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【記事】 経済対話 後半

 

記事 経済対話 後半1

 

 再開後の後半部では参加者が一部入れ替わり、日本側パネリストとして、塙昭彦氏(株式会社セブン&アイ・フードシステムズ代表取締役社長)、田波耕治氏(株式会社三菱東京UFJ銀行顧問、前国際協力銀行総裁)が、中国側パネリストとして、夏占友氏(対外経済貿易大学国際経済研究院 副院長、教授)、迟福林氏(中国(海南)改革発展研究院院長)、袁岳氏(北京零点市場調査分析会社総裁)が壇上に上がった。基調報告を行ったのは佐々木伸彦氏(経済産業省通商政策局局長、前JETRO北京センター所長)と魏建国氏(中国国際経済交流センター秘書長、商務部副部長)、司会は福川伸次氏(財団法人機械産業記念事業財団会長)と周牧之氏(日本東京経済大学教授、経済学博士)が務めた。

 

 後半は、「日中の経済交流とビジネス提携の深化と拡大」というテーマで、ミクロ的な側面からのアプローチが主だった。

 佐々木伸彦氏の基調報告では、中国で事業を営む7,000社のアンケートから、現在、日本企業が中国で苦労している4点(1.透明性の欠如、2.内国民待遇なし、3.知財権に対する不安、4.中国独自の事業基準)が指摘された。また、佐々木氏は、外国企業の要望はいずれ中国企業自身の要望になると、中国当局に説明し、改善を働きかけた。

 魏建国氏の基調報告では、近年の日中関係の経済的な結びつきが強まる一方で、両国のコミュニケーション不足やアジア地域の経済牽引役としての自覚の欠如が指摘された。また、ミクロレベルの問題として、日本に対しては、仕事は細かいが意思決定のスピードが遅いこと、中国に対しては、日系企業から信頼感が得られていないことが述べられた。

 以上の基調報告を踏まえ、各パネリストが発言した。

 田波耕治氏は、今後のカギとして、内需の拡大と投資機会の拡大の2点を挙げた。最近の労働争議にみられる所得増は内需拡大につながるが、一方で中国の生産コストの優位性が失われることについて、注目していた。また、中国の資本取引の自由化については、96年の経常取引の自由化から10年以上を経た今、進むべき段階にあると主張した。

 迟福林氏は、今後の中国の発展の方向性として、消費主導型、都市化主導型となるであろうと述べた。また、現在、中国で散見される労使対立については、賃金体系形成の中では避けられないものだとの認識を示した。

 塙昭彦氏は、96年から10年ほどの北京滞在の経験から、日本と中国の違いについて、「日本は下向き、中国はひた向き」と述べ、中国の全国民が一体感を持ってひとつの方向に進んでいる印象を述べた。

 夏占友氏は、日中協力関係はwin-winの結果をもたらすと考え、そのためには、FTAの早期締結、観光産業における協力、金融分野における協力を主張した。

 袁岳氏は、中国の富裕層の購買動機について、高品質であれば値段は気にせず購入する傾向高品質であれば値段は気にせず購入する傾向や、Re-Designの必要性を紹介した。

 

 パネリストの発言が一巡した後、司会の福川伸次氏が5つのテーマ(1.投資拡大、2.中小企業の協力・交流、3.省エネ・環境分野のビジネス化、4.技術的・文化的イノベーションの促進、5.アジアの持続的発展への積極的な関わり)を定義し、パネリスト間でのディスカッションが行われた。

 特に1.の投資拡大では多くの意見が出された。まず、佐々木伸彦氏は、増加する中国の購買力に注目した外国勢を、中国が受け入れてビジネスをさせる環境を整えるかが問われていると述べた。一方、中国側司会の周牧之氏は、日本のFTAへの取り組みが遅いことを指摘した。これに対し、田波耕治氏は、日本がWTOを重視した結果FTAの取り組みに出遅れたこと、農業や政治の問題があることを挙げた。また、佐々木氏は、日本のFTA戦略がないわけではなく、ASEAN諸国と個別にFTAを既に発効していることを紹介した。

 最後に、日本側司会の福川伸次氏は、ミクロベース、企業ベースでみた日中間の重要点として、1.投資ルールの明確化、2.FTAの推進、3.イノベーションの向上、4.人材交流の活性化、5.政府と民間の協力・連携、の5点を挙げた。また、本日の議論を参考に、日中関係をより強固なものにし、アジアの発展を現実のものとしていきたいとう結論が導き出されたのではないか、として総括した。

 中国側司会の周牧之氏は、パネラーや聴衆に感謝の意を表し、後半部が終了した。

親カテゴリ: 2010年 第6回
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