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今年は日中国交正常化40周年という状況の中ですが、他方で世界はギリシャのソブリンリスクの顕在化を始めとして非常に厳しい環境下にあります。米国もリーマンショック後、停滞した状況にあります。
アジアを見ると以前から日中関係が大事だと言われています。40年の歴史がありますが、現時点でどれだけ日中の経済関係が前進したかを考えてみると、前進している部分と必ずしもそうでない部分があると思います。 尖閣領土問題等の影響もあると思いますが、そればかりではなく経済関係が深まっている割には、相互信頼関係があまり確立されていないところが非常に大きな問題だと思います。この日中関係をどうすればよいかということで日中の関係者が忌憚のない意見交換をする、あるいは相互理解を深める努力が非常に重要であり、言論NPOの「東京-北京フォーラム」は8年目にあたる長い歴史を持っているので忌憚のない意見交換ができる、人間関係がすでに広く構築されているのでその場を活用することは非常に重要なことであると思います。特に、公的な政府関係がそれほど温かい関係にない環境を考えると、言論NPOの「東京-北京フォーラム」の重要性は益々高まっていると思います。
しかし、私は日中両国でいくら議論をしたとしても、中々そこからブレークスルーするのは難しいと思います。一方、世界に目を転じると、中国も日本も対世界のグローバルなマーケットにどのように対応していくのか、ということについて同じ悩みや課題があるし、場合によると共通の利益があると思います。ですから、日中の経済問題をそのレベルだけで詰めていくことも大事だけれども、広く世界に目を転じると日中関係の共通の利益も見えてくるので、そういう議論をした上で再び日中の理解を深めるという、そういう時期にあると思います。
中国が世界第2位のGDPとなり、日本が第3位となったことばかりが強調されていますが、日本の資本主義経済は大国であると同時に成熟した経済、中国は確かに大国ではありますけど、未成熟な社会主義的市場経済という状態です。具体的に言えば、経済規模は肩を並べているけれども1人当たりでみれば13分の1、中国の臨海部と内陸部の所得格差は非常に深刻なものがあるし、今後、高等教育を受けた人たちは益々、臨界部に集まってきていますので内陸部との格差が益々広がっていくのではないか。そして、その中で高齢化が起こる訳です。
ですから、中国は勃興してくる経済というか新興国という事なのですが、実はそうバラ色ではない内部の未成熟な部分について、中央政府は非常に危機感を持って、どうしたらいいかということで彼らは彼らなりに問題意識を強く持っていると思います。そういうことに対して日本は成熟する過程で経験した事を、中国に意見交換の過程で色々とお知らせすることができる。そこから、中国からしてみるとそれから何か学ぶものがあるのではないかということもあるし、両国が競争する関係あるいはWin-Winの関係とよく呼ばれるけれども、私は、もう少し複雑な日中関係になりつつあると思います。
今回の経済対話の基本が「世界」と「未来」というキーワードになっている訳ですが、世界に目を向け、将来に目を向ける事によって、日中関係の現在のちょっとした行き詰まり感を打開していく、そういう時期に今あるのではないかと強く思っています。
今年の「東京-北京フォーラム」はそういう意味で非常に重要なポジションにあると思っています。
言論NPOは2001年に設立、2005年6月1日から34番目の認定NPO法人として認定を受けています。(継続中) また言論NPOの活動が「非政治性・非宗教性」を満たすものであることを示すため、米国IRS(内国歳入庁)作成のガイドラインに基づいて作成した「ネガティブチェックリスト」による客観的評価を行なっています。評価結果の詳細はこちらから。