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明石康(財団法人国際文化会館理事長)
この「北京-東京フォーラム」というのは、7年前、2005年の中国と日本の関係が非常に険悪だった時に始まりました。民間の重要な対話のチャネルとして政府間の関係に代わるものではないのですが、それを補足する非常に大事な手段として現在まで伸びてきたと思います。7年前には、小泉首相(当時)の靖国神社参拝とか、安保理を巡る日中の対立など、そういうトゲトゲした関係にあった中で、言論NPOが主催したこの日中のフォーラムがきっかけになって、日中が再び対話と交流の関係に変えることができたわけです。そういう意味では、歴史的にも非常に大きな役割を果たしたし、また、現在でもそういう相互の理解と協力を広げることに、大きな役割を果たしてきたと思います。
日中には2000年の歴史があり、それは両国にとって豊かな歴史であったわけです。しかし、19世紀後半から20世紀前半にかけては、この対立が不幸にして戦争にまで至ったわけです。我々は、こういう関係をきちんと調整しないと、戦争のようなことにもなり得るということを忘れないで、真剣に取り組むべきだと思いますし、中国の側にもその気持ちがあるのではないかと思います。特に、今年3月の東日本大震災以来、中国を始めアジアの国々、その他世界中の国々がこぞって日本のことを思い、そういう連帯感の基に渾身の協力をしてくれた直後に行われる。日本と中国の関心には多少のズレはあるでしょうけれど、これを今の段階でどのようにしたら、もっと定着するようなものにできるか、ということについて、政治、経済、メディア、地方、外交・安全保障対話という難しい問題について、専門家、有識者を集めて日中間で議論をしようというのは、大変に大きな意義があると思っています。
ただ、構造的に、日中間には難しい問題を沢山抱えているので、直ぐに大きな合意とか協定ができるという状況にはないわけです。アジアの中で、互いに大きな国として隣り合わせにあるわけです。それに、政治体制も方や共産主義、もう一方は自由主義・市場経済ということを目指しています。更に、方や今や上昇気流に乗って、経済が益々よくなっている。一方、わが国はこの20年間低迷を続けている、という色々な問題がありますが、両国にその気があり、善意があり、意志がある以上、そういう難しい問題にも取り組む。また、それによって、少しでも合意の領域を広げ、深め、大きくしていく。これは難しいことですが、やりがいのある仕事だし、また、これをやらないと誤解や行き違いが大きくなって、事によると、1930年代のようなことになりかねない。そうならないためにも、全力を尽くす意義は十分にあるという風に思っています。
今年の7回目の「北京-東京フォーラム」は、交代でやってきているので、今年は北京で8月20日から行われることになります。日本からも蒼々たる人たちが行くことになっていますが、中国側もそれに匹敵する人たちが沢山くることになっていますし、お互いに大きなことを、大事なことを真剣に、また率直に語り合えたという風な気持ちになって、別れる事ができる会議になればいいなと思っていますので、是非とも関心を持って、見て頂き、また支援して頂ければありがたいと思います。
カテゴリ: 実行委員会
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