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認定NPO法人 言論NPO <調査協力> 日本:世論総合研究所 中国:零点研究コンサルティンググループ・北京大学 / 2012年6月
日本の言論NPOと中国日報社は、日中の両国民を対象とした共同世論調査を今年4月から5月にかけて実施した。この調査は、最も日中関係が深刻だった2005年から日中共同で毎年行われているものであり、今回は8回目となる。 日本側の世論調査は、日本全国の18歳以上の男女(高校生を除く)を対象に4月26日から5月14日、訪問留置回収法により実施された。有効回収標本数は1000である。 回答者の最終学歴は高校卒が44.3%、短大・高専卒が19.0%、大学卒が23.6%、大学院卒が1.3%だった。 なお、この世論調査を補完するために、言論NPOは有識者へのアンケート調査を世論調査と同じ時期に日本国内で実施した。 これまで言論NPOが行った議論活動や調査に参加していただいた国内の企業経営者、学者、メディア関係者、公務員など約2000人に質問状を送付し、うち600人から回答をいただいた。 回答者の最終学歴は、大学卒が69.0%、大学院卒が22.3%で合わせて91.3%となる。これらの有識者は一般の日本人の傾向とは異なり、77.5%が中国への訪問経験があり、71.7%が、会話ができる中国人の知人を持っている。中国に対する情報もメディア報道などの間接情報だけに依存せず、直接情報を得られると判断される。 これらの意見と世論調査の結果を比較することで、一般的な日本人のイメージを補完しようと考えた。 これに対して、中国側の世論調査は、北京、上海、成都、瀋陽、西安の5都市で18歳以上の男女を対象に、4月19日から5月2日の間で実施され、有効回収標本は1627、調査員による面接聴取法によって行われた。標本の抽出は、上記の5都市から多層式無作為抽出方法により行われている。 また、日本側の有識者調査に対応するものとして、中国では北京大学が実施主体となり、学生・教員を対象としたアンケートを4月20日から5月4日の間に、北京大学、清華大学、中国人民大学、国際関係学院、外交学院の学生・教員を対象に行い、1003人から回答を得た。
今回の調査では、日本人の中国に対する印象は昨年よりもさらに悪化し、中国に「良くない印象」を持っている日本人は、「どちらかといえば良くない印象」を合わせると、昨年の78.3%から84.3%へと増加している。 日本人の中国に対する印象は2008年まで悪化を続け、その後10年までは改善傾向にあったが、2011年に大きく悪化し、今回はそれよりもさらに悪化したことになり、過去8回の調査では最悪の状況となっている。 逆に「良い印象」を持っている日本人は、「どちらかといえば良い印象」を合わせても15.6%しかなく、昨年の20.8%を下回った。 中国人の日本に対する印象は昨年と比べやや改善したが、「良くない印象」は64.5%と6割を超えており依然高い水準である。 中国も昨年、日本への印象が悪化しており、一昨年の55.9%から昨年は65.9%になった。今年はやや改善しているが、それでも日中関係が最も深刻でこの調査が始まった05年の水準よりは高い。 「良い印象」を持っている中国人も「どちらかといえば良い印象」と合わせて31.8%(昨年は28.6%)と昨年を上回っているが、一昨年の水準は回復できていない。
日本人が、中国にプラスの印象を持つ理由で最も多いのは「中国経済の発展は日本経済に不可欠な存在になったから」の52.6%である。 中国人が日本にプラスの印象を持つ理由は、「日本製品の質が高い」が51.5%と昨年に続いて最も多い。「日本の技術は先進的だから」が47.1%で続いており、日本のモノや技術に対する信頼がプラスの印象に寄与している。
日本人が中国に「良くない印象」を持つ最も多い理由は、「資源やエネルギーの確保で自己中心的に見えるから」の54.4%で、「尖閣諸島を巡り対立が続いているから」が48.4%で続いている。 また、「軍事力の増強や不透明さが目に付くから」もこの4年間連続で増加し続けており、昨年の23.9%から、今年は34.8%に増えている。 中国人が日本に対してマイナスの印象を持つ理由は、歴史認識が依然として多い。最も多いのは、「過去に戦争をしたことがあるから」の78.6%。ただ「日本政府が尖閣諸島で強硬な態度を取っているから」も39.8%と4割近くになっており、歴史問題に並び始めている。
設問では、この1年間に、中国、あるいは日本に対する印象が変わったか、についても聞いている。 日本人の約6割が「特に変化していない」と回答している。ただ、これを除いた傾向では「良くなった」がさらに減少するなど、昨年の大幅な悪化に目立った改善が見られない。 これに対して中国人には改善傾向が少し見られる。 中国人の約半数が「特に変化していない」と回答しているが、「良くなった」(「非常に良くなった」と「どちらかといえば良くなった」の合計)は35.2%(昨年は27.5%)と7.7ポイント増加しており、逆に「悪くなった」(「非常に悪くなった」と「どちらかといえば悪くなった」の合計)は14.0%(昨年は16.3%)は14.0%(昨年は16.3%)で2.3ポイントの減少となっている。
「中国と聞いて何を思い浮かべるか」という問に対して、最も多かった日本人の回答は「中華料理」の39.9%(昨年は42.9%)や、「万里の長城」の26.4%(同27.9%)であり、こうした日本人の中国に対する基礎理解の状況は変わっていない。ただ「尖閣諸島問題」は今年は31.5%と3割を超えており、昨年の25.0%を上回った。 「知っている中国の歴史上の出来事や事件」では毎年17の選択肢を例示してそれを選んでもらう形をとっているが、日本人の中国に対する基本的な歴史認識の程度は毎年大きく変わらない。今回も「北京五輪」が82.7%(昨年は83.7%)で最多であり、次に多かったのは「天安門事件」の70.5%(昨年は67.6%)で、「香港返還」が55.6%(昨年は49.0%)となっており、この順序は昨年同様である。それ以外の14の選択肢はおおよそ1~3割程度の理解である。 また、「知っている中国の政治家」では、今回も昨年同様に次期指導者と目される「習近平」を加えた7人の国家指導者を選んでもらったが、依然として「毛沢東」が90.7%(昨年は87.7%)ともっとも多く、次いで「胡錦濤」が80.3%(昨年は73.9%)、「温家宝」が76.0%(昨年は72.1%)と続いている。今年の秋に国家指導者に就くとみられている「習近平」の知名度は昨年より増えたが、22.1%(昨年は14.0%)と約2割程度にとどまった。
これに対して、中国人が「日本について思い浮かべること」で、最も多かった回答は昨年同様に「電器製品」の51.3%(昨年は49.9%)であり、以下、「桜」が42.0%(同33.3%)、「南京大虐殺」が40.3%(同は44.4%)と続いている。「南京大虐殺」は08、09年の2回の世論調査では6割を越えていたが、10年から大幅に減少し今年も減少傾向が続いている。 「知っている日本の歴史上の出来事や事件」では、今回中国側では17の選択肢を提示しそれを選んでもらった。「満州事変、盧溝橋事件、南京大虐殺」を選んだのは84.3%と最も多く、昨年新設した「東日本大震災」の50.5%が続いている。しかし、東日本大震災以外の日本の戦後以後の歴史的な事実に関する理解は、いずれも1割程度である。 今年は2012年が日中国交正常化40周年の年であるため、「中日共同声明と中日国交正常化」設問を追加したが、8.5%と1割未満の理解だった。 「知っている日本の政治家」では日本の戦後の首相11氏を提示して選んでもらったが、「小泉純一郎」が50.0%と最多で中国人の丁度半分は知っていることになる。次いで最近の日本の首相である「菅直人」(24.8%)、「鳩山由紀夫」(17.8%)が続いている。現首相である野田佳彦を挙げている世論は11.8%しかおらず、1割程度の認識である。
「中国の社会・政治体制のあり方」を問う設問では日本人の7割近く(67.9%)が中国を「社会主義・共産主義」と見ており、断トツの中国認識となっている。 そのほかは、「全体主義(一党独裁)」が37.4%(昨年は37.4%)と「軍国主義」が37.2%(同34.4%)、「大国主義」が30.6%(同23.9%)で続いている。昨年と比べると中国を「軍国主義」や「大国主義」と見る日本人が増加している。
これに対して中国人の、日本の社会・政治体制に関する理解は、「資本主義」(49.4%)がこれまで通り最も多いが、今年は「軍国主義」が46.2%と昨年の36.4%から10ポイント近く増加している。 また、今回は、「覇権主義」が28.3%から35.1%に、「国家主義」が14.8%から18.3%に増加している。日本が「民主主義」の国だと見る人は15.6%しかない。 中国の学生等の中でも「軍国主義」という理解は45.8%と、昨年の36.8%から10ポイント近く増加している。
ここでは、両国民に「親切か/傲慢か」、「勤勉か/怠慢か」、「平和的か/好戦的か」、「柔軟か/頑固か」、「信用できるか/できないか」、「正直か/不正直か」、「創造的か/模倣的か」、「協調的か/非協調的か」、「利他主義か/利己主義か」、「集団主義か/個人主義か」、の10の項目で相手国の国民性を判断してもらった。 日本人の半数程度が思っている中国人の姿に絞ると、中国人を「信用できない」と見ている日本人は63.3%(昨年は58.0%)と6割を超えた。その他、中国人を「利己主義」と思っている日本人の57.8%(昨年は53.6%)、「頑固」は54.8%(昨年は52.5%)で、さらに、中国人を「非協調的」と見ている日本人は53.2%(同49.4%)、中国人は「模倣的」と思っている日本人も50.0%(同47.8%)いる。いずれも大幅に悪化した昨年よりもさらにマイナスの傾向を高めている。 これに対してプラスの評価がマイナスの評価を上回ったのは、中国人は「勤勉か、怠慢か」の項目のみで、中国人を「勤勉」と思う日本人は38.7%(同43.0%)である。 これに対して中国人の日本人に対する見方では二つの項目で日本人をプラスに評価し、「勤勉」(65.5%)、「創造的」(57.4%)と見る中国人がそれおぞれ半数を超えているが、昨年よりは少なくなっている。 一方、54.2%(昨年は48.9%)の中国人が日本人を「好戦的」と思っており、また50.4%(同49.5%)が日本人を「利己主義」と考えている。また日本人は「信用できない」と思っている中国人も48.5%(同46.1%)となっている。
昨年の世論調査は、尖閣諸島事件の問題などが反映して、日中関係に対する日本人の認識が悪化したが、この状況は1年経っても改善していない。 まず、53.7%と半数を超える日本人が現状の日中関係は「悪い」と判断し、(「非常に悪い」が5.8%、「どちらかといえば悪い」が47.9%)、23ポイントも悪化した昨年の51.7%よりわずかだがさらに悪くなっている。 これに対して、現状の日中関係を、「良い」(「非常に良い」と「どちらかといえば良い」の合計)と見るのはわずかに7.4%(昨年は8.8%)に過ぎない。 中国人は、現状の日中関係に対する評価は、「良い」と判断している人が42.9%(「非常に良い」が2.2%、どちらかと言えば良い40.7%)で、「悪い」が41.0%(「非常に悪い」が4.4%、「どちらかといえば悪い」が36.6%)とほぼ拮抗している。 ただ「良い」とみる中国人は、大幅に悪化した昨年の54.5%よりも今回はさらに10ポイント近くも減少し、「悪い」と判断している中国人も昨年の32.3%よりも8.7ポイントもさらに増加しており、現状の日中関係を、厳しく見る中国人が増加している。
日本人はこの1年間の日中関係に関する認識に、「特に変化はない」が昨年から5.1ポイント増加し50.8%と半数を超えている。「悪くなった」という日本人は昨年よりもわずかに少なくなったが、それでも39.8%(昨年は44.9%)と4割近くもあり、厳しい認識が増えている。 中国も昨年からの1年間に「特に変化していない」と答える中国人が42.6%(昨年は50.9%)と最も多い。ただ、「良くなった」は37.9%(昨年は31.6%)と近くあり、全体的には昨年の昨年から6.3ポイント増加している反面、「悪くなった」も3.9ポイント増加しており、改善と判断できるできる段階ではない。
今後の両国関係については、昨年を上回る38.1%(昨年は33.2%)の日本人が、日中関係が「変わらない」と見ている。「良くなる」と見る日本人は20.3%(昨年は24.0%)あるが、昨年よりも減少している。 反対に「悪くなる」と見る日本人は23.6%(同22.2%)とわずかながら昨年を上回っており、日中関係が今後、改善に向かうと見る日本人は増えていない。 これに対して中国人にも、今後の中日関係についても悲観的な見方が高まっている。今後の中日関係に関して、「良くなっていく」と見ている中国人は、「どちらかといえば」を加えて37.3%と最も多いが、昨年の44.7%から7.4ポイントも減少している。反面、「悪くなっていく」は「どちらかといえば」を加えて18.8%で昨年の10.7%から8.1ポイントも増加している。
「日中関係の発展を阻害する主な問題は何か」という設問で日本人に最も多かったのは「領土問題」(尖閣諸島問題)の69.6%で突出している。 この尖閣問題は中国漁船の日本の巡視船への衝突事件で一昨年、急浮上したが、今回は昨年の調査の63.2%をさらに上回っている。 次いで、「海洋資源など巡る紛争」が34.1%(昨年は35.2%)、「中国の反日教育」が28.6%(昨年は30.9%)、「日中両国民に信頼関係がないこと」が27.6%(昨年は31.6%)と続いている。 中国でも「領土問題」が懸念材料と答える中国人が51.4%(昨年は58.4%)と昨年同様、最も多く、突出している。それ以外については、「中日両国民に信頼関係がない」(25.6%)、「海洋資源などを巡る紛争」(25.0%)が続いている。 興味深いのは、「中国国民のナショナリズムや反日感情」を挙げる中国人が21.3%で昨年の13.5%から7.8ポイントも増加していること。自国の世論の状況を両国関係の懸念材料として中国人の5人に1人が捉えている。
ただ、こうした状況下でも、日中両国民共に日中関係を重要だと判断している。 日本人で日中関係を重要と思っているのは80.3%(「重要」は44.4%、「どちらかといえば重要」が35.9%)」と高く、昨年の77.6%を2.7ポイント上回っている。 中国人も78.4%と約8割が日中関係を重要だと判断している。ただ、一昨年の調査からやや減少傾向にあり、昨年の83.1%からは4.7ポイント減少している。
こうした日中関係の重要性に対する認識を、それぞれ日米関係と中米関係と比較していただいた。 日本人には、日中関係と日米関係のどちらが重要か、と聞いたが、「日中、日米が同程度に重要」が60.1%と最も多く、昨年の55.5%から4.6ポイント増加している。 「日米関係の方が重要」と判断する日本人は27.0%で昨年の30.3%よりは3.3ポイント減少しているが、「日中関係の方が重要」は4.5%に過ぎない。 中国人には中日関係と中米関係のどちらが重要かを聞いた。中国人も日本人と同じく、「日中、日米が同程度に重要」が最も多く55.4%と6割近くである。 次に多いのは、「中米関係の方が重要」の19.7%(昨年は25.7%)で、「中日関係の方が重要」が15.5%(昨年は14.1%)となっている。昨年と比べると「中米関係の方が重要」が6ポイント減少し、「中日関係の方が重要」が1.4ポイント増加している。 米国との関係を重視する見方は減少しており、中国の大学生等は中米関係を重要視する見方が過去の調査では最も多かったが、今回は40.5%(昨年は45.5%)で「どちらも同程度に重要」の45.2%(同39.0%)に逆転された。
今回の調査では、新しい設問として、日米中の間の親近感を尋ねている。 日本人には、「中国と米国のどちらに親近感を感じるか」を聞いたが、米国が51.9%で半数を超えて最も多く、「どちらにも親近感を感じない」が18.0%で続いた。「中国に親近感を感じる」日本人は6.6%に過ぎない。 これに対して中国人は「どちらにも親近感を感じない」が38.0%で最も多く、次には、「米国により親近感を感じる」が25.5%で続いた。 日本により親近感を感じるのは6.0%である。
日本と中国間で行われている首脳会談に関しては、日本人、中国人ともに半数以上が評価していない。 日本人は「具体的な成果がなく評価できない」と54.0%(昨年は50.2%)が答えており、「評価できる」の5.7%(昨年は5.9%)を大幅に上回った。 また、中国人も「評価できない」は57.7%(昨年は51.2%)となり、「評価できる」は27.3%だが、昨年の32.3%から減少している。 日本人が、首脳会談で議論してほしい課題は、「尖閣諸島などの領土問題」が36.6%と最も多く、次いで「北朝鮮の核問題」の34.5%となっている。 中国人も「尖閣諸島などの領土問題」を挙げる人が27.7%と最も多く、「北朝鮮の核問題」(21.3%)や原子力発電の安全の問題(19.2%)が続いている
日中間の民間レベルの交流に関しては、日本人は74.3%(昨年は73.9%)が「重要」(「どちらかといえば重要」を含む)と考えている。 これは中国も同様で、「重要」と考える中国人は80.1%で、両国民共に民間レベルの交流の重要性を認識している。 民間交流を進めるべき分野では、日本人が「文化面での交流」(34.5%)、「民間企業間での人材交流」(26.8%)、「留学生の受け入れ」(24.7%)が上位に並んだが、中国人は「メディア間の交流」が42.2%で最も多く、「文化面での交流」が34.2%で続いている。
日本人も中国人も半数を超える人が相手国に「行きたくない」と答えている。 まず、中国に「行きたい」と回答した日本人は46.0%(昨年46.6%)で、「行きたくない」は53.8%(同53.3%)である。 逆に、日本に「行きたい」という中国人は44.2%(昨年は32.3%)で、「行きたくない」の方が55.3%(昨年は61.2%)と多い。昨年と比較すると改善傾向は見られるが、それでも、半数を超える人が、日本に行きたくない、としている。 日本人が中国に「行きたくない」理由は、「安全、衛生上の問題で安心できない」が66.7%で昨年同様に最も多く、「魅力を感じないから」が39.0%で続いている。また、「中国との間で様々な問題を抱えてきたから」という理由を回答した日本人も25.8%(昨年は23.6%)に増加している。 一方、中国人は「言葉が通じないから」(55.4%)、「お金がかかるから」(50.8%)の回答が昨年同様に最も多い。「放射能汚染が心配だから」を理由とする人は28.7%と、昨年の38.3%を9.6ポイント下回った。
日本では歴史問題の解決に対する悲観的な見方が増えている。「両国関係が発展するにつれ、歴史問題は徐々に解決する」という楽観的な認識は26.4%となり昨年の29.0%を下回った。これに対し「両国の関係が発展しても、歴史問題を解決することは困難だ」は昨年の38.9%から42.7%に増加、過去8回の調査で初めて4割台と悲観論が広がっている。 中国国民は、「中国と日本の関係が発展するにつれ、歴史問題は徐々に解決する」という楽観論が46.4%と最も多く、昨年の42.7%より増加した。ただ、「歴史問題が解決しないと日中関係は発展しない」が25.1%で続いており、歴史問題の解決が不可欠、との見方が依然根強い。「解決は困難」との回答は24.2%で昨年(26.9%)よりも減少している。
解決すべき歴史問題とは何か、に関しては、日本人の半数以上の53.2%が「中国の反日教育や教科書の内容」と答え、昨年の47.5%から増加している。 次いで「中国メディアの日本についての報道」が34.7%となっている。 ただ、「日本の戦争賠償などの問題」(25.4%、昨年は19.7%)、「日本の歴史教科書問題」(23.1%、昨年は22.3%)、「日本の南京大虐殺に対する認識」(21.9%、昨年は18.9%)など日本自身の問題を課題に挙げた選択肢を選ぶ日本人が、昨年よりもわずかであるが増えている。 中国人が歴史問題の解決すべき課題と感じているのは、昨年同様に「侵略戦争に対する日本の認識」(49.8%)や「南京虐殺に対する認識」(52.1%)の2つが半数程度になっている。ただ、今回は「中国の歴史認識と教育問題」が昨年の25.6%から32.5%へ、「中国の政治家の日本に対する発言」が昨年の16.4%から22.4%へ、そして「中国メディアの日本についての報道」が昨年の15.0%から20.5%へ増加するなど、中国自身の問題をあげる中国人が増えている。
日本の首相の靖国神社参拝については、日本人は、「参拝しても構わない」と容認する人が44.9%(昨年46.8%)と昨年同様、4割を超えており最も多い。「私人としての立場なら構わない」の27.9%(昨年は29.3%)を合わせると7割に達している。「公私ともに参拝すべきでない」は昨年の7.2%より若干増加したが10.6%に留まっている。 中国人は、「公私ともに参拝すべきではない」が43.1%で最も多いが、昨年(53.8%)よりも減少している。代わりに「私人としての立場なら構わない」が36.2%と昨年の24.8%から11.4ポイントも増加し、初めて3割を超えている。
日本人は、「これからの世界政治をリードしていく国や地域」として、53.4%(昨年は55.8%)と半数以上が「米国」を選んでいる。続いて「G8」の24.1%(同25.6%)、「G20」の21.5%(同18.8%)が並んでいる。上位3位までは3年前から変わっていないが、「G8」は減少しているのに対して、「G20」 は増加している。「中国」を選んだ日本人はやや減少しており、今回は18.1%(昨年は18.4%)である。 中国人が考える世界のリーダーは、3年前から「米国」が最も多く、「中国」がそれに並ぶ構図となっている。ただ、今回は「米国」が51.1%と昨年の42.9%から大幅に増加した反面、「中国」は42.8%(昨年は40.8%)と微増のため、両国の差が広がっている。 それに続くのが、「EU」の17.5%(昨年は15.8%)と「G20」の13.3%だが、「G8」は10.9%と昨年の18.2%から大きく減少した。
日本人の「米国と並び影響力を競う」との見方は、昨年から減少に転じ、今回は32.4%(昨年34.6%)になった。逆に「中国経済は米国に並ぶのは難しい」との見方が32.6%(同28.5%)に増加し、初めて首位となるなど、慎重な見方が広がっている。 日本の有識者は「米国と並び影響力を競う」と見る有識者は42.7%(昨年は40.8%)と最も多い。ただ、「中国経済は米国に並ぶのは難しい」との見方も30.8%(同26.4%)と昨年から増加している。 中国は、全体としては日本よりは強気の回答が多い。「米国を抜いて世界最大の経済大国になる」は21.5%(昨年は26.6%)と昨年を下回ったが、「米国と並び影響力を競う」は53.8%(同52.7%)と半数を超え最も多い。「米国に並ぶのは難しい」との回答は13.3%(同12.3%)にとどまっている。ただ、「わからない」が11.2%(同7.6%)と増加している。 また、中国の大学生等も「中国は米国と並び影響力を競う」との回答が最も多いが、「米国に並ぶのは難しい」との回答が30.2%と3割程度存在するなど、自国の将来に悲観的な見方も存在する。
今回は新しく、中国の経済発展に関連して、「人民元は世界の基軸通貨になると思うか」という設問を追加した。 日本人は人民元の問題にかなり慎重であり、中国でもかなり強気の中国人と大学生等でも見方の違いが目立っている。 日本人は「国際化は進むが、円やユーロと同じ地位にとどまる」との見方が48.7%で最も多く、「近い将来ドルに代わる基軸通貨になる」は1.7%、「遠い将来ドルに代わる基軸通貨になる」は1.4%しかない。 中国人は、日本人よりはかなり強気の見方で、「遠い将来」(32.3%)と「近い将来」(13.4%)を合わせて「人民元がドルに代わる基軸通貨になると思う」が45.7%もある。 「国際化は進むが、円やユーロと同じ地位にとどまる」との見方は1割程度(10.2%)である。 ただ、中国の大学生等は慎重で、「遠い将来」と「近い将来」を合わせても「人民元がドルに代わる基軸通貨になる」と回答したのはわずか1割程度(15.1%)であり、「ドルに代わることはないがアジアを代表する国際的な通貨として定着」が50.1%、「国際化は進むが、円やユーロと同じ地位にとどまる」が22.5%となっている。
日本の2050年の国際的な影響力について日本人で最も多いのは、「中程度だが何の影響力もない国」という評価であり、昨年の19.4%から25.7%と上昇している。 これに対して中国人は日本の2050年の姿を全く違う見方で見ており、「軍国主義の大国」が24.0%で最も多く、昨年の14.7%から大幅に増加している。昨年、最も多かった「中程度だが影響力が非常に強い国」の26.5%から19.0%に減少している。
日中間の経済関係について、「日本にとって中国の経済発展はメリットであり、必要である」との見方を持つ日本人は43.4%(「どちらかといえば」を含む)と、昨年落ち込んだ41.9%から若干改善した。一方で「中国の経済発展は脅威である」との見方は昨年同様41.8%(「どちらかといえば」を含む)と4割台となり、メリットと脅威の2つの見方が拮抗する形になっている。 ただ、有識者では中国経済の発展をメリットと見る人が多く、84.4%と昨年(81.4%)を上回った。 中国人は56.3%(「どちらかといえば」を含む)が、日本の経済発展はメリットで必要だと見ているが、脅威だとみる見方が、昨年の25.5%から31.9%に上昇している。
将来、「アジアは将来、EUのように一つの経済圏として統合していくと思うか」に関しては、例年と同様に日本人と中国人の認識差が存在する。 日本人の43.2%、有識者の65.0%が「思わない」と答え、「思う」と答えたのはそれぞれわずか9.5%、14.7%にすぎない。 一方で、「思う」と答えた中国人は昨年の52.9%から若干減ったが約半数の48.9%で、「思わない」の35.7%を大幅に上回っている。しかし、中国の大学生等は逆に日本人の見方に近く、「思う」が27.1%(昨年は19.1%)であるのに対して、「思わない」が55.8%(同61.0%)と半数を超えている。
原子力発電の今後については、日本人と中国人で見方が分かれた。 まず、日本人は「今後は減らしていくべき」が42.6%と最も多く(昨年は44.8%)が、「止めるべき」は23.2%(昨年は12.7%)と昨年から増加し、合わせると65.8%と7割近くの国民が脱原発の方向を選んでいる。 これに対して中国では、「現状程度に留めるべき」との回答が最も多い42.3%だが、昨年からは9.6ポイント減少している。代わって増加したのが「増やすべき」で昨年の14.3%から大きく増加し23.0%となった。 大学生等でも「増やすべき」が33.3%(昨年は26.8%)と最も多い。
日本人は過去7回の調査結果と同じく、「北朝鮮」に脅威を感じている人は72.8%(昨年は70.9%)と7割を超えている。ただ、「中国」と回答する人も58.7%で6割に迫っており、この水準は10ポイント以上上昇した昨年(57.5%)を更に上回り、これまでの調査で最も高い水準となっている。 特に日本の有識者の「中国」に対する脅威意識は高く、北朝鮮の74.0%(昨年は69.0%)を上回る81.3%(同80.0%)である。 中国人は「米国」に強い脅威を感じており、今回も昨年と同じく60.5%で最も多い。それに続くのが「日本」の45.3%で、昨年の42.7%から増加している。「ロシア」の22.8%(昨年は20.3%)や「EU」の16.9%(同9.9%)、「インド」の16.7%(12.4%)が続いている。「軍事的脅威を感じる国はない」との回答は15.1%(昨年は12.3%)と若干上昇した。
日本人が「中国」に軍事的な脅威を感じる理由は、「しばしば日本の領海を侵犯しているから」が67.3%(昨年は66.4%)で最も多い。 次は、「中国が軍事力増強を続けているから」(61.5%、昨年は60.0%)となり、昨年新設した選択肢である「領土や海洋資源で紛争があるから」が55.2%(昨年は58.3%)で続いている。 注目されるのは、「中国の軍事力についての情報が少ないから」と回答する日本の世論が51.8%、有識者が57.6%と昨年の27.5%、31.3%からそれぞれ大幅に上昇したことで、中国の軍事力情報の不足を指摘する、回答が大きく増えている。
中国人が、日本に軍事的な脅威を感じる理由は、「尖閣問題で日本は米国の軍事援助を期待している」が57.4%で最も多い。 続いて「日本の軍事力はすでに強力だから」の54.4%(昨年は38.1%)と、「侵略戦争を起こした歴史があるのに、未だ多くの日本人が正確な認識を欠いているから」が53.5%(昨年は49.7%)が並んでいる。ただ、「中日間に領土や海洋資源での紛争がある」を理由に答えた中国人は26.7%に過ぎない。 これに対して、中国の大学生等は「侵略戦争を起こした歴史があるのに、未だ多くの日本人が正確な認識を欠いているから」が66.9%で最も多く、「中日間に領土や海洋資源での紛争がある」が58.7%で続いている。
今回は「東アジアの海洋で日本と中国などの間に軍事紛争は起きるか」という設問も新たに加えた。 日本では、「起こらないと思う」の37.9%が最も多かったが、「将来的には起こると思う」の24.3%と「数年以内に起きる」の2.9%を合わせても軍事紛争の可能性を懸念する見方は3割に満たない。ただ「わからない」との回答も34.6%もあった。 日本の有識者は「将来的には起こると思う」が38.2%となり、「数年以内に起きる」の7.5%と合わせると45.7%と半数に近づいている。「起こらないと思う」も38.2%と4割近くある。 これに対して、中国人で最も多いのは、「将来的には起こる」のは36.9%で、「数年以内に起きる」の13.3%を合わせると50.2%となり約半数の中国国民が日本等と中国の間で東アジア海洋での軍事紛争がいずれ起きると思っている。 ただ、「起こらない」は28.6%と3割程度あり、「わからない」も20.7%となっている。 中国の大学生等は、さらに軍事紛争に関する懸念が高く、「数年以内に起こると思う」(11.7%)、「将来的には起こると思う」(44.4%)と56.1%となっており、その可能性を感じているのは6割に近づいている。
今回はこうした紛争を回避するために「東アジアの安全保障の多国間枠組み」の必要性についても聞いている。 東アジアに現在、安全保障を議論する常設の場が存在していないことに対し、日本の国民や有識者はその必要性を強く感じている。 多国間の協議の常設の場を、日本人の52.1%が「必要である」と答えており、「必要でない」はわずか5.3%しか存在しない。ただ、42.4%が「わからない」と回答している。日本の有識者については、89.2%が「必要」と考えており、「必要でない」は6.5%に過ぎない。 これに対して、中国人は、「必要である」が47.1%と半数近くあるが、「必要でない」も38.1%と4割近くあり、意見が割れている。 中国の大学生等では「必要である」が52.3%と半数を超え、「必要でない」は20.9%と2割程度である。ただ、「わからない」も26.7%と3割近くある。
この設問に加え、「必要である」と回答した方に「その場合、どの国が参加すべきか」も尋ねてみた。 9割近い日本人が選んだのは、「日本」(91.4%)と「中国」(87.9%)と「韓国」(87.5%)の3カ国であり、日中韓で東アジアの安全保障の多国間枠組みを形成すべきとの見方である。だが、このほかにも「米国」(57.8%)、「ロシア」(51.4%)、「インド」(51.8%)、「北朝鮮」(50.7%)、「ASEAN諸国」(54.7%)を半数を超える日本人が選んでいる。 これに対して、中国人の意見は1つの軸に固まらず、拡散している。「中国」が81.9%で突出して多いが、その他は「米国」(55.0%)と「日本」(52.8%)の2カ国が半数を超えているのみである。4割を超える国は「韓国」(44.1%)と「ロシア」(47.5%)であり、「ASEAN諸国」(35.6%)で続いている。 中国の大学生等で8割を超えているのは、「中国」(94.9%)、「日本」(88.4%)、「韓国」(82.7%)3カ国あり、日本の世論と近くなっている。この他、半数を超えているのは、「北朝鮮」(65.3%)と「ロシア」(52.6%)の2カ国である。米国は32.6%と少ない。
今回は、新しく領土問題に関する設問を加え、「日中間に領土問題は存在しているか」と日中両国民に尋ねた。 日本で「領土問題が存在している」と回答したのは62.7%と6割を超えており、「存在していない」は16.1%に過ぎなかった。 尖閣諸島は日本が実効支配しており、日本は政府の「領土問題は存在しない」という見解を示している。しかし、尖閣問題が表面化する中で、一昨年には中国漁船の尖閣領海内航行と海上保安庁の船舶への体当たり事件まで起きている。こうした状況に日本国民も6割が中国との間に、領土問題の存在を感じている。 これに対して中国人も59.3%と約6割は「領土問題は存在している」と回答しているが、27.3%が「領土問題は存在していない」と回答している。中国の大学生等は「存在する」との回答が83.1%と8割を超えている。
次に、「領土問題が存在している」と答えた方に、どのようにしてこの問題を解決していくべきかを尋ねた。 日本で最も多かったのは、「両国間ですみやかに交渉し解決すべき」の40.7%、次に「国際司法裁判所に提訴すべき」が29.0%で続いた。 「解決を急がずに、当面は棚上げし対立の激化を防ぐべき」、「長期的に棚上げして当面は共同開発を目指すべき」はそれぞれ11.0%、10.0%程度であった。 ただ、日本の有識者の場合は逆に「解決を急がずに、当面は棚上げし対立の激化を防ぐべき」が32.0%で最も多く、「長期的に棚上げして当面は共同開発を目指すべき」が27.9%で続いている。 中国人も「両国間ですみやかに交渉し解決すべき」が52.7%と最も多いが、27.7%と3割近くが「解決を急がずに、当面は棚上げし対立の激化を防ぐべき」と答えている。国際司法裁判所に提訴すべき」は7.5%に過ぎなかった。 中国の大学生等も「両国ですみやかに交渉し解決すべき」が43.6%で最も多く、「解決を急がずに、当面は棚上げし対立の激化を防ぐべき」(25.9%)、「長期的に棚上げして当面は共同開発を目指すべき」が19.7%で続いている。
中国製の食品の安全性に対しては、日本人は92.8%(昨年は90.5%)と9割を超える人が「不安」(「非常に不安」と「やや不安」の合計)を感じている。9割の人が不安を感じているのは、08年にこの設問を導入してから5年連続で、改善の傾向は見られない。 中国人も「不安」を感じる(「非常に不安」と「やや不安」の合計)と回答した人は80.7%(昨年は78.9%)と8割を超えており、大学生等で「不安を感じている」回答も88.9%(昨年も88.8%)で9割近い。
今回は昨年の東日本大震災に伴う原発事故を受けて、放射能汚染などの風評の影響を探るために、日本食品の安全性についても尋ねた。 日本では「不安を感じる」(「非常に不安を感じる」と「やや不安を感じる」の合計)が62.3%で、「不安を感じない」(「まったく不安を感じない」と「あまり不安を感じない」の合計)が33.2%である。 中国では「不安を感じる」(「非常に不安を感じる」と「やや不安を感じる」の合計)が82.5%と8割を超えている。
51.5%(昨年は42.9%)の日本人は、中国では「報道は実質的に規制されている」と認識しており、「中国には報道や言論の自由がない」と思っている人も29.1%(昨年は33.4%)いる。逆に「自由がある」と思っている日本人は3.4%(同3.7%)しかない。 これに対して、中国人も60.7%(昨年は44.0%)が、日本でも「報道が実質的に規制されている」と思っており、「自由はない」という認識も10.1%(昨年は13.8%)存在している。逆に、日本に「報道や言論の自由がある」と思っている中国人は15.7%(同20.1%)しかない。
また、日本のメディアが、日中関係の報道に関して「客観的な報道をしている」と思っている日本人は23.4%に過ぎず、逆に23.9%が、「客観的な報道をしているとは思わない」と感じている。「どちらともいえない/わからない」は52.5%である。 これに対して、中国人は64.4%(昨年は70.3%)と6割を超える中国人が中国のメディアの日中関係の報道は「客観的」と感じている。「客観的な報道をしているとは思わない」と思っている中国人は21.6%(昨年は17.4%)と2割である。 一方で、中国の大学生等は逆に「客観的な報道をしていると思う」と回答した人はわずか18.3%(昨年は13.1%)で、36.9%の学生が「客観的な報道をしているとは思わない」と感じている。
今回は、両国民にインターネット上の世論が民意を適切に反映しているのか尋ねた。 まず、日本では「反映していない」と思っている日本人は(「あまり適切に反映してない」と「適切に反映していない」の合計)が52.1%と半数を超え、「適切に反映している」は9.5%と1割にとどまった。ただ、「わからない」が38.3%ある。 中国でも、「反映していない」との回答(「あまり適切に反映してない」と「適切に反映していない」の合計)が46.4%と最も多いが、「適切に反映している」と思っている中国人も43.8%存在し、ほぼ拮抗している。 中国の大学生等は、日本を知る上で利用するツールとして「インターネット」を多く挙げているが、インターネット上の世論は民意を「適切に反映してない」と思っている人が62.7%と6割を超えており、「反映している」は16.0%に過ぎなかった。
これまで過去7回の世論調査は、日本と中国の両国民間の直接交流が極めて少なく、相手国に関する認識は、ほとんどを自国のニュースメディアからの間接情報に依存している状況を明らかにしている。8回目となる2012年の世論調査でも、この傾向は基本的に変わっていない。
日本人のうち、「中国への訪問経験がある」と回答した人は16.5%にすぎない。(昨年は13.4%)この状況は調査を05年に開始してからほとんど変化していない。また「親しい」、「多少話をしたりする」中国人の友人がいる日本人は合わせて19.7%(昨年は19.5%)であり、こうした交流の度合いは、この8回の調査を通じてほとんど変化はない。 日本人の中国に関する情報源は96.3%が「日本のニュースメディア」であり、その78.1%が「テレビ」から最も多くの情報を得ている。 これに対して有識者は一般の日本人の傾向とは異なり、77.5%が中国への訪問経験があり、71.7%が、会話ができる知人を持っている。 有識者の中国に対する情報源は一般の日本人と同様に「日本のニュースメディア」が82.5%と最も多いが、「日本の書籍」(38.2%)や「中国人との直接会話」(25.5%)を挙げている人も比較的多く、より多様化している。そして、日中関係についての情報を最も多く得ているニュースメディアの中では「新聞」を活用する人が48.3%と最も多く、「インターネット」の活用も年々増えており、21.2%となっている。
これに対して中国人の日本との直接交流の度合いはさらに乏しい。日本を訪問した経験があると回答した人は全体のわずか1.6%に過ぎない。また、「親しい」、「多少話をしたりする」日本人の友人がいる、と回答する中国人も合わせて3.0%(昨年は5.2%)に過ぎず、この8年間に大きな変化が見られない。 ただ、日本と異なるのは、日本に関する情報源の割合である。84.3%の中国人が「中国のニュースメディア」と回答しているが、この他にも「中国のテレビドラマや映画」などが54.0%、「中国の書籍(教科書を含む)」も32.7%と多く、「日本のニュースメディア」への依存度が高い日本とは傾向が若干異なり、情報源が中国の中で多様化している。 中国の大学生等では、日本の有識者ほど、日本との直接交流が顕著なわけではない。ただ、日本への訪問経験は7.7%(昨年は7.6%)、「親しい」、「多少話をしたりする」日本人の友人がいる人は39.4%(昨年は41.0%)と4割程度であるが、一般の中国人と比べれば交流が進んでおり、異なる傾向を有している。 また、中国の学生の日本に関する情報源も「中国のニュースメディア」は81.7%と最も多いが、「中国の書籍(教科書を含む)」は48.0%、「中国のテレビドラマや映画」は43.2%、さらに「日本のアニメ」が28.6%、「日本のテレビドラマ、情報番組など」が26.7%となっている。 さらに、大学生等の場合、最も利用する中国のニュースメディアで多いのは、日本とは異なり、「インターネット」(61.5%)の活用である。しかも、インターネットを利用する学生の割合は、年々増加している。