. 東京-北京フォーラム 公式サイト - 2014年開催 第10回(後半)

特別分科会

2016年9月27日 (火曜日) 13:30-17:45  ⇒ 報告はこちら

全体テーマ:日中の人的移動は両国関係の新風となれるか
~生活、就労、観光、留学―民間で進む日中台交流の課題と展望
前半テーマ:両国民間で進む人的移動と交流の実態と課題
後半テーマ:日中の人的移動を両国関係の追い風にするための何が必要か

 ※プログラム・パネリストは変更になる場合がございますので、予めご了承ください。
司会

小倉和夫(国際交流基金顧問、元駐フランス・韓国大使)
福本容子(毎日新聞社論説委員)
王惠(北京市政府新聞弁公室元主任、ニューススポークマン)

パネリスト

 
【日本側】

小倉和夫(国際交流基金顧問、元駐フランス・韓国大使)
福本容子(毎日新聞社論説委員)
江川雅子(一橋大学教授)
加藤鮎子(衆議院議員)
杉村美紀(上智大学総合人間科学部教育学科教授)
日野正夫(東日本旅客鉄道株式会社常務取締役、鉄道事業本部副本部長) ※前半のみ
山下晃正(京都府副知事) ※前半のみ

【中国側】

王惠(北京市政府新聞弁公室元主任、ニューススポークマン)
劉江永 (清華大学当代国際関係研究院教授)
羅玉泉 (国家旅遊局駐日首席代表)
李茜(雲南省政府新聞弁公室主任、ニューススポークスマン)
李文麗 (海信日本公司(ハイセンスジャパン)総経理)
段跃中 (日本僑報出版社総編集長)
 

 「政治対話」の後半は、前半で議論されなかった論点についての意見交換の後、会場からの質問に回答する形式で進行されました。

新しい大国関係に対する疑問

 最初に松本健一氏は、「中国はアメリカと『新型大国関係』を築こうとしているが、このような動きは日本から見ると米中の2国で世界を納めていこうとする覇権主義的に見えるし、アジアの中でどういう立ち位置に立とうとしているのかも見えにくい」と問いかけました。

 逢沢氏も、「中国はまだ発展途上の国であるが、すでに大国である。国際ルールに率先して従う姿勢を見せれば、国際社会も中国の意図が分かるし、安心するのではないか」と述べた上で、新型大国関係という「G2」志向についても説明するべきとの認識を示しました。

 これに対して、趙啓正氏は、「中国はアメリカと組んで世界を制覇しようなどという野望はない」と述べた上で、「大国関係を築くべきパートナーはアメリカだけではなく、日本もだ。日中も互いに尊重し合う新しい大国関係を構築していくべきだし、そのチャンスは多い」と日本側に提案しました。

 最後に中国側司会の揚伯江氏から、どのようにして「未来志向」の日中関係を構築していくべきか、ということについて、両国のパネリストに問いかけがなされました。

 松本氏は「自分の外務大臣の経験から言うと、過去、国民に人気のあった外務大臣のやったことは、長い目で見ると国に対してプラスになっていない。世論に迎合して外交で得点を稼ごうとするようなことはやめるべきた。それに、政治が冷えているからといって経済や、地方同士の交流に影響を及ぼすべきでない」と意見を述べました。

 これに対し、呉建民氏は、「日中間には様々な認識の相違があるが、両国の共通利益はそのような相違をはるかに上回るものである」と述べ、「環境、公衆衛生など協力しやすい分野で協力を進め、実際に成果を挙げることによって、日中関係の好循環が生まれてくる」との認識を示しました。

 川口氏は、未来志向の日中関係のために必要なこととして、3つの条件を挙げました。まず、「両国の首脳間に改善に向けた積極的な意思があること」、次に、「双方がメリットを享受できるようなプロジェクトを進めるとともに、両国が国際的な公共財――例えば、海上での海賊行為の防止――のために協働して、世界全体のためにプラスになるような取り組みをすること」、最後に「長期的な視野に立ち、青少年交流など地道なところからコミュニケーションを密にしていくこと」の3点を提案し、パネリスト間のディスカッションは終了しました。

お互いに意見の違いがあることを認め合う

 続いて、会場からの質疑応答に移りました。
 まず、「学生など若者世代に対して、どのような役割を期待しているか」という中国人留学生からの質問に対して、各パネリストから利害関係がない世代のうちから交流することの重要性を指摘する発言が相次ぎました。また、逢沢氏は交流の際のポイントとして、「日本人は、戦争時の日本の過去についてしっかりとした知識がなければ中国と深い付き合いはできない。逆に、中国人も戦後の平和の歩みを知る必要がある」と述べました。

140928_seiji5.jpg

 日本の大学教員からの「尖閣問題について、中国側から国際司法裁判所に提訴することは考えられないのか」との質問に対して陳健氏は、「そもそも日本は領土問題の存在を認めていないので、提訴しようがない」とした上で、「田中角栄・周恩来会談の『次の世代の知恵に任せよう』という合意と、鄧小平の『棚上げ論』は、かつて日中の共通認識であった。その原点に立ち戻ることが大事であり、提訴はしない」と回答しました。

 自らも学生間の日中交流に携わっている日本人学生からの「中国と議論をしても一方通行のものになりがち。どのようなテーマで議論すれば水掛け論にならずに済むのか」という質問に対して松本剛明氏は、「日中が本当に共存していくために何が必要か、という視点から議論すべき。そこで意見の相違がることをお互い認め合うことが大切で、無理に意見を一致させようとする必要はない」と答えました。

 また、日本の学生からは、両国のメディアが対立点ばかりを煽るという問題に対して、「さまざまな意見があることを伝えるために、放送局を作りたいがどう思うか」という、いかにも学生らしい質問も出ました。これに対してパネラーからは、「大変なことだが、インターネットの時代なので、できないことではない」と、激励の言葉が聞かれました。

 中国から日本に来ている留学生からは、「私の回りのでは日本からの奨学金がもらえなくなっている例が増えている」という指摘があり、これに対して松本氏が「奨学金はむしろ増えているはず。そうだとすれば逢沢さんに調べてもらいましょう」と、語りかける一幕もありました。

中国人留学生からの「尖閣諸島周辺から危機的な状況が発生しないためにどのような方策が考えられるのか」という質問に対しては、逢沢氏は「つい先日から政府間で海上連絡メカニズムの運用開始に向けた協議が再開され、危機管理に向けた動きはある。ただ、日本も中国も政府の背後には加熱しやすい世論があるので、常にそれを意識しながら国益をすり合わせていくことが大切だ」と述べました。

140928_seiji4.jpg

 同じく中国人留学生からの、「日本のナショナリズムが高まっているというのは事実か」という質問に対して、川口氏は「問題なのは『排他的なナショナリズム』であり、これは高まっていない。むしろ、日本には『健全なナショナリズム』は必要だ」と述べました。

 日本人のメディア関係者からの「日中平和友好条約の原点に立ち戻って『紛争を平和的に解決する』というシンプルな合意が、なぜできないのか」との質問に対して、松本剛明氏は、「『紛争をしない』ということはこれまでも両国で何度も確認している。ただ、今回の日中共同世論調査結果では、両国民の中で日中軍事衝突を予測する見方が増えてきている。したがって、『紛争をしない』という原点については、これからも何度も確認する必要がある」と回答しました。

 その後も、白熱した質疑応答が続いた後、最後に、揚伯江氏がこの政治対話を終了するにあたっての所感を述べました。揚氏は「率直な意見交換によって多くの共通認識が得られた。中国も謙虚に日本から学んでいくため、日本もこれから中国を温かく見守ってほしい」と述べ、会場を交えながらの3時間を超える白熱した議論が終了しました。

⇒【政治対話・前半】日中両国に対する認識ギャップを率直に語り合う

「第10回 東京-北京フォーラム」の他の議論を見る

親カテゴリ: 2014年 第10回
カテゴリ: 記事