. 東京-北京フォーラム 公式サイト - 発言録

国分 良成氏(慶應義塾大学法学部長 教授)

 110822 f kokubun慶応大学の国分良成ですが、私はこれまでのフォーラムすべてに参加してきました。「東京-北京フォーラム」は各界の有識者が自由に日中関係についていろいろ提案する場ですが安全保障対話はその中でもっとも激しい議論が行われております。それぞれの国の一流の論客が集まっており、基本的には自由な議論をしていただき、どういう問題があり、協力解決に持っていくかと言うことを議論したい。安全保障対話が最も激しいということは最も難しいということ。自由な議論・提言をしていただき、次回へつなげていただきたいともいます。安保を話すと、必ず関わるのが政治の問題であります。この話は政局にも関係してくるのであって、日本は次の総理がどうだという話ばかりしていますが、実は中国もまったく同じで、なかなか言えることではありませんけれど、政局に関わるということも考慮しながら対話と進められることも期待したいと思います。

 

中国側基調講演: 陳 建氏(中国国連協会会長 前駐日特命全権大使)

 110821 e chinkenありがとう。前回の対話は激しい議論で、今回も議論が激しくなると思いますが、中日協力とアジアの安全について、中日はアジアの鍵ですが、依然この地域には冷戦の構造、朝鮮問題、両岸問題のような課題があります。テロのような新しい安全問題については協力しなければならない。経済では鍵でありながら、安全分野では協力していない。戦後中日両国は何をしてきたかといえば、安全保障でいっしょにやったことはほぼゼロです。いやおうなしに我々はこのことをアメリカに託しましたが、国際情勢の変化に応じて中日という大国はアジアで積極的な役割を果たさなければなりません。大きな要素はアメリカですが、中日両国は安全保障で協力できるでしょうか。障害は相互信頼が足りないことです。なぜ心理的障害があるのでしょうか。解決しなければ、戦略的位置づけをしなければ、仮想敵とみなせば基盤はなくなります。仮想敵ならやっていることは悪い方向にしか考えられなくなり、疑念はなくなりません。ことわざにありますが、斧をなくして隣人が盗んだと疑念を抱き、隣人を監視して容疑者と錯覚したあと、なくした斧を見つけたら疑念が晴れた、という話があります。相手を仮想敵とみれば相手がどんな努力をしても犯人になります。相手を敵と見る証拠がなければ、位置付けを棚上げしておいて、観察すること。中国は日本を仮想敵とは見ていません。中国が懸念するのは両岸関係で、なにかあれば日米同盟が介入するのではと心配しています。両岸関係にはアメリカを介入させません。なぜ日本が中国を仮想敵とみるのか、理解に苦しみます。国防の近代化は「4つの近代化」のひとつであり、最初の段階は経済重視でした。中国が空母を作ると日本に反響があります。なぜ日本はインドを問題視しないのですか。日本はどのような心理的状況で神経をとがらせているのか、それは仮想敵ということに尽きます。そういうことをしなければ相互信頼はできていきます。共通の利益を拡大し、協力を前進させなければなりません。我々は同じように貿易立国であり、シーレーン確保は共通の利益です。日本は戦後平和憲法を堅持して、飛躍的な発展をとげました。中国も平和的発展を堅持しています。両国は石油・天然ガスの輸入国で、利益確保はともに重要です。ドルをたくさん持っていることも共通しています。これからはこういうことが歴史問題や釣魚島問題よりも大きな要素になるでしょう。シーレーンの確保は必要ですので、アデン湾のような共同作業をしたらどうでしょうか。共通利益を保護することで「ひとつの山に二匹のトラは住めない」という誤解をなくすことはできます。対話の定着、プラットフォームをつくる、敏感な問題を話せる場を作ること。釣魚島問題は未来志向の態度で解決しなければなりません。以前、上海で日本の政治学者と議論しました。日本は尖閣、竹島、北方領土の領土問題がありますが、尖閣だけ係争のあることを認めていません。なぜ違う立場を取るのですか。実効支配しているということが根拠でしょうが、一貫した政策を求めます。係争があることを認めてください。我々の船も行くだけガソリンがむだになるでしょうが、この問題はいまの両国関係に影響してはいけません。係争があると認め、一方的に行動をとってはいけないのです。棚上げすることも大事です。こういうことでやれば解決はそんなに難しくないと思います。ですから中日両国はアジアの安全保障でしかるべき役割を果たすべきであり、中日関係に関心のある人であれば、古い考えを捨て、胸襟をひらけば、平和につながる道を開けると思います。皆様の意見を拝聴したいと思います。

 

国分 良成氏

 日本側にたくさんの宿題が提起されておりました。なぜ領土問題と認めないのかという問題、アメリカの位置づけという大きな問題も提起されました。ここで提案ですが、長島先生の基調講演のあと、1人3分で自己紹介と提起された問題にたいする答えを順番に言っていただきたいと思います。

 

日本側基調講演: 長島 昭久氏(前防衛政務官 衆議院議員)

 110821 d nagashima長島昭久です。昨年に引き続き安全保障対話に参加させてもらい、ありがたく思います。私の役割は、工藤さんの言われたように「喧嘩するほど仲がいい」と言えるような議論をすることです。陳健先生のお話にもありましたが、今、日中関係は重要な転換点にきていると思います。来年中国は新体制に移行し、日本でも早ければ来週新しい体制ができます。ところで、今年は孫文の辛亥革命から100年目の年です。その孫文が90年近く前、神戸で重要な演説をしました。「大アジア主義」と言いまして、西洋には覇道、東洋には王道の文化があり、日本は今その分水嶺にあってどちらになるかは日本国民にかかっていると演説したのです。皆さんご存知のように、日本がその後大きな失敗をいたしました。いまや中国はこの言葉を胸に刻むべきであり、東洋の王道を歩んでもらいたいと思います。

昨年の尖閣事件を契機に、両国関係は大変厳しくあまり回復していません。しかし、地方や民間、経済、文化の分野では相当深化しています。貿易額は国交正常化当初の11億ドルから現在は2700億ドルにまで伸びました。安倍政権から戦略的互恵関係というスローガンが設定されましたが、まだまだ相互信頼は深まっておらず、齟齬をきたしたり、大きな問題が生じるという現実があります。

 私は、「戦略的」という言葉には4つのファクターがあると思います。一つ目は、短期的な利害にとらわれず長期的な大局を見据えること。二つ目は日中二国間の関係で捉えるのではなく、国際的な役割を認識することです。また、三つ目は過去を忘れず、しかし過去にとらわれず未来志向で考えることです。四つ目は、お互いの見解の相違から目を背けないことです。違いは違いですから、現実的解決を求めていくべきでしょう。

さて、今日は焦点を絞って、大きなポイントである海洋の秩序についてお話しします。これまではアメリカがアジアの海をコントロールし、そこに我々が乗っていたという状況です。そこに大きな中国が参入してきたわけですが、これは相手が仮想敵とかいう次元ではなく、秩序をどう作るかという視点で見てもらいたいと思います。

 中国の方々に申し上げたいこととして、まず、近年南シナ海や東シナ海に積極的な進出をされていますが、それで何をしようとしているか不透明だから疑心暗鬼になるのです。シーレーンの確保ですか。それとも米国の排除ですか。空母もそうですが、ASBM、原子力潜水艦を整備するのはなぜなのでしょうか。広大な海域を征服する目的があるのではないかという人もいます。次に、領土や海洋の問題は確立した国際法に従って解決すべきことです。それでだめなら海洋法裁判所等第三者にゆだねるべきことです。最近ベトナムとも争いがあるようですが、中国の主張が法的にどういうものか理解しがたいのです。たとえば、排他的経済水域(EEZ)における外国軍の活動と経済利益の整合性をどう考えるのか。昨年米韓が黄海で軍事演習したとき猛反発されましたよね。また、日中中間線の問題です。日中間で中国は中間線と言う考えを採用せず、大陸棚の端まで支配が及ぶとおっしゃいますが、ベトナムとの間では中間線を採用しています。これは明らかにダブルスタンダードです。どう説明するのでしょうか。

 ここで、海洋安定のための提案をさせていただきます。1つ目に、安全に関する意思疎通のメカニズムが現在ありません。また、中国は海洋執行機関が乱立しています。海軍、海警など5つの機関が入り乱れ、縦割りの弊害もでています。僭越ですが、少し整理する考えはないのでしょうか。また、危機管理システムの構築では、自衛隊・海保・気象庁などを包括する機関を作らなくてはならないでしょう。それから、政治レベルで危機を回避するための対話メカニズムも現在ありません。アジア始まって以来、日本、中国と言う2つの大国がこの地域にできました。あるときは競争し、また協力し、抑制もする関係です。日中関係は現在、その安定的発展のため双方が知恵を出し合う段階にきています。このフォーラムをそのための建設的な意見を述べる機会としていきたいと思っています。

 

国分 良成氏

 明確な問題提起をしていただきました。ひとつの山にトラは二匹住めないという話が」ありましたが、この対話には「ひとつの山に15人のトラ」がいますからすごいことになりそうですね。

 

王 逸舟氏(北京大学国際関係学院副院長)

 110821 e wan先ほど陳健先生、長島先生から代表的な見解が示されましたが、二つ補足します。1つについては、系統的なメカニズムの構築に取り組んでいくべきだということです。暗黙のルールでは足りません。何かあると大きな問題になりかねないのが日中関係です。釣魚島の問題は現状維持で取り組むべきで、係争があることは認めてほしい。中国の指導者はなぜよく躊躇うのかということを言いたい。日本の首相がよく変わるからでしょうか。釣魚島については特別なメカニズムを作っていくことが必要です。責任あるメディアの報道も必要です。偏狭な見方を阻止し、微妙な問題ではことを大きくしないことです。マスコミに煽られて、指導機関が拉致されているのです。

 

山口 昇氏(内閣官房参与 防衛大学校総合安全保障研究科教授)

 110822 g yamaguchi私は防衛大で教鞭を執っておりますが、もともとは陸自のパイロットです。トラの話がでましたが、日本語でトラは酒飲みと言う意味があり、わたしは大トラでございます。陳先生の見解に賛成しますが、相手を仮想敵にしてはいけません。互いが不幸になり、経済、政治にとっても損になります。そのためには共通利益を求めるという方法があります。発言の揚げ足をとるわけではありませんが、アメリカの陰で日中がなにもしていないわけではありません。たとえばアデン湾です。また92年、カンボジアで自衛隊はPKOに参加しましたが、このとき人民解放軍には危険な任務で犠牲者を出しながらも尽力していただきました。非伝統的な分野での協力はできます。我々専門家は仮想敵がいけないと絶対的にわかっていますが、我々の議論の少なさがパブリックに投影されて誤解を生むのだと思います。もっと議論をすべきなのです。日本の自衛隊は世界でもっとも近代化された海軍のひとつであり、米国の第七艦隊もある、そこに中国がでてくると、場合によっては危険なことになるかもしれません。海上での危機管理の努力を進めるべきで、政治的リーダーシップに加え実務レベルでの対話も行われています。変なことで緊張が生じるのを避けるのが我々の責務です。対話の場を育てていくことが重要です。

 

賈 秀東氏

 110821 e ka本日は目に見えないゲストがいて、それはアメリカであります。2匹のトラの話をすると、必ず遠くから一頭のライオンが入ってきます。この話も議論しなくてはなりません。日本はアメリカを同盟国としてアメリカに追従することが重要で、対中関係にも影響を与えています。アメリカは日本に対し70年代には頭越し外交、80年代にはジャパン・バッシング、90年代にはジャパン・パッシング、2000年代に入ってからは中国との関係の中でリ・ディスカバー、再認識をしてきました。安全保障に影響する要素は、中国の台頭とアメリカのアジア復帰、日本の不安定性です。中国はますます大きな影響をもつようになり、アメリカはテロとの戦争から脱却、すなわち反テロから大国との競争のためマルチな協力をはじめました。日本は失われた10年のあと、さらに失われた10年となるかもしれません。アメリカは中国をライバルとみていますが、中国はアメリカの戦略のコマではありません。日本はアメリカにコマとみなされています。日本は戦略的な選択を迫られていますが、中国も孫文のスピーチの状況を考えなくてはなりませんが、西洋のような覇道はとなえず、国内では和諧、国際では世界和諧です。中米日しだいでアジアの国際関係は変わります。

 

西原 正氏(平和安全保障研究所理事長 前防衛大学校校長)

 110821 e nishihara私は防衛大の校長を務めたあと、今はシンクタンクの所長をしています。まず、中国への批判をさせてもらいたい。中国の対外政策には矛盾があります。日本は尖閣を係争地と認めていませんが、中国がいう南シナ海も同じ状況ではないですか。また、中国は戦略的互恵関係といいながら逆の行動をとりました。レアアースの問題です。さらに歴史問題が重要とおっしゃいますが、現在の中国共産党は歴史問題に嘘を伝えています。日本に勝利したのは共産党といっていますが国民党です。昨年ロシアとやった戦勝65年宣言とは滑稽にみえます。もっと色々な議論があって当然なのであり、またそうすべきなのです。いま日中で一番大きな問題は海洋のことです。一緒に何かをやっていくというのは未来に希望を与えるものですが、これまでは中国は積極的に海洋についての対話ということを言ってこなかったけれども、今回は言ってくださいました。私も賛成します。

 

張 沱生氏(中国国際戦略研究基金会 学術委員会主任)

 110821 e cyo全体会議で深い感銘を覚えました。「ひとつの山に2匹のトラは住めない」ということには反対です。世界の情勢、たとえば独仏の和解を見ても歴史的にはWin-Winが大事だということです。私は両国関係に悲観的ではありません。今も係争はありますが、2005の時には3大問題がありもっと対立していました。1つは歴史問題です。小泉首相時代、関係は氷点下になりました。2つめは両岸問題です。日米同盟の介入が心配されました。3つめは領土・海洋の問題ですが、これは最近表面化しているけれども改善しています。中国は日本を軍国主義と見て、日本は中国を脅威とみていました。これはまちがいです。戦後日本の平和的発展を評価しますし、中国の日本判断は冷静になっていますが、日本は中国への懸念が高まっています。経済脅威論は消えましたが軍事脅威論はまだ高まるおそれもあります。それでも2006年以降関係は改善してきました。去年後退はありましたが、歴史は螺旋状の階段ですから、よい方向になっていくでしょう。海洋の問題では危機管理のメカニズムが重要です。首脳訪問など活用し、軍事協議は前進してはいますが、時間が足りません。多層的交流で危機を未然に防ぐのです。境界画定にあたってはEEZの重なるところもありますが、対話を通じて解決しなければなりません。チャンス管理ということも言いたいと思います。共通利益はたくさんあるのですから、協力のチャンスをつかんで両国の食い違いをうまく解決していくべきだと思います。

 

明石 康氏(元国連事務次長 日本側実行委員長)

 110821 d akashi今日は皆さんから非常に冷静で分析的な発言を聞き参考になっています。二匹のトラの話ですが、できればトラの牙は抜いたほうがいいでしょう。一匹のトラは核兵器も持っており大変な通常戦力も持っています。小さなトラが大きな牙を持つよりは、大きなトラに期待するということのほうがむしろよいのかもしれません。中国の平和的意図を疑うものではありませんが、意図というのは歴史や指導者の交代に影響されるものですから、能力の側面も無視はできません。国際政治には理念と現実の問題があります。オバマ大統領はプラハとオスロで全然違う演説をしました。我々は矛盾の中で生きているのであり、理想を求めつつ現実の中で解決策を探っています。果たして平和的方向に進んでいるのか、検証していく必要があるでしょう。今回も、危機管理メカニズムと信頼醸成の方法論が語られたことをありがたく思います。

 

黄 星原氏(中国人民外交学会秘書長 )

 110821 e ko私はこれまでメディア対話に参加してきましたが、メディアと安保は必然的に関係があります。メディアにおいて安全保障はいつもホットな問題として取り上げられています。2てん。釣魚島は歴史的問題であり、アメリカが関わる要素もあります。これは時限爆弾であり、いつもアメリカがあれこれ言います。周総理も鄧小平さんも問題を棚上げして共同開発をするという理念を表明しました。領海は相互信頼の上に達成されるべきものであり、国内法の適用は大きな影響を与えます。慎重に対処しなければなりません。「己の欲せざるところ、人に施すことなかれ」の理屈を適用しましょう。相手を敵とみてはいけません。順調に解決のできない問題もありますが、自分の目で相手をみてしまう傾向があるようです。民主主義じゃないとか、軍事の透明性がないとか、矛盾があるとか色々いいますが、危機には一致結束して対応しなければなりません。

 

秋山 昌廣氏(海洋政策研究財団会長 元防衛事務次官)

 110821 e akiyama私が防衛庁にいたとき、ちょうど冷戦が終わって、日米同盟をどうするかさまざまな議論が行われていました。結局「再確認」ということばを使い、実際には強化するという方向付けなのですが、そのとき中国からいわれたのは「冷戦は終わったんでしょ、なんで強化するのですか」ということです。日本防衛のために同盟は重要ですが、軍国主義復活ではないのかと言われました。日本の防衛費は1990年代からほぼ横ばいですが、その間中国のそれがどれだけ増えたのかはみなさんおわかりでしょう。中国の国防部の人が今日本にいたら何で冷戦は終わったのにということを言うでしょう。軍国主義とか覇権とはいいませんが、活動をなぜ拡大するのか意図を説明してもらいたい。この伸び率がこれからも続くかはわからないですが、経済が順調に発展すれば伸びるのでしょう。20年後は表面的にはアメリカに並ぶでしょう。なぜ国防費増やすのか、国境を接する国が多いからか、人口が多いからか。あと、私にいわせれば仮想敵のことは余り意味のない議論だといえます。どの国の軍も機関も自分の国が攻められることを考えて防衛政策を決めます。仮想敵という話は成り立ちません。最後に、今後中国国防費の増大はどういう結末を迎えるでしょうか。囚人のジレンマに陥ると思います。今防衛省は潜水艦を増やそうとしています。中国への対応です。内容が変わるだけなので防衛費はふえませんが、中国が今のままなら、米国は必ず国防費の増大に移るでしょう。日本は今お金がないですが、消費増税ということになれば防衛費増大に移っていかざるをえなくなるでしょう。

 

姚 云竹氏(中国军事科学院世界军事研究部研究员)

 110821 d 01皆さんが色々質問を提起されましたが、中国海軍は第一列島線内を内海にするのではないかなどいわれても、それは事実にかなわない。国民は中国の軍隊に積極的に働いてほしいという期待をもっています。南に行けば東南アジアと対立するといわれ、西に行けばインド掌握を狙っていると言われ、それでは中国を何だと思っているのですか。どこへ行けばいいのですか。逆にどこへ向かえば脅威といわれないのですか。われわれは、アメリカが中国のEEZの中で偵察をおこなうことには反対です。とても友好的行動とは思えません。これは戦争の準備とみなしてよいと思います。敵意ある行動には断固反対しております。自由航行の安全を確保することは東南アジアや日本や韓国の利益になるのですよ。航行が阻害されているわけではありません。空母の問題ですが、我々はソ連制の空母を改造し、研究や訓練に使います。なぜ空母を持つのかと聞かれますが、中国の憲法と法律が国土の安全を求めるからです。海外における国益を守り、グローバルな大国となることは期待されていますし、中国の意欲もあります。中国の軍隊が強くなるのを見たいと民衆は必然的に思っています。「四つの近代化」においては国防は最後の優先順位であり、平和的手段、平和的発展の政策は変わりません。中国の政策を疑ってはいけません。世界に空母を持っている国はたくさんあるのに、なぜ中国は持ってはいけないのですか。横須賀にあるアメリカの空母が中国にとってどういうものか、考えたことがありますか。

 

中谷 元氏(元防衛庁長官 衆議院議員)

 110821 e nakatani私は防衛庁長官をしていましたが、仮想敵国について、なぜ中国は日本の国連安保理常任理事国入りに賛成してくれないのですか。もう一息のところまできており、中国以外の常任理事国は賛成しておりましたが、中国が協力してくれなかったから実現しませんでした。GDPも負担金も日本は各国をリードしていたのであり、もはや大戦の戦勝国がということは意味がありません。拒否権も民主的ではありません。中国がこれを支持してくれれば国民の敵という意識はなくなるでしょう。大臣訪問も佐官級の交流もなくなってしまいました。やはりもっと大人の成熟した付き合いにしていかなければなりません。日本は1円の領収書までオープンにしているのに、中国は隠しています。些細なことで信頼を失うことになったのが尖閣の事件です。日本の取り締まりに対し衝突してきた漁船を逮捕したわけですが、どちらが悪いのかはビデオを見ればわかるのに大げさにしたのは中国です。二度と起こらないようにしなければなりませんが、あのときの中国は大人の対応ではありませんでした。NATOのような東アジア安保のテーブル、枠組みをつくって、国連の場でも対等であることが必要です。専守防衛と中国が言うなら、空母も戦闘機も必要ないでしょう。

 

五百旗頭 真氏(防衛大学校長 東日本大震災復興構想会議議長)

 110821 e iokibeわたしは西原先生の後継として防衛大の校長をやっていますが、もともとは外交史の学者であります。いままで激しいやりとりがありましたが、歴史家の好奇心から中国文明はどういう道をたどるかという話をしたいと思います。世界で大きく躍進する国が出るとき、軍事力を持たなければ刃にかかるというのが世界史でした。なんとか国力を増大して軍事力で国を守りたいというのは当然の流れであります、しかし、持って使わないということは歴史的にはあまりありませんでした。力を持っていても使いすぎないと言うのは常識であったようです。「驕る平家は久しからず」という言葉もあります。ビスマルクのドイツは達成したことをあまり表にだしませんでした。平和外交でフランスを封じ込めたのです。もしカイゼルがビスマルクを罷免しなかったら20世紀の歴史はどうかわったのでしょうか。国力を持てば軍事力も持ち、持てば使うというのが流れです。ドイツ以上に勃興しているのは鄧小平以降の中国です。しかしドイツとは体格が違います。秋山先生がおっしゃったような質問を以前中国の方にしたことがありますが、理由としては遅れた近代化を直すためか、台湾に対する優位性を保つためか、アメリカに対抗するためか、3つが考えられます。3つ目は強く否定されました。今もし中国の軍拡についてこういう質問をすれば、地域的な優位というのがひとつの説明でしょうか。中国の国益はグローバルに広がって、シーレーンの確保ということもいえますが、しかしそれを自らの軍事力でやる必要はありません。自由航行さえできればよいのではないですか。日本はかつて自存自衛ということを言いましたが、今は必ずしも賢明な考え方だとは思えません。軍備拡大は必ずしもシーレーンに結びつくものではありません。国内的には、とりあえず拡大策はどこでも熱狂的に支持されるものです。そういう中で中国が戦略と言うことをどう考えているか、非常に興味があります。中国は鄧小平以来自由競争のためには平和がいいということで、そのような経験は和諧のもとにもなっています。いまやパワー・ポリティクスはそんなに普遍的なことではありません。中国10数億の国民のためお金をどう使うかということは非常に大事ですから、アメリカが持っているから中国も持つとか、そういう生き方を果たして中国は選ばれるのでしょうか。

 

陳 健氏

 さきほど双方が会話する中で答えが出ていますので、簡単に申し上げます。国防の近代化は中国の基本方針ですが、要はどう見えるかということです。軽く見れば自信が足りないということになり、重く見れば仮想敵国となるのです。同じことが違うところで起きたらそう思わないのに、中国についてだけなぜそういう言い方をするのでしょうか。中国は他国の利益を損なうようなことはしていませんし、日本が注目する言説は現役から引退した人が言ったようなことも多く、いろいろな見方があります。中国は正しい一歩を踏み出したとアメリカは我々を問題視していません。中国がアメリカを追いだすつもりがあるというのなら、それはアメリカが問題にすることでしょう。日本が常任理事国入りできない理由は2つあり、一つがほとんどの国はこれ以上常任理事国を増やしたくないということであり、もう一つは、日本に対する反対はあまりないですが、インドやブラジルなどと一緒にというのは難しいということです。中国が日本を公式に支持するかは中国の民衆にかかっています。お互いの国民が理解しあえていない状況では難しいですね。

 

長島 昭久氏

 非常に活発な議論ができたことをうれしく思います。一通り議論を聞いておりましたが、あえてわたしが西洋の覇道と東洋の王道ということを言ったのは、わが国の反省でもあります。国力拡張で軍備拡大は当然といいますが、皆さんはそうかもしれないけれども、ライジング・スーパーパワーの自覚は持ってほしいと思います。周りの国々はどう思うでしょうか。日本は遅れた帝国主義で失敗したため、中国におなじ轍を踏んでほしくないのです。大国の自覚を持ち、謙遜してパワーを使ってほしいということを、友人として申しあげたいと思います。

 後半の発言録はこちら

カテゴリ: 安全保障対話

親カテゴリ: 2011年 第7回
カテゴリ: 発言録