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全体会議の後半は、全体テーマが「アジアの未来と経済再構築に向けた日中協力」ということもあり、「経済対話」の一部として行われましたが、熱心な発言が続き、予定時間を大幅に超えることとなりました
出席されたパネリストは、中国側が鄭新立氏(中国国際経済交流中心常務副理事長)、李勇氏(財政部副部長)、龍永図氏(ボアオ・アジア・フォーラム元秘書長)、日本側が長谷川閑史氏(経済同友会代表幹事、武田薬品工業株式会社代表取締役社長)、槍田松瑩氏(日本貿易会会長、三井物産株式会社取締役会長)、山口廣秀氏(日本銀行副総裁)の6人でした。司会は、中国側が芮成鋼氏(中国中央電視台〔CCTV〕アナウンサー)、日本側は小島明氏(日本経済研究センター研究顧問)が務めました。
まず、中国側司会の芮成鋼氏から現在の国際経済危機の背景として欧米経済の再度の落ち込み、米国国債の格下げ、日中の成長鈍化などが挙げられ、日中両国にも課題が突きつけられているとの指摘がありました。ではどうしたらそれを改善できるのか、持続的成長を続けていけるのか、これをテーマに話し合っていきたいとの課題が提起されました。
それを受けて、鄭新立氏は、日中の経済交流には現在、3つのチャンスが訪れているとして、①中国の国内市場は急激に拡大しているので、日本にとっては輸出拡大の好機である、②中国側に海外からの投資を受ける準備が整ってきたので、日本の部品工場を中国に一部移転するなど投資の可能性が拡大している、③中国の所得水準の向上にともない日本への旅行や留学が増加しているのでビザの規制緩和や留学生の受入支援をすることによって、さらに経済交流を進めることができる、と具体的な提案がありました。
また、日本側の司会者である小島氏は、日中両国の関係は、単なる二国間関係ではなく、アジアや世界のなかで重要な二国間関係であるとして、世界経済が不安定になっているいまだからこそ両国の協力が必要だと、日本側に発言を促しました。
日本側の最初の発言者である長谷川氏は、「今年は辛亥革命100周年記念の年だ」と前置きして、この100年間、とくに改革開放以降、中国は目覚しい発展をみせ、日中韓を中心とした東アジアがアジアのなかでも、世界のなかでも重要なエリアになってきていると指摘しました。
そして、世界のなかでもこれから人口が増えていく地域であるアフリカをどう支援していくのか、エネルギー、食料、水などの問題をどう解決するのか、それが高齢化先進国である日本や今後そうなるであろう中国の義務ではないかと述べ、このような世界の諸問題について戦略的互恵関係を発展させることによって共に協力し貢献していこうと呼びかけました。
そのためにも日中間でのFTA交渉やASEAN+6での東アジア自由貿易圏構想を進め、政治は冷静に、経済関係はホットにという「政冷経熱」で日中関係を進めていくべきだと提案しました。
中国側2人目の発言者である李勇氏は、現在、世界は短期的な金融危機と中長期的な成長可能な枠組みの再構築という2つの課題に直面しているとし、この解決には、世界第2位と第3位の経済大国であり、相互協力の土台づくりができている日中両国が前面に立つ必要があると発言しました。
そのためには、①日中経済には補完性があるので協力を進め双方の内需拡大を促進する、②東アジアには金融協力の枠組みができているので、ASEAN+3で地域の金融安定に寄与する、③日中両国はIMFなどの国際機関に積極的に参画し、世界的な経済情勢のなかで互いの役割を高めていくことが重要だとしました。
槍田松瑩氏は、中国の内需拡大については輸出あっての内需ではないか、インフレで個人消費が低迷しているなら、むしろ輸出増大が個人消費を押し上げるのではないかと指摘し、持続的な経済成長を進めていくには消費・輸出・投資のバランスが必要だとしました。
そして、日本の産業構造は中国に依存し、日中で国際分業体制ができているのだから、それを生かしながら貿易発展を促進するためにFTAが重要だとして、日中韓3国の官民が一体となって交渉を進展させていくことに期待感を表明しました。
一方、龍永図氏は「経済協力については、アジアは他地域より遅れている」とし、日中両国の更なる協力を促しました。
そのためには、日中が競争関係を解消してwin-win関係を構築すること、その関係改善のためには現在がいいチャンスであること、中国は日本に学んで中小企業を重視し熟練労働者を育成していく必要があること、そして最後に日中に米国を加えた三国間関係を良好にしていくことが重要だと述べました。
日本側の山口氏は、日本銀行副総裁の立場から、日中関係の進化について発言しました。
現在、世界経済についての不確実性が非常に高まっているなかで中国はインフレ圧力を抑制しつつ内需拡大を図り内外需のバランスを取る必要があり、日本では高齢化社会の進展、労働人口の減少などの問題に加えて、震災復興の問題もあり、それを日本の底上げにつなげていかなければならないと指摘しました。
そのためには、日中経済関係の更なる発展が必要だとし、近年では垂直統合分業ではなく水平分業の拡大がみられること、日本企業が中国のエコシティプロジェクトへ参加するなど新たな試みが始まっていることなどを挙げ、日中両国の分業体制の更なる高度化が期待されていると述べました。
一方、中長期的な展望についても協力していく必要があるとして、少子高齢化の問題、社会保障の問題、知的財産権保護の問題なども挙げ、様々なインフラ整備の必要性も指摘しました。
最後に中国の金融面について、①資本市場の整備、②資本市場と金融市場の頑健性、③物価安定による持続的な発展が重要だとして、日本はこれらの課題解決に協力し、アジア、ひいては世界の発展に大きく貢献したいと述べました。
その後、中国側司会の芮成鋼氏から山口氏へ人民元とドル安の問題について質問が出されましたが、時間の都合もあって十分な議論に至らず、午後の分科会へ持ち越すこととなりました。
カテゴリ: 21日全体会議
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