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趙啓正氏(全国政治協商会議外事委員会主任)

 110821 c cyo今回のテーマは「アジアの未来と中日の相互理解」。このフォーラムも7回目を迎えるが、毎年アジアの問題が取り上げられてきたが、中日関係は両国の範囲を超えて益々アジアに影響を及ぼすものになっている。

 私はまず、中国は中国の利益のためにも、中日友好を望んでいるということを強調したい。そして、それは日本の利益のためにも必要なことだ。アジアの未来のためにも、自国のエゴイズムに陥ってはならない。中日関係はアジア諸国の関心であり、オーストラリアの幹部でさえも中日の良好な関係を望んでいる。我々は、戦略的な視点、未来を見通すための視野を広げ、ズームレンジでこの関係を捉えなければならない。

 さて、その中日関係のネックは何か。中日双方の大部分の人が認識しているのは、歴史問題や領土問題だ。また、新たに浮上したのが中国経済の急成長だ。歴史問題に焦点を当てると、正しい方向に歩み出しているとは思うが、先日来、日本では「尖閣諸島」と呼ばれる「釣魚島」での漁船衝突事故がセンセーショナルな問題になって、友好の妨げになっている。

 今日まで、多くの関係者が中日関係の改善に向けて努力してきた。それは簡単なことではなかった。我々はもう一度その大切さを認識すべきだ。

 

110821 c fujii藤井裕久氏(内閣総理大臣補佐官 民主党衆議院議員元財務大臣)

 今回の東日本大震災に際して、中国の皆様から暖かいお見舞いとご協力をいただき、御礼を申し上げたい。日中にはお互いに信頼が無いと言われているが、隣国にはそういう摩擦はありうると私は思う。ドイツとフランスはあれほど対立があったが、しかしEUでは一体になっている。日中は今のようなある種の摩擦は乗り越えなければならないし、乗り越えられると思う。

 そのためには、国境の壁を低くするほかはない。第一に、政治的に偏狭なナショナリズムは日本から排除しなければならない。1993年に細川護煕首相が「日本は中国を侵略した」と明確に発言したが、日本人の一部には「細川はけしからん」と騒いだ。そういうことはあってはならないというのが自分の意見。だから民主党は靖国参拝をしていない。

 第二に、経済的に中国がGDPで日本を抜くのは当たり前のことだ。これからは、節度ある人事交流が必要だ。

 

葉小文氏(全国政治協商会議常務委員 中日友好21世紀委員会中国側委員)

 110821 c yo私のテーマは、「高きに登りて遠きを望み、中日の信頼強化を図る」ということ。昨年の10月、21世紀委員会の会議に出席した。菅直人首相は謙虚にも唐家璇前国務委員のことを「恩師」と呼んだ。日本は大変勉強に長けている国だと思う。19世紀後期、中国が亡国の危機にあるとき、日本は早くも明治維新を実現し、成功裏に強国への道を歩み、中国にとって手本となった。中国が急激に発展して日本は喜びを感じるが、しかし、日本が急速に発展したときに間違った道を進んだことがあるので、それを戒めとするように。菅首相はそのようにおっしゃった。首相は誠意を持って語られたと思うが、しかしその心配はある程度政治的な相互信頼が欠如している、あるいはもっと高いところにたって遠方を望むことが必要なのかもしれない。

 ちょうど一昨日、胡錦涛国家主席が米国副大統領バイデン氏に会ったとき、中米双方は高きに登りて遠きを望む、国情の差を乗り越えて中米のパートナーシップを作るという話をした。中日関係を構築するのも、同じような考えが必要だと思う。

 では、どこまで高く登るのかということだが、少なくとも日本列島や釣魚島、中国大陸だけを見るのではなく、アジアを見通す必要がある。そしてどこまで遠くまで見るかといえば、目先だけではなく他人、後世に目を転じる必要がある。高く登るためにはしっかりと足元を固め、両国の経済の利益を土台としなければならない。そして遠くを見通すためには、深い文化的コミュニケーションを取る必要があるだろう。

 この点についてだが、経済的利益を土台とすること、中国は平和的発展を望むということは、お互いの発展をどのように捉えるのかということに尽きる。経済発展の歴史的経験に基づいて判断すればミスリードになる可能性がある。たしかに日本の対外侵略は、東アジア諸国に大変な災難をもたらした。しかし、今や、工業の初期にみられるような略奪的成長、局所的成長から、昨今のテクノロジー革命、情報革命が要請する持続的な成長へとシフトしているのだ。コストの高いテクノロジーは経済規模で支え、規模の大きい市場ほどコストも低くなるし、イノベーションの原動力も強くなる。中国は広大な人口、広大なマーケット、そして広大な内需を持っている。科学技術のコスト低下、イノベーションの連鎖反応が生まれている。第三次産業、近代サービス業の発展は絶えずテクノロジーのイノベーションを吸収できる。したがって中国はテクノロジー、イノベーションによって新しい工業化、平和的発展の道を歩むことが出来る。そして、外国に出かけて略奪するようなことはない。

 農業経済時代にはアジアは輝かしい時代を築いた。いまや情報時代、グリーン経済、アジアは膨大な市場、マーケットを持っている。そして様々な技術を身に付ける能力がある。そして世界経済を牽引するバイタリティを兼ね備えている。2010年のアジアのグローバル経済への寄与率は45%を超えている。中日両国はアジアの重要な大国として、東アジアサミットなど様々なプラットフォームで、東アジア共同体のプロセスを推進できる。中日両国の経済規模が非常に強い補完性を持っているし、中国は世界最大の発展途上国として日本の技術ハイエンドな製品を必要としており、日本に学ばなければならない。日本の貿易技術立国は中国のような潜在力の高い、近いマーケットを必要としており、そして中国が作る綿花などを欲している。中国の経済発展は日本にチャンス、マーケットをもたらしている。このような経済発展が土台であれば、それを踏み固めていく必要がある。そうすれば、高く登る事ができるだろう。

 一方で、遠くを見るためには、深い文化的なコミュニケーションが必要だ。趙啓正先生は、「歴史を忘れてはならないが、憎しみを長引かせてはならない」と仰った。これはまさに文化的なコミュニケーションが要求されるところだ。両国には長い文化交流の歴史がある。文化を蓄積すれば怒りっぽくなくなる、大きな道理を考えるようになり、それまでの浅はかな考えをなくすことが出来る。

 午前中、丹羽大使が文化や宗教の力について語っておられた。私は宗教局長だったので両国の仏教文化の交流はまさに、「山川が異なれども法は古なり」、「風月ともに天をいただきよしみは不変なり」ということだ。また、一貫してそのような仏教の偉大な精神が歴史として形成されてきており、仏教は平和、正義、博愛を増長し、遍く相互理解を主張するものだ。古代には鑑真がおられ、中国日本を問わず皆に知られている。まさに仏教が中日交流のゲートを拓き、両国の国民感情を喚起し、修復することができたのである。中日国交正常化の起爆剤となっているということだ。

 今日、嵐が激しく暗流も流れているが、何が起こっているのかわからないという状況の中では、歴史に学ぶことが必要だ。2000年の友好、50年の対立という歴史を持っている。50年の対立を鏡とする。過去反省すべきところは反省する勇気と知恵を持ってこそ、初めて過ちを起こさなくなる。もっと2000年の友好の歴史を鏡として、未来に目を向けるというのが、それが両国関係の主流だと思う。

 日本の文化伝統の中で、中国文化の大変細やかな香りが残っている。これだけ同じように文字が通じているのだ。中日関係が困難にぶつかったときに、文化の力が、民間の力が全面に出てくるということだ。

 共通の経済利益をベースにし、高く望み、深い文化コミュニケーションで利をわきまえ、遠くを見通せば、誠意に基づく政治の相互信頼が出来る。容易に解決ができない問題、敏感な問題について、パワーバランスの理屈で、どっちが強いかという単純なことで解決すべきではない。時代は変わった。強さを頼みにして解決する必要はないのだ。

 釣魚島に日本が兵を派遣すれば中国も派遣する。それでは意味が無い。喧嘩になってしまう。それは時の試練にも耐えられない。中国は誰の脅威にもならないし、その驚異も怖くないと思う。中国の平和発展の道をいずれは理解できる、いつかはそれを真実だと受け止められると思う。菅首相が中国に対して、過去に日本が歩んだ間違った道を歩んではならないという言葉があった。それは余計な心配ではあるが、誠実な言葉だと思う。

 日本にもあえて忠告したい。100年前、アジア各国が等しく落ち込んでいたときに、脱亜入欧で成功裏に立ち上がった。今日アジアが世界経済の新しいエンジンになろうとしたときに、日本はUターンして隣国を智として、和を尊び、引き続き発展するために、アジアに戻ったらどうか。つまり、脱亜入欧では結局、西洋でもない自らの立場も認められず、自己分裂におちいってしまった。日本はそのような道を選ぶべきでないと思う。

 

加藤紘一氏(日中友好協会会長 自由民主党衆議院議員)

 110821 c kato趙啓正さんは私の古い友人で、いつも非常に正しいことを言う。日中がケンカするとアジアの他の国々、オーストラリア含めて、迷惑するということ。今世界の経済は、アジアの国が支配している。人口は世界で68億人、そのうちインドを入れれば過半数はアジア大陸にいる。特に、自国の言葉をしゃべって書ける人、識字率の高い国民といえば、アジアに7、8割はいるのではないか。おそらく20年後は識字率の高い全世界の人口の7、8割はアジアにいて、経済と金融を仕切っていると思う。

 その中で日本と中国が中心なので、この2つが喧嘩したら本来出すべきエネルギーが半分くらいになってしまう。それは日本にとっても中国にとってもアジアにとっても、世界経済のためにもよくない。日本の長谷川さんという経済界の大物が午前中に仰ったとおりだと思う。日中の揉め事は1915年の対華21か条要求から始まったというのは、私は松本先生の塾に入ってはいないが、少しでも勉強したことのある日本人であれば、たいてい気づくことだと思う。日中関係はともすれば喧嘩になるが、よほど注意していい関係を保つように努力しなければならないと思い、大学時代から中国のことをライフワークにしようと思い、中国語も少しずつ勉強して今日に至る。

 政治家になって40年になるが、政治の世界で日本のナショナリズムはどういう種類のものかということを細かく考えている。結論は、日本のナショナリズムには3つある。一つは闘争するナショナリズム。これは隣の国とケンカするナショナリズム。領土問題では典型的に現れるが、日本と韓国の間に竹島の問題がある。ロシアには北方領土。もう一つは尖閣列島。こういうナショナリズムは、少し煽ると、どんなインテリでも挑発され、火をつけては危ない。政治家はこの闘うナショナリズムに火をつけると、国も党内もまとめやすい。でもこれは絶対にやってはいけない。やるとブーメランのように返ってきて政治家に返ってきて、失敗する。これが日本にはまだ、幅広くあると思う。

 二番目は、競争のナショナリズム。サッカーで世界一になりたいが中国に負けた。これは仕方がない。次に勝つように頑張れば良い。それからGDPの競争で負けたら、勝つように頑張ればいい。Per capitaではまだ10倍だから、一人あたりの所得では。だからなぜ負けたのかわからない。日本は年間35,000ドル、中国は4,000ドルまでいったかどうか。まだまだ日本のほうが上。最近は円高なので日本のper capita incomeは米国に近づいているかもしれない。この競争のナショナリズムは負けたら頑張るだけなので、人に迷惑をかけない。良いナショナリズムだ。

 それから三番目には、本当のナショナリズムがある。それぞれの国のアイデンティティを自慢すること。フランス人はフランス語が世界で一番綺麗な言語だと信じて自慢する。文化的に一番繊細な国民だと。米国人はリバティ、自由を大切にするというのが自分の国のアイデンティティだと思っている。日本は自然崇拝。中国は何なんだろう。世界の中で一番古い国。それならエジプトかどこかだろう。世界の中心にある国。こういうアイデンティティだと困る。中国の自慢するアイデンティティって何なのだろう。あまり良くわからない。自国のアイデンティティに自信を持てるようになると、少しくらい負けても、悠々としていられる。

 いま、自国のアイデンティティに自信を持てるような、そんな魂のsoul searchingをやっていて、どこの国が勝つかというのが、全世界の本当の競争の本質なんではないか。いずれ中国も経済発展は飽きてくる。日本は飽きた。米国人よりもいい自動車作るようになったしいい冷蔵庫を作るようになった。もっとグローバリゼーションで米国の価値だけではなくてもっといい価値を持った生活をしたくなった。日本人は守りに入ったから「失われた20年」などと言われているが、そうじゃない。求めるべきものを求めている魂の支えの20年という前向きな考え方で行かないと。それを探し当てたときに「我々はこうして探したんだよ」と。中国やインドに教えはしないが、つぶやくことがあるかもしれない。

 

呉建民氏(上海国際問題研究センター主席、国際展覧局名誉主席)

 110821 c gokenmin欧州や米国の債務危機などで、世界経済は不安定になってきているが、国際関係はいま、アジアの方に転換してきている。アメリカの債務は政府債務個人債務あわせて53兆米ドルに達している。これは本当に驚くべき数字で、米国のGDPの三倍。いま世界金融市場が不安的になり米国経済も良くない。米国では失業率も高く、欧州も良くない。いいところはアジアであり、とても高い経済成長のよい影響を保っている。このような状況は本日の世界のよい反映だ。中日関係を考える際には、世界の変化を見なければならない。その次に見なければならないのがアジア。アジアはどう発展してきたかというと、そこに根拠がある。

 戦後アジアの発展は、5つに分かれる。まず、戦後の日本。中国人、アジア人は、日本人に感謝しなければならない。輸出型経済発展モデルは日本人の発明で、世界のニーズにふさわしい経済発展モデルだった。その次は、アジアの四大経済地域、つまり、台湾、香港、シンガポール、韓国だ。これも日本に学んで発展してきた。その次は70年代の初期だが、アセアンのインドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンなど。これも日本を学んで発展してきた。その次は中国。この30年間は日本の輸出主導型経済に学んできた結果だ。5つめはインド。1991年にはインドも改革を行った。

 しかしこの輸出主導型経済はそろそろ末期を迎えることになった。中国の経済モデルも転換していくべきだが、しかしこの歴史を振り返ってみると、アジアの発展はやはりアジアの国々がお互いに助け合い、勉強しあってきた結果だ。もしアジアでなければ、今のような状況は実現しなかった。我々はアジアにあるからこそこのような発展を遂げてきたのだ。

 歴史は忘れてはいけない。生まれて一ヶ月目に私は重慶にいたが、日本人の爆弾で私も死ぬところだったのだ。しかし、中国の経済発展プロセスの中では日本に助けられた。89年の天安門事件の時は、中国の外交が一番冷え込んだ時期だった。そして、一番困難だったときに、中国は最初に日本人に助けられたのだ。アジアは今発展してきているが、やはりその歴史を振り替えなければならない。その中には、手を携えながらお互いに助けあい、発展してきた歴史がある。

 そして、中日関係についてだが、中日関係は今、十字路に立たされている。松本先生は重要な要職を務められているが、「日本は第三の開国をしなければならない」とおっしゃっている。一回目は明治維新、二回目は戦後の日本再建。一回目はアジアを脱退し、二回目は米国から脱退していく、そして、三回目はアジアに戻るということ。これは本当に素晴らしい考えだと思う。

 そしてこのような言葉があった。「日本経済貿易は米国に依存した経済関係は終わった。日本と中国の貿易量は米国を抜いた。中日関係を保つために重要な役割をはたすべきだ」と。このような観点はぜひ重要視しなければならないと思う。我々中国の将来もアジアにある。このように発展してきたので、アジアの中の中日関係は下手をすると、影響を受けるのは中日だけではなく、アジアだけでもなく、それは世界に影響を与える。中日関係が良ければアジアも良くなる。それにより世界経済も牽引できるので、米国にも欧州にもいいことだ。中日間は両国間のカテゴリーからは既に超越して世界に及んでいるのだ。米国にしても欧州にしても、欧米の状況を解決していくためには、2,3年ではなくかなり長い時間が掛かると思った。その中で中日がどうすればいいかといえば、基本的な考えを申し上げると、歴史問題や領土問題についてすれ違いがあるが、それ以上にもっと大きい物をみなければならない。それはまさに共同利益だ。

 まずは世界はすべてグリーン経済であり、これは我々世界全体が歩まなければならない道だ。低炭素社会、循環型経済とエコ社会。これらについて、日本はいい手本を見せてくれた。日本は環境にやさしい経済を素晴らしく作り上げており、日本の強みをまさに中国は勉強すべきところだ。このような中国と日本が協力すれば、必ず良い成果を残すといえよう。

 二点目、外貨準備高について、中日両国をあわせると、4.3兆米ドルになるが、このお金をほとんど米国資産になっている。先ほど申し上げたように、米国の債務は53兆米ドル。つまり切り下げは避けて通れない道であり、外貨準備高をどう使えばいいのかという検討をしなければならない。米ドルの切り下げをされてしまったら、やはり大変なのは中国だけではなくて、アジア全体の問題になる。一国一国で交渉すれば役立つが、アジアの共同利益につながるものであるために、これを一緒に協力して乗り越えていかなければならない。アジア全体の利益だが、我々の一番端緒は金融。全部米ドルなので、その資金をどう運用するのか、検討しなければならない。国民はその米ドルを持ってどこに投資すればいいかと。それは、中日共同で直面している課題。これをうまく解決できれば、必ずアジア経済に良い影響を与えるだろう。

 そして三点目、アジアの発展。今一番欠けているのは、インフラの整備。そのニーズは8000億米ドル。10年では8兆米ドルになる。しかしいま資金は足りない。中国人の貯蓄率は低いが、もしアジア債券があれば、国民も参加できるのであれば、利益の回収率は絶対高いと思う。というわけで、グリーン経済と金融通貨領域、日本円の国際化は数年間努力しているが、人民元国際化の努力もしている。そうすると中日が手を携えれば、一緒に努力すれば、協力したほうがすごい力になる。そのお金をもってインフラの整備に投資すれば、投資すれば価値の増加を図ることが出来る 21世紀に新しいアジアを迎えられると思う。

 そう考えると、中日関係は一番大事なものだと思う。大きな考え方として、友達同士と同じように、毎日それぞれの違いを言うのではなく、そうではなく、共通点を語り、どうすれば協力できるかを語ると、すごい力になる。中日関係のアジアにおける新しい時代を迎えると思う。

 

蓮舫氏(内閣総理大臣補佐官民主党参議院議員)

 110821 c renho来年は日中国交正常化から40年の節目の年。日中がさらにもう一歩前に進もうじゃないか。という年になるだろう。ただ、私は今年44歳だが、物心ついた頃から、必ず「日中」には日中「友好」という言葉がついてきた。これは日本の対外外交関係において極めて異例なことであって、「日米友好」や「日独友好」とは言わない。なんで日中だけ「友好」なんだろうか。つまり、友好な関係であれば、この「友好」という字は使われないのだ。しかし残念ながら、私たちの歴史の中で中国を侵略し、絶対起こしてはならないあのつらい侵略戦争があった。このことを、まだ一部、我々とは考えを逸にする人達がいる。時として閣僚や発言力を持った人が、中国の人民の気持ちを傷つけるような発言をポロッと言ってしまうことがある。こういうことがあるために、だから日中友好だと。本当にそれが、私たち両国間の関係改善につながっているのかどうかを、来年を境に考えていくべきだと思う。言葉だけではない、本当に中国の方が好き、中国の方が、日本人が信用できるんだという時代を早く持ってこないと、これから先のアジアの世界に向けて、日中関係がぐらついて本来の信頼関係がないままでは、私は新しい時代を呼び起こすことはできないし、次の世代に豊かなアジアというチャンスの場所を渡すこともできない。政治家として、ここはやらなければならないと考えている。

 私は、父が台湾出身で母が日本人だ。95年から97年まで、中国に留学していた。小さい頃から、中国大陸のことを当たり前のように聞いていた。そして不幸な歴史を直接父や母から聞いていた。先ほど松本先生から、残念ながら日本の教育、近現代史において、日中の戦争の結果、その詳細を、本当に我が国の子供たちが学んでいるか。残念ながら、受験という特殊な我が国の大勢の中でこの部分が自習という形になってしまう学校も少なくない。では中国では、日本に来たことがない、日本に友達がいない、それで日本人は悪い人だと、ではそれはどこから聞いたのか。改めて教育を見直したい。国家としての教育は、それは国家がやれば良いが、私がここで共有したいのは、家庭での教育だ。おじいちゃんおばあちゃんから、お父さんお母さんから、何を学んできているのか。我々日本人には、家庭の食卓でどんな言葉や会話があるのか。残念ながら今の子供たちを表す言葉は「孤食」。小学生低学年から、両親が共働きのために夜ご飯を一人で食べる。誰としゃべっているかと言えば、テレビ。そうすると、その子は何を学ぶのか。本当にこころの通った歴史を親から学んでいない。親がいたとしても、残念ながら我が国の食卓での会話で一番多いのは、野球。あるいは学校の宿題。ここでは経済関係、税制、あるいは外交関係は食卓に上ることはない。中国では違うと聞いている。子供の頃から政治の話も経済の話もちゃんとしている。私も父からそう習ってきた。そこで初めてほんとうの意味で、親が日本人をちゃんと知っている。本当の日本はこうなんだということをちゃんと伝えていく教育を、どうやったら日中でともに携えていくことが出来るのか。私は、法律で縛ることはできないが、一人ひとりが同じ思いを持って自分の家庭で率先していただければ、広く薄く、そして深く広まっていくと確信している。

 我々日中の外交関係は、5年前に大きなターニングポイントを迎えた。戦略的互恵関係。戦略的に、どうやって経済的友好関係、文化教育を共有できるか。あれから5年経ち、この5年間、戦略的互恵関係は進んでいるのに、例えば領土問題があると両国間の感情は最悪になる、良い面よりも悪い面が目立ってしまう。では、5年が経った今、戦略的互恵関係の概念の中で、何が間違っていて、何が進み、何を改善すれば前に行けるのか。それは領土問題でも、エネルギー環境問題でも、経済的相互協力関係もそうだろう。ぜひ、今回のフォーラムを皮切りに、日中の政治同士でも民間同士でもこの戦略的互恵関係を洗い出して、そしてさらに、両国間が密になり、その先にアジアの時代が来るために、現実的な分科会を設けて、前に進めていくことを改めて提案したい。

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カテゴリ: 政治対話

親カテゴリ: 2011年 第7回
カテゴリ: 発言録