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増田寛也氏(株式会社野村総合研究所顧問、元総務大臣)
今回は、両国で災害にあった地域の方が来られていて、日本からも多くの方々が見えました。初めに日本側の発表者を紹介したいと思います。初めに全国知事会会長であり、京都府知事である山田啓二知事。続いて全国市長会会長である森民夫市長。日本観光庁長官である溝畑宏長官です。
袁岳氏(「Horizon Group」取締役会長兼総裁)
後半は観光を対象にする分科会ですが、都市環境も広い意味で観光にかかわります。北京では「798芸術区」、万里の長城、天安門以外に文化を背景とする観光地もあります。アメリカは中国を観光地とみるだけでなく中国がアメリカを観光地とみているということもあります。今回は新しい広い概念での観光について話をしようと思います。そしてもちろん、狭い意味の観光も含めて話したいと思います。さて、中国の来賓を紹介したいと思います。まず、全国政治協商会議委員であり、全国政治協商会議外事委員会委員であり、上海市人民政府華僑事務弁公室副主任である蔡建国先生、そして中国共産党丹東市委書記の戴玉林先生、北京市西城区対外文化交流協会秘書長の滕新華先生、中国医学科学院情報研究所研究員の胡飛躍先生です。
増田寛也氏
ではまず日本側から始めます。京都府知事の山田さんからお願いします。
山田啓二氏(全国知事会会長、京都府知事)
まず、今回の震災ではたくさんのご支援をいただいたことに御礼申し上げます。
さて、私は観光というのは国と国の間で双方向的なものだと思っています。そして互いのいいところを見せ合い、理解するということに目的があると思います。観光を基に両国は関係が続きます。日本にも中国の足跡は残っています。京都の町は古代中国の長安の面影がたくさんあり、歴史の流れが感じられます。お互いの相互理解の基礎がそこにあり、またこういうことによって、足跡がトレンドとして広がっています。その広がりにより、中国と日本の姉妹都市の締結にも繋がります。今、過去よりも3倍近い市町村が中国の市町村と姉妹都市の締結をしており、留学生もこの20年間で中国人の学生が3万人に達しました。若い世代の交流も増えて、観光客としてもたくさんの中国人が日本を訪れます。しかし、3月11日の震災を境に日本に来る観光客は激減してしまいました。観光ビジネスとしては、京都でも壊滅的な状況となり、団体旅行者を街で見かけることも少なくなりました。昨年、尖閣諸島問題、また不況の状況の中でも中国の観光客の数は増加していました。これは万博の影響が挙げられます。日本館では各都道府県がそれぞれを紹介するウィークを設け、馳せ参じました。日本館への来館数は記録も更新しました。中でも、着物を着て上海を歩くということが中国人にとても歓迎され、こういった形の交流もあるのだなと思いました。日本の復興のためには多くの中国人観光客に来てもらい、私たちの状況をぜひ見ていただきたいと思います。そして自分たちも工夫をもっとしたいと思います。今、放射性物質の問題で、牛肉の問題が挙がっていますが、今や日本ではどこの牛肉がどこで生産され、どこで売られたかがわかるシステムが導入されていますし、より正しい情報が伝えられると思うので、安心して来ていただきたいと思います。現在、いろいろなところでキャンペーンをしながら、中国人観光客に来ていただこうとしているところです。
関西では、関西広域連合を昨年誕生させ、中国の方が広範囲に日本に来ていただけるような体制をつくりました。この関西広域連合は韓国と同じGDPを持っています。観光復興に向けての取り組みを行っているところで、上海市、江蘇省、浙江省と協定を結びました。関西は本当に多くの観光資源を持っています。もちろん、それ以外の地域でも日本には自然や文化財もたくさんありますので、そこをアピールしたいと思います。私たちもがんばりますので、どうかこれからもぜひ日本に来てください。
袁岳氏
ありがとうございました。熱意をこめたスピーチでした。映画の影響などでもそうですが、日本に対する中国人の印象が変わったのではないかと思います。ぜひ山田さんに中国版twitterに参加してほしいです。
それでは、蔡建国さんお願いします。
蔡建国氏(全国政治協商会議委員、全国政治協商会議外事委員会委員、上海市人民政府華僑事務弁公室副主任)
今日のタイトルは観光を通じていかに交流を深めるか、そして文化理解です。中日間には、歴史問題、文化の交流が欠けていることは大きな問題です。今回は主に3つの内容を話そうと思っています。
まず、文化交流は大事だということです。今日、両国の交流は2000年を超えています。そして、漢字をお互い使用していることです。文字は文化をつなぐ大きな要素です。3番目には、民間の感情です。これは両国の発展の根本でもあります。促進という言葉が有りますが、人と書いて足を書きます。互いに歩み寄り、コミュニケーションをとることが大事ということです。中国は大陸の文化、日本は島の文化、地理的には近くても、心的に離れてしまっているので、もっと理解しなければいけないと思います。そこで6つの提案があります。
①観光を通じて交流を深めることです。中国にも観光資源があります。例を挙げると、私は以前、甘粛の敦煌に行きました。非常に深い歴史があり、日本の方も見かけました。こうした観光を通じて理解が深まると思うのです。観光は単なるビジネスだけでなく、人の交流であると思います。
②私は中国華僑に関するいろいろな仕事をしていますが、日本には70万人の華僑がおります。こういった人々に力を発揮してもらい、両国の理解を深めることができると思います。日本から中国に来る留学生はめったに中国人社会に入らないので、もっと中国人学生と交流をしてほしいと思います。
③言語理解についての支援です。日本で中国語を学ぶ人は多いですし、中国の若い人も日本語を勉強していますが、検定試験は制限があることもあるので、受けられない人もいるのです。ぜひこういった点を支援していきましょう。
④青年の交流を深めてほしいということです。いかにして中日文化交流に寄与する若者を育てるかということは大事なことです。
⑤教育協力です。中日でいかに教育協力をするかという提言があり、今までは大学だけでしたが、現在では中高も教育協力が増えています。
⑥民間の交流を深めるということです。いかにこれを深めるかは非常に大切な問題です。互いの本当の信頼を高めるのが大切ですし、文化交流を通じて両国民の感情悪化を改善することは非常に重要だと思います。
袁岳氏
補足しますと、今、若者の世代の文化交流を高めるということは本当に大事です。漫画にしても、中国の若い世代は日本から学んでいます。若い世代の文化交流に期待します。
増田寛也氏
ありがとうございました。世論調査で互いの意識が悪化している今こそ、交流を通じて改善していかなければならないですね。では続いて森市長です。
森民夫氏(全国市長会会長、長岡市長)
先ほどの前半に引き続き、関連のテーマで話をしたいと思います。長岡市は田中角栄の故郷であり、長岡市民は中国に対して親近感があります。2004年の中越地震で、四川でもあったように崖崩れで水没した住宅などがありました。そこで復興公営住宅というものを作ったのですが、すごく昔の日本のデザインで、これも一種の観光財ではないかと考えています。崖崩れによって集団移転の事例もあります。震災時に中国から四川を中心として政府関係者が中越に視察に来てくれました。このように中国の方が来てくれたことで、復興が進んだこともありました。私たちの地元では4mもの雪が積もることもあります。雪を初めて見る外国人の方は大いに喜び、復興にも繋がりました。このように復興を遂げると、みんな元気になろうということで、さまざまな活動もするわけです。震災の記憶を未来につなげようということで、地震の教訓、復興に至る過程を、IT技術を駆使して展示する施設がまもなくオープンします。メモリアルパークや体験できる震災ミュージアムなど記念施設を7つ作って見に来ていただき、今後に生かすと共に、震災を逆手にとって発展に生かしたいと思います。最後の宣伝として、長岡の花火大会についてです。これは本当に世界一と言ってもいいですし、日本でも有数の花火大会です。そして錦鯉、それと日本酒です。次に闘牛。雪だって立派な資源です。そして最後に田中角栄記念館です。長岡市にはこういったものがたくさんありますので、みなさんどうぞいらしてください。お待ちしております。
袁岳氏
次に戴先生です。
戴玉林氏(中国共産党丹東市委員会書記)
今回の会議に参加させていただき、誠にありがとうございます。丹東はとてもよいところで、冬暖かく、夏涼しいです。森林面積も広く空気もよく、年間220日よい天気です。この分科会の主題は観光ですが、この場を借りて私の考えを披露させていただきます。
今回の世論調査を見て、40年の民間交流に関わらず、このような結果が出ました。我々は頑張らなければならないと思います。明治時代から両国の差は広がっていきました。互いの違いはありますが、交流できると思います。中国も改革開放後、生活水準は上がり、旅行も増えてきましたが、文化に関しての理解はまだまだ少ないです。もし互いに理解できるとすれば、歴史の正しい認識を前提として理解ができるのです。近現代以来、両国間にはいろいろな出来事がありましたが、理解の共有ができなければ進歩していないということです。隣人が互いを恨んではお互いによくありません。人を重んずるという文化を中日両国は持っています。アジアの近代化において日本は先駆けしました。しかし日本には中国のことをもっと尊重してほしいです。中国はまだ日本に比べれば貧しいですが、交流は誤解を解くことが前提です。互いの誤解を解くことは可能です。アジア、世界の未来のために歴史の苦難に対応できるのです。
さて、私は今回、丹東のガイドとして丹東を紹介します。まず、料理です。美味しいものばかりです。また日清戦争の戦場だったこともあり、記念碑があります。当時は戦争で中国の船が沈められたこともあります。しかし我々はあえてこれらを忘れ、日本に丹東の食材を送っています。日本の車の部品工場も見学できます。当時の日本が架けた橋がまだ使われています。日本の海鮮料理を食べながら、丹東の風景を見学することもできます。こういうことこそが互いの恨みや誤解を無くすことができるのです。観光という交流を通じて、政治的な信頼も回復できると考えています。ありがとうございました。
増田寛也氏
私も丹東を数年前に訪問しました。現地では日本人が経済的にいろいろ活動しておりました。さて、日本の役人は官僚的と言われますが、溝畑さんは全てにおいて型破りの長官です。ぜひ話を聞いていただきたいと思います。
溝畑宏氏(観光庁長官)
こんにちは。東日本大震災ではいろいろな支援をいただき、本当にありがとうございました。元気、明るく、楽しく、という気持ちを伝えるべく、今日参りました。
私は、観光が日本をもう一度世界に開くための起爆剤になると考えています。外需を取り込み内需を活性化するためには、それが必要です。また経済だけでなく観光はいろいろな分野に影響が波及します。波及効果は非常に大きいものです。日本は今、少子化などの問題もありますが、観光というポテンシャルを利用し、ビジネス面だけでなく、いろいろな面に利益をもたらしてほしいと思います。地域がブランドを生み出し、それをビジネスとして利用し、そうしていくうちに自分の住んでいるところを好きになり、誇りを持つことに意味があると思います。観光というと何かを見るという概念が強いですが、交流のきっかけにもなるし、ある意味では自信に繋がるものでもあると思います。震災の復興に必要なのは自信と元気です。観光のベースは歴史と文化が作り上げたものです。日本には素晴らしいものがたくさんあります。季節の素晴らしさ、北から南からの素晴らしさが最高級にみなさんをもてなすことだろうと思います。また、観光庁だけで観光政策はできません。各省庁と連携しなければなりません。今後は政府、民間、自治体など、みな同じコンセンサスで観光を盛り上げる、そういう組織をつくってまいります。目標としては600万人の中国人の方に来てもらいたいと思っています。日本、中国、韓国の交流などもそうですが、観光という交流が大事です。震災によって、日本の安心、安全に関する信用が崩れた面もありました。中国の支援、何より温家宝首相の訪日などもありましたが、まだまだ安全面が浸透していないのか、観光客が戻ってきておりません。
放射線の問題ですが、食べ物なども影響が出てしまい大変申し訳ありませんでした。今、総力をあげて、みなさんに安全な食物を届けようと思っています。東北は特にそうですが、各地で復興していますし、予定通り伝統の祭りを開催することもできました。スポーツの面では、仙台でオールスターが開かれ、サッカーも予定通り開催されています。一部の地域は除きますが、ほとんどのところで前のような元気な姿を見せてきています。
今、沖縄でマルチビザが使用できるようになりました。観光客のみなさんが快適に旅行できるように、そして、日本の安全を伝えるため、留学生にも協力してもらおうと思っています。中国にはたくさんの支援を頂いたからこそ、その支援で元気になった日本を見ていただきたいと思います。ご自分の目で各地のいろいろないいところをぜひ見てください。
袁岳氏
ありがとうございました。では滕新華先生です。
滕新華氏(北京市西城区対外文化交流協会秘書長)
西城区を代表して参加させていただき光栄です。西城区は外国22カ所と友好提携をしています。東京の渋谷区や中野区とも交流しており、相互理解促進に力を入れてきました。私としては現場の立場から、民間交流をしてきましたが、いかに実現するかということが重要になってきていると思います。この数年、西城区の訪日活動は徐々に日本側の訪中の回数を超えてきました。2006年の下半期から5年間を見ますと文化交流活動は60回を超えました。見学、訪問などと合わせて半分の時間は観光を手配しました。民間訪日に関しては、私たちがそれに参加する子供に要求するのは、明るく、規則を守るということです。学歴は関係ありません。区政府としてある程度サポートします。そして訪日団には区がお金を出しています。このような交流が、両国の相互理解と信頼構築には響いてくると思います。昔に比べて理解と信頼は確実に深まっています。例えば自分の子供を訪日団として日本に送るということについて、子供たちの両親は全く心配していません。これが信頼の結果だと思います。中日関係が緊迫していたときでも、誰も行かないとは言いませんでした。そして計画通りにことは進み、双方の交流によって感動的な瞬間を見せました。訪日の募集をかける度に毎回、定員を越えます。個人的に一番好きなのは空港に子供たちを迎えに行くことです。中日にはまだギャップがあり、難しいこともありますが、西城区で開催された日本のイベントに参加する中国人は老若男女問わず、とても多いです。青少年が訪日するとき、修学旅行などもします。北京第4中学は2回修学旅行に行きました。その時の感想文も書かせました。そこで、日本側に提案ですが、もっと民間交流をし、自然や文化による地域交流に協力してほしいと思います。イベントなども開いてほしいと思います。厚かましい頼みではありますが、民間交流を行うことで、両国の関係を深めたいと思います。ありがとうございました。
胡飛躍氏(中国医学科学院情報研究所研究員、教授)
観光交流について、ひとつ提言したい。中国人は日本に行くのにビザが必要で、グループ、個人について条件をそろえないといけないが、ぜひこれを緩和していただきたい。観光はビジネスです。中日国交回復40周年記念日までにビザの撤廃が実現できれば素晴らしいことだと思います。
中国は高度成長期にあり、中国でも高齢化社会という課題に立ち向かっています。私は高齢化社会の研究をしてきましたが。日本の過去の高齢化データは現在の中国の状況と似ています。経済に力を入れてきましたが、社会保障に十分力を入れていないということもあります。中日両国の地域間交流のために言いたいことは、未来を開拓すること。相互理解、相互信頼を強化する必要があるということです。
最後に、日本の地方自治体と中国東方地域の地方政府が協力して共同開発区をつくることができればと思います。投資を通じて経済力のある中小企業に来ていただくことは可能ではないでしょうか。大地震の起きた地域には医療面の協力ができればと思います。中日友好協力も十分発展できると思います。時間の都合上、ここで終わりますが、中日双方で長期にわたり協力関係をつくることができればと思います。
中国人A(来場者)
旅行社の者ですが、今日この中日のフォーラムに参加できてうれしいです。
わが社から日本に行くお客さんが多かったのですが、震災によって格段に減ってしまいました。提案としては、中国人観光客のビザの緩和をしてほしいです。そして、環境や食事などにもっといい条件をつけてほしいこと、ホテルや観光地にもっと中国語の説明書きがほしいことを要望します。最後に、中国人を軽視するという感じではなく、もっと中日交流をアピールしてほしいのですが、いかがでしょうか。
溝畑宏氏
まずビザについては外務省が管轄していますので、我々としては関係省庁に働きかけをしていきたいと思います。そしてサービス面においてもできる限りのことをしますので、百聞は一見にしかずということで、ぜひ一度来てみてほしいと思います。
増田寛也氏
青少年交流について提案がありますか?
滕新華氏
この10年、日本からの修学旅行は減りました。姉妹都市にしてもルートはそれほど確立されていません。またこちらから行く場合の日本政府の受け入れ態勢をしっかりしていただきたいと思います。
袁岳氏
日本に行きたいという気持ちはありますが、震災のこともあり、ビザのこともあります。私は、日本の観光資源をもっとアピールしてほしいと思います。観光資源の宣伝にもっと力を入れてもらいたい。サービスをもっと整えれば持続可能な効果につながるのではないかと思います。
増田先生と2人で司会してきました。皆さんに感謝申し上げます。これを通じて中日友好につながればと思います。ありがとうございました。
カテゴリ: 地方対話
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