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中国側主催者挨拶: 朱霊(中国日報社総編集長、中国側理事会主席)
皆様こんにちは。3月の東日本大震災にあたっては、温首相がメッセージを送り、被災地で民衆を見舞いました。危機のときこそ友情であり、今では中日は完全発展の道に戻りつつあります。今回の世論調査では中日の相互感情に揺れがありまして、大きなネックになっていますが、両国が互いに重要であるというコンセンサスは変わっておらず、8割を超える人が互いを重要視しています。調査結果についても似たようなもので、背後にある理由に思いを巡らせています。中日は来年国交正常化40年を迎え、急速な発展の中で矛盾や相違、争いや猜疑心もありますが、中日関係が重要であることは変わりません。双方は共通の利益を抱え、経済も相互的に依存しています。基本的に相手の考えを尊重すべきであり、中日関係40年のプロセスが教えるように、和すればともに利益、争えばともに損なってしまいます。たとえば歴史問題においても双方の交流によってよりよくなっていくでしょう。昨年中国は世界第2位の経済大国になりました。この結果は中日の互恵関係を変えるものではありません。中国の発展は日本の利益にも合致し、両国人民のため、平和発展のため関係を前進させる方向を信じております。また、それがこのフォーラムの真髄でもあります。このフォーラムはもっとも影響力のある外交の舞台であり、中日関係の健全な発展のための土台作りに寄与します。皆様が率直に交流し意見を戦わせ、アジア地域の発展、両国人民の幸せのために確実な一歩を踏み出すと確信しています。
日本側主催者挨拶: 明石康(元国連事務次長、日本側実行委員長
みなさんこんにちは。尊敬する唐先生、王先生、趙先生、陳先生、丹羽大使、ご参加の日中両国の指導者の皆様、また今回の準備をしていただいた中国日報社、朱霊様、日本の言論NPO代表・工藤さんの功績に感謝いたします。2005年に発足したこのフォーラムは今年で7回目になります。私は、両国のもっとも重要な民間対話の場として、毎年力をつけて現在に至ったことを深く喜んでいます。民間対話は政府間の対話に替わるものではありませんが、政府対話を補足、補強する大きな役割を担っています。2005年には靖国参拝、国連安保理改革問題などで日中関係は非常に緊張しておりました。政府間の対話も途絶え、その再開のために民間対話は大きな力を発揮しました。昨年の9月には尖閣の不幸な対立がありました。このようなとき、鄧小平先生の知恵を思い出します。昨年のフォーラムでは、危機管理のメカニズム、透明性の増大について貴重な意見交換がありました。今年3月11日には日本で東日本大震災があり、その際、中国国民の多くの方々、胡主席、温首相をはじめ国境を越えた励ましや支援に日本人は感銘を受けています。中国においては、そのときの日本人の沈着な態度に称賛の念が表され、忘れることはできません。これは、日中両国がいまや人間としての連帯感を育てている証拠ではないでしょうか。また福島の不幸な事故についても、今振り返ると情報公開の不備、汚染水投下などについての近隣国配慮の欠如などは、あってはならない残念なことでした。中国はますます世界の重要な国として発展していますが、日中はアジアでともに責務を負う大国として、3.11や四川大地震のときのような災害協力のみならず、経済、環境、感染症防止、紛争防止など拡大する課題に手を携えて前向きに協力していく責務、チャレンジを負っています。このフォーラムが今後も引き続いて相互理解に努めるべき、世論調査では厳しい認識が示されましたが、それを克服する道は発見されると思います。なにより相互信頼を構築し深化させるべきであり、このフォーラムはやりがいのある仕事です。フォーラムが実り豊かな成果をもたらすことをお祈りし、挨拶に代えさせていただきます。
中国側政府代表挨拶: 王晨(国務院新聞弁公室主任)
尊敬する唐国務委員、明石理事長、ご参加の友人の皆様、私は、中国国務院を代表して皆様に感謝の意を表明し、フォーラムの成功をお祈り申し上げます。このフォーラムは7回目を迎え、その影響力もアップし民衆にも重視されています。これは7年の努力の結果であり、ともに皆さんが参加した結果です。中日関係の発展は両国人民の利益に合致し、アジアにもプラスの影響を与えます。国交正常化以来40年、中日関係は政府・人民共同の努力で大きな発展をとげました。ハイレベルの協力と対話のメカニズムを維持し、実務的な協力を求め、資源、エネルギーなど新しい分野の話し合いも強化して国際社会の発展に向けて努力していきましょう。また、コア利益への配慮、草の根レベルでの交流も重要です。国交正常化40年の新たなスタートラインにたったとき、さらに互恵関係推進のため努力していかねばならないのです。中国は国力が強化され地位が向上したとはいえ、依然世界一の発展途上国で、格差も解消されていません。今後の発展も資源や環境のようなネックに阻害されています。中国国民共通の裕福さというのはまだ遠いですが、中国はその発展において平和の道を選びます。中国の発展は日本にもチャンスであり、和すれば必ず利益します。実務的な協力はこれまでも大きな利益をあげましたが、中日は持ちつ持たれつの関係で協力が高まり、環境や循環都市建設などで協力が進められています。中日は早くも二国間関係を越えて世界に影響を与えていますが、チャンスをとらえ、アジアにおける地域協力を勝ち取っていきましょう。国民感情改善の促進に努めることも重要でしょう。今回、日本の大震災は各方面で両国に甚大な損害を与えました。中国としても他人事とは思えません。また、人的交流はかつてない繁栄をみせています。永きにわたる人的交流は、数も形も内容もレベルアップしてきました。青少年の交流で後継を育成することも求められます。中日関係が発展する中では問題も生じますが、これは如何ともし難いことです。歴史に鑑み、未来に目を向け、対話であって対抗でない形で解決すべきです。互いの合意にもとづき楽観的な気持ちで展望すれば、必ずや持続的・安定的に発展できます。「第7回北京‐東京フォーラム」の成功をお祈りします。
日本側政府代表挨拶: 丹羽宇一郎(在中国特命全権大使)
関係者の皆様の尽力で実現したこのフォーラムに、たくさんの方々が参加されていることをうれしく思います。両国から、何十年も日中関係にたずさわってきた政官財すべての分野の方々にご参加をいただきました。皆様、日中両国の課題に対し何をすべきか、ご自身のお考えをお持ちのことと思います。のちほど忌憚のないお話を聞かせていただきたいと思います。
さて、このような高いレベルのフォーラムの全体会議で一般論を話すのはどうかと思いますので、焦点を絞ってお話ししたいと思います。私は昨夜チベットから戻りました。チベットの人々とも会話をして、心に刻まれるいくつかのことがありました。私にとってチベットは初めての土地で、宗教の力、文化の差を実感し、いかにそれらを尊重すべきか、いかに重要かを実感しました。今後の日中関係について、中国の5つの自治区というのは非常に重要になると思います。いずれも少数民族が1億強ですが、面積では中国全土の3分の2を占めます。我々はこれまで漢民族中心のおつきあいをしてきて、それは正しいと思いますが、百聞は一見にしかずということで、現場訪問は非常に大事だと思います。中国では日本人に会ったこともない人も多いのです。物事には、言論の力と行動の力がありますが、今や行動の力が重要です。各々行動することが一人ひとりの日中関係への貢献です。
今年の日中世論調査では、感情が悪化こそすれ改善はされていませんでした。わたしの記憶でもそうですが、その都度感情の悪化を、靖国、尖閣、その他に理由をつけ納得してきたように思いますが、それでは役に立ちません。他人の家に入るときは他人の習慣に従うことが重要ということですが、日中関係は一触即発のさまざまなリスクに満ちています。Who knows what tomorrow bring? というふうにも言われますが、私は、毎朝テレビをつけて何も起きなかったなと確認する日々が続いております。日中は和すればともに利益し、争えばともに損なうということは重要です。胡主席、習副主席が言われるように、日中両国は住所変更できない隣国なのです。72年国交正常化以来、4つの宣言・声明がありましたが、その底に流れるのはやはり、和すれば利益するということです。それらを踏まえて協力し、継続的な関係発展のために努力してまいりました。経済は合理性ということが基本であり、政治や思想では動けません。そのためには国と国の信頼関係も重要です。信頼とはなんでしょうか。本当の信頼とは、嘘をつかず、裏切らず、相手の立場に立てることです。一時的でなく持続的に10年20年と続けて初めて信頼を得られるのです。胡主席、温首相もおっしゃるように経済協力はいよいよFTAや知財法協定という実行準備の段階にきていると痛感しています、大使館としてもできる限りの支援をさせていただきたいと思います。日中間によい関係が続くこと、フォーラムの議論が実り多いものになることを祈念して挨拶とさせていただきます。
中国側基調報告: 趙家騏(北京市人民対外友好協会会長)
尊敬する友人の皆様、おはようございます。今回、「第7回北京‐東京フォーラム」に各界の友人など、多くの方が参加していただきました。中日両国関係の再構築の機会であることも含め、お慶び申し上げます。日本では、今年の3月11日に東日本大震災の津波でたいへんな苦痛、打撃がありました。とても他人ごとではありません。北京市としても、政府やその他のチャネルを通じて、支援物資をお送りして被災地のために尽くしました。一刻も早く美しい町を復活させてほしいと願っております。
この「北京‐東京フォーラム」は両国にとって非常に有意義です。政治、経済、文化のモデルはなかなかつくることはできません。東京と北京両都市は1979年に友好都市となり、交流しながらそれを推進してきました。経済、文化、教育、人材育成など交流は各分野に行き渡りました。提携時間が長く、カバーしている範囲が広く、非常に良い交流の手本だと評価されました。
私は北京市で長く勤務してきました。そのなかで、一般の東京都民が両国の友情や友好を構築していることを感じました。より広い範囲で各地域での交流や協力を強化していきたいと思っています。メディアなどの皆様は、北京についてご自分なりの理解があるとは思いますが、私から経済の発展について報告します。
これまで北京市の経済社会は大いに発展してきましたが、さらにこれ以上ないというオリンピックがあり、経済社会の発展がよりステップアップしてきました。主な経済指標が最適化され、土台づくりとなりました。経済の発展で、社会建設、雇用創造、産業発展をしてきました。同時にインフラ整備も推進しました。適正発展、テクノロジーを推進し、北京を国際の都、人材の都、社会精神的な都にしていきたいと考えています。北京はバイタリティに満ちた都市で、ワールドシティになりつつあります。世界との協力の可能性を拡大してきました。このフォーラムによりさらに友情の架け橋となるでしょう。観光関係で歴史を満喫でき、特色ある生活を歩いたり人情を見たりし、モダンな北京ライフを送っていただければ、非常に楽しめると思います。ありがとうございました。
日本側基調報告: 五百旗頭真(防衛大学校長、東日本大震災復興構想会議議長)
こんにちは。尊敬する指導的な皆様方のご尽力を大変嬉しく思っています。私は東日本大震災の構想会議議長を務めました。はじめに、何よりも大震災にあたって、中国から多くのご支援がありました。震災後、救援隊に来て頂きました。その救援隊が行った大船渡市で、熱い感謝の気持ちを聞きました。それとともに、昨日も加藤先生のお話にあったように、中国の若い研修生を助けた佐藤さんの話は中国のメディアで熱く報道され、日本人への共感など立派なものがメディアに取り上げられました。心から感謝したいと思います。昨年、日中関係が危うくなったとすれば、今年は大震災の中で新たな関係を構築するときです。日本には「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉があります。1923年の関東大震災のときも、加藤友三郎が亡くなった直後、山本権兵衛が組閣工作中で誰も首相がいないという状況でした。阪神淡路大震災のときは、戦後長く自民党が続いてきましたが、1993年に細川政権が誕生し、自民党政権が崩れました。細川政権が社会党、さきがけとともに、連立政権を作っていたときに阪神淡路大震災が起きました。2年前に民主党の大勝利で民主党政権が誕生しましたが、参院選の惨敗で参議院に多数がおらず、ねじれ国会となり、分断政治となっています。戦後日本は官僚優位の政治が続いてきました。民主党政権には官僚を使わないということを是とする方針があるために、政策の立案や実施で弱さが出てきていました。それでこれまでの2つの大震災のときに劣らず、弱い政治が露呈しました。確かに政治は弱いですが、日本社会は決して弱くないことを今回の震災は示していると思います。むしろそのように正したいと思っています。自分を失わない日本人は世界のメディアで称賛されております。宮城県栗原市は震災への強靱性がありました。震度7で犠牲者なしは世界初です。日本には緊急地震速報のシステムがあります。地震が起きたときに地震を感じたら、地震を全国に知らせるというシステムです。私が岩手県に行っていたときに、みんなの携帯が一斉に鳴りました。「只今福島県沖の地震があり、まもなく地震がきます」。これは新幹線にもつながっています。225キロの新幹線は9秒前に知らされて、急ブレーキがかかりました。大きな地震が来るまである程度時間があり、すべての列車が脱線せずに安全に止まることができました。自衛隊も懸命な努力をし、救援やライフラインの復旧に努めました。阪神淡路大震災のとき自衛隊は初動が遅かったため改革を実施し、孤立している26,700人を支援しました。約2万人が自衛隊によって救助された方でした。大変見事だと思っています。佐藤さんのような方も多くいらっしゃいまして、助手職員が町役場のスピーカーからもまもなく大震災が起こることを広く呼びかけ、ボランティアも現地を支えました。
サプライチェーンについてですが、東北地方は農業だけではなく、自動車産業、電機産業も大きなウェイトがあります。でもその回復のスピードは非常に早いです。約90%も回復しました。福島はまだですが、それでも健在だと思います。政治も立派になって乗り越えてもらいたいと思っています。
政府の震災復興会議の要素は2つあります。1つは国民の共同の理念、志、希望を持つことです。日本社会はこうあるべきだという志を持つべきだと思います。官僚などにとどまらない、日本国民の心を描き出すこと、被災地を見捨てずに支え合う精神を持つことが重要だと思います。
もう1つは、復興構想はあくまでも国の政策なので妥当性、合理性、実施可能性が必要であることです。官僚の方々も自分たちの省庁の利益ではなく、どうすべきかを話し合いました。創造的復興。もうこれが起きたのは仕方がない、また同じように立て直すということを歴史としてやってきました。
阪神淡路大震災のときは家だけが問題でしたが、東北には農業、漁業を自分たちでやっている自営業者が多いわけです。ですから、雇用や産業も考えなければいけません。長期的な開かれた復興をすべきです。時代が向かう方向、高齢者が生きていける町を今からセットすべきです。原発の問題にしても、まずは安全性を優先する、そうした開かれた復興をしたい。被災地を日本全体で支え、それが20年下り坂だった日本自身の再生となるようにしたいと思います。善意と良心ある中国の方からの助けもありましたので、防災の国際協力を推進するために、日本各地にそのような拠点をつくりたいと思います。
復興構想会議の文書は中国版もありますので、ぜひご覧ください。ありがとうございました。
日本側基調講演: 蓮舫(内閣総理大臣補佐官、民主党衆議院議員)
尊敬する友人の皆様、こんにちは。
「継続は力である」。今日開かれたフォーラムは7回目となりますが、まさにこの言葉がぴったりではないでしょうか。この間、日中双方の感情が友好であり続けたわけではありません。このように、財界、メディア、そして各界の方々が本音で語り合う場は本当に重要だと思います。参加できたことを光栄に思います。
日本は、3.11の東日本大震災で多くの貴重なものを失いました。15,000人もの尊い命が失われました。地震から5ヶ月たったいまも5000人の行方不明者がいます。政府はその捜索と復興に全力で取り組んでいるところであります。4月に温家宝首相と菅首相が電話協議を行いました。この機会を活用して、温家宝首相が福島を訪れいただきました。未来への希望がゆらいでいる場所に、温首相が入ってくださいました。温かい言葉をかけてくださいました。改めて隣国の重要さ、大切さを教えられました。ありがとうございました。
現在、日本政府は復興に向けて最大限の努力をしています。とくに原発事故の一日も早い収束に向けて動いております。東北地方には、米をはじめとして農産物がたくさんあります。中国におかれても、一日も早く輸入規制を緩和していただいて取り扱っていただきますよう、よろしくお願いいたします。
かつて日中には政冷経熱という言葉がありましたが、日中双方の企業の努力により経済関係はますます発展してまいりました。いまや日本にとって中国は最大の貿易相手国です。今年は日本でハイレベルな経済対話があります。政熱系熱に向けて努力してまいりたいと思います。いまや1日平均1万人の日本人が中国を訪問していますので、中国を肌で感じている方も多いと思います。一方、昨年には170万人の中国人が日本を訪れてくれました。人的交流はどんどん進んでいます。文化、経済、政治についても、政府としても後押しをさせていただき、日中関係を進めてまいりたいと思います。
それではここで、日本国内閣官房長官・枝野幸男のメッセージを代読させていただきます。
「『第7回北京‐東京フォーラム』の開催に際し、心からお祝い申し上げます。このフォーラムが確実に参加者の輪を広げて知名度を高め、最も有効な対話の場となっていることを頼もしく思います。3月、東日本大震災が発生しましたが、震災直後より中国の皆様から物心両面のご支援をいただきましたこと、感謝申し上げます。首脳間で合意された戦略的互恵関係発展のため、このフォーラムが『アジアの未来と経済再構築に向けた日中協力』というテーマのもと、幅広い分野で具体的な対話を行い、両国の平和と繁栄に貢献できると確信しております。来年日中国交正常化40周年の節目となりますが、戦略的互恵関係をさらに深化させていく上で、本フォーラムが斬新かつ具体的なイデアとして成功することをお祈りいたします。」
中国側基調講演: 唐家璇(前国務委員、中国国際経済交流センター顧問)
尊敬する明石理事長、丹羽大使、王主任、朱霊編集長、ご列席の皆様こんにちは。「第7回北京‐東京フォーラム」にお招きいただきありがとうございます。古くからの同僚や友人のほか、初めてお会いする方もいらっしゃり、感慨ひとしおです。
このフォーラムの発足から7年が経ち、この間、中日両国はいくつもの波をかいくぐりましたが、常に誠意に基づく中日関係改善発展のために重要なチャネルとして知的支援を提供してきました。公共外交のプラットフォームの1つとなっております。今回のテーマは「アジアの未来と経済再構築に向けた中日協力」ということですが、国際地域の枠組みが激変し、中日両国とも変化する新しい情勢のもと、大変時宜にかなったフォーラムだと思います。中日両国の戦略的互恵関係を推進し、発展と安全に寄与していきたいと願っています。私は、半世紀にわたり中日関係の紆余曲折に携わった経験者として、両国関係に関する観察を踏まえて考えを述べてみたいと思います。
私は、いままで発言された方々がスピーチの中で触れられた重要な考えに全く同感です。中日は重要な二国間関係であると同時に、二国を超えて国際的地域的な影響が大きくなってきています。二国に軸足をおき、両国の発展をとらえながら、世界に目を向けグローバルな視座をもち、時代の流れにのって両国関係の発展に寄与することが不可欠です。
中日関係の発展のためには中国の発展を見極めることが重要です。今年は、中国共産党創立90周年ですが、中国の成功の鍵は、中国共産党が人民をリードして中国にあった発展の方向を見つけたことです。今年は新たな5カ年計画発表の年でもあり、中国がパラダイムシフトをするために重要な時期でもあります。わが国は現在、少なからぬ問題を抱えていますが、常に前進し、経済は引き続き安定させ成長を果たし、調和の取れた社会を目指していきます。これはもはや妨げられない歴史の流れとなっています。世界の動きのなかで、自国の情勢なども鑑み、わが国は断固として平和発展の道を歩むということです。いまや中国の発展は脅威ではなくチャンスをもたらすものです。これは国際社会のコンセンサスになっています。
先ほど五百旗頭先生からたいへん生き生きと震災後の再建についてご報告がありました。また復興構想についても拝聴することができました。地震と津波と放射線漏れの3重苦は日本に大きなインパクトを与えました。震災から5ヶ月たったいま、日本国内の復興活動は明らかに進展をみせ、通常通りの生活が戻ってきています。日本はこれまでに様々な危機に直面してきましたが、必ず復活してきました。今回も間違いなく復活するでしょう。
中日関係を発展させるためにはグリーンエコノミーの先行きをみることが重要です。国際金融危機で、世界経済の成長は減速し、エネルギーや水の安全性は低下しています。長期的な視点から低炭素社会の育成を重要な戦略と位置づける必要があり、グリーンエコノミーは世界的に注目されつつあります。それは持続可能な発展にも繋がります。日本でも循環経済を重要な柱としていますから、中日協力のポテンシャルは大きいのです。
これまで中日間協力はスムーズに進み、ASEAN+1は相次いで立ち上がり、中国と日本が推進している東アジアでの協力体制は重要なものになっています。中日両国は、東アジアFTAと経済的パートナーシップの構築に向けて共同で提案していますが、周辺各国に受け入れられました。シナジーの可能性は拡大し続けています。
もっとも、未来を展望すれば、両国関係にある無視できない問題も認識する必要があります。
まず、政治の相互信頼が不足していることです。日本の多くの有識者は、中日とアジアの発展がチャンスだと認識していますが、メディアは冷戦の発想を引き継いでおり、中国脅威論を協調する傾向があります。このような状況があると、中日の戦略的互恵関係を阻害するでしょう。
次に、両国民の相互認識について、相手国に対して好感度がないことです。このフォーラムの世論調査でも、今回は調査開始以来、最も悪い結果になったとのことです。理由はいろいろあるでしょうが、結局は政治の相互信頼の不足が社会へ投影しているのではないかと思います。
3つ目には、中日間には非常に敏感な問題があり、二国間関係の友好を阻害する脅威となりかねないということです。
しかし、そうこうしながらも、中日間の経済関係は、ますます発展してきました。
日本での首脳会議に出席したとき、温家宝首相は宮城と福岡の震災地域に入り、日本の首相と重要な合意ができました。中日関係は去年の事件の影から脱し、安定した関係を築けると思います。そのためには、以下の4点が重要です。
①政治経済における信頼関係の醸成。双方で協力するパートナーであり、相互の平和を推進すると謳っています。これが社会的コンセンサスとなるよう、実行に移していくべきです。
②経済面について新しい協力のパイロットモデルをつくること。昨年の二国間貿易は3,000億ドルを超えていますが、現在、息切れ感が出て減退していることが問題です。規模の拡大が難しくなれば、質的拡大を模索することです。中日両国は震災後再建に向けた協力を推し進めるべきだと思います。また、両国はグリーンおよびハイテク産業に投資をして、発展させるのがよいと思います。現在、国家クラスの重要プロジェクトとして中日生態系のパーク設立に向けて動いています。トヨタ・マツダなどが既に参加しており、さらなる優遇策を検討しています。双方は時を逃さず連携して動いていくべきです。
③人文交流をより掘り下げて推進すべきこと。中日でこれまで256組の友好都市関係が結ばれました。これは両国にとって貴重な財産であると思います。チャネルが多いことを活かし、各分野の人的交流の拡大を図っていくべきです。さらに、共通の文化的価値観を発揮し、心の琴線に触れる相互の認識を進めていくことが大事です。両国の民衆に積極的、客観的な情報を紹介して、自国民が相手国を理解することを目指すべきだと思います。
④センシティブな問題を適切に対処すること。中日両国間に矛盾や問題は避けられないと思います。双方は深刻な困難にぶつかったことがあります。歴史的経験が教えるところでは、センシティブな問題において、重要な職務を担っている政界の皆様は言動に注意を払うべきです。そして突発的自体に対処すべきメカニズムを準備すべきです。
日本の政局は注目されています。中国は中日関係を重視していますし、戦略的互恵関係を進めていきます。来年は中日国交回復40周年になりますが、双方が一連の行事を展開することで、さらなる展開を目指していくべきでしょう。ぜひその活動に加わっていただき、知恵と力を貸していただければと思います。
カテゴリ: 21日全体会議
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