた原点である。
私たちが民間の対話に強い希望を共有するのは、「民間の対話」に政府外交の困難を乗り越える特別な役割がある、と考えるからである。昨年、私たちは東京でのフォーラムでこのことを再確認し、その覚悟を「東京コンセンサス」として公表した。
この2日間、私たちがこだわり続けたのもまさにこの民間対話の使命である。
私たちは、事態の打開には、両国民間に未来を切り拓く冷静で長期的な視点での議論を始めることが必須であり、今がその局面だと判断している。こうした冷静な声が両国民間に広がることは、現状の事態冷却と、政府間外交の環境づくりにも不可欠だと考えるからである。
私たちはこうした強い思いから議論を行い、以下の合意をまとめた。
それを、日中の民間による提案、「北京コンセンサス」として提唱する。
1.両国は一衣帯水の隣国であり、アジアにおける主要な大国として多くの共通利益や課題を有する。この関係を安定的に発展させることは二国間だけでなく、アジアや世界の利益に不可欠である。こうした不可分の相互利益はどんなことがあっても守られるべきであり、現状の不安定な二国間関係を改善し、これ以上の事態のエスカレーションと国民感情の悪化を抑え込まなければならない。そのためにも、国民同士の相互理解を深める努力と、困難を相対化する冷静な議論が、国民間で続けられる必要がある。
私たちは、「第9回 東京-北京フォーラム」での対話がその第一歩を踏み出したことの重さを自覚し、未来志向の長期的な相互利益の観点から現実的な解決の糸口を探る真剣な努力を行う。
2.私たちは日中両国の共同声明や平和友好条約など4つの政治文書の核心的な意義を再確認し、両国の平和的な共存発展の姿勢を尊重する立場から、次のことに合意する。両国はどんな対立も平和的に解決すべきであり、平和共存こそが両国が目指すべき究極の目標である。両国はどんな理由があろうとも、どんな対立や課題においてもその解決を軍事的な手段に求めるべきではなく、抗争を回避することを第一義的に考えるべきである。つまり、両国は戦争に道を開くどんな行動も選んではいけない。
こうした「不戦の誓い」は両国の有識者だけではなく、両国民に幅広く支持される必要がある。そのため、私たちは、両国民に開かれた対話を継続的に実施し、健全な輿論に支えられた両国関係や東アジアの秩序作りに私たちの対話の成果を発揮させていく。
3.尖閣諸島をめぐる対立に対処するために、両国政府は話し合いを開始することが急務である。私たちは、平和的な方法により問題を解決し、並びに偶発的な衝突の発生の回避や、長期的に有効な危機管理メカニズムを確立することを両国政府に求める。同時に、我々はこの問題についての新しい智慧を求めて、引き続き対話や相互理解を深めるための共同研究を行っていく。
4.歴史の事実を客観的に受け止め、歴史から教訓をくみとることは、日中関係が長期かつ安定的に発展する上での共通の基盤である。これは両国が後世、アジア、ひいては世界の平和に対して背負うべき責任である。
私たちは両国には様々な意見の違いが存在することを認める。私たちはその違いを認めた上で、お互いの立場を尊重しながら、対立を乗り越えるために対話を継続する。
今回、私たちは上記の4点について合意する。私たちは、今回行った北京での真剣な対話が、両国の障害を乗り越え、未来に向かって新しい動きを始めるためのものであることを再確認し、双方から出された提案に関しては今後も議論を続け、合意を得るための真剣な努力を行うことを確認した。
以上の合意を実行するために、本フォーラムの日本側、中国側の主催団体は対話を継続し、所期の目的を実現すべく努力する。
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