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【記事】 メディア対話 後半

 

 記事 メディア対話 後半1

 メディア対話の後半部では「日中メディア間の交流を深め、両国民の相互理解と信頼を促進する」をテーマとして議論が交わされました。前半からは参加者が入れ替わり、パネリストとして、日本側からは会田弘継氏(共同通信社編集委員室長)、飯田政之氏(読売新聞東京本社文化部長)、山田孝男氏(毎日新聞政治部専門編集委員)、原田誠氏(日本放送協会国際放送局長)、中国側からは劉北憲氏(中国新聞社社長)、馬為公氏(中国国際放送局副総編集長)、劉浩遠氏(新華社東京支社副社長)、黎星氏(中国日報社総編集助手、主席記者)が出席し、司会は木村伊量氏(朝日新聞社西部本社代表)と喩国明氏(中国人民大学新聞学院副院長・教授)が務めました。   

 最初に、各パネリストが前半の議論を踏まえて意見を述べました。

記事 メディア対話 後半2

 まず会田氏が発言し、「日中のメディアは商業主義と新しいメディアの登場という二つの共通する課題に直面しているように思えるが、その課題への取り組みに関しては日中間に根本的な認識の違いがあるのでは」と述べました。

 劉北憲氏は、「メディアが日中関係の改善に果たす役割は重要だが、メディア報道に必要以上に過敏に反応したり、過大に評価すべきではない」と指摘しました。

 原田氏は、CCTV(中国中央電視台)が6つのチャンネルを設けて外国語で発信していることや、NHKの放送局に中国の地方メディアのスタッフがしばしば見学に来ることに触れた上で、「ここ2年ほど、中国メディアが国際放送の強化に力を入れているように思える」と述べました。

 馬氏は、「一部の中国の人々が日本に対する偏見をもっていることは事実だが、さほど深刻では無いと思う」と述べました。

 山田氏は前半での新しいメディアについての議論に着目し、「インターネットでは瞬時に大量の情報を発信できるが、他方で情報の内容が浅くなりがちである。だからこそ、その情報に分析・解析を加えることのできるプロのジャーナリスト集団が求められている。これは日中、ひいては世界のメディアに共通する普遍的な課題ではないか」と指摘しました。

 劉浩遠氏はメディアの責任について触れ、「人々に多くの情報を発信することはメディアの主要な役割だが、政府の行動を監督する責任も負っている」と語りました。

 飯田氏は、中国の若い世代が日本のドラマ・アニメ・書籍など多様な情報源に接していることに着目し、「将来的には中国の日本への理解が深まるのでは」と述べた上で、「日本人の方が中国人よりもより自国のメディアから中国の情報を入手する傾向がある。中国メディアは日本に向けて、より多くの中国関連情報を発信する姿勢が求められる」と発言しました。

 これに対し黎氏は、「確かに日本ではあまり中国のアニメ・書籍・ドラマは見られない。日本のメディアも、中国に対する理解を促進すべくより積極的に報道をしていくことが重要では」と語りました。

 この後、フロアを交えた活発な議論が行われました。

 日本のメディアでは中国に関する報道が少ないとの批判に対して、会田氏は「それは誤解であり、日本の外国報道はアメリカと中国で3分の2を占めている」と反論しました。

 また、司会の木村氏が毒餃子事件に関する中国メディアの扱いについて中国側に尋ねた際、馬氏は「毒餃子事件の結末については中国でも正確に報道された。だが、報道の選択という問題があり、日本の報道と同じようなウェイトで報道されることには無理がある」と発言しました。これに続いて黎氏は、「毒餃子事件、毒ミルク事件において日本の対応は過剰であったように思う」と述べました。また、フロアの中国人女性からは、「日中の発展度合には依然として大きな差があり、中国は多くの国内問題に直面している。日本のメディアは中国の問題を取り上げ批判するが、その際しばしば自国の発展の経験というものを忘れているのではないか」との指摘がなされました。

 日本の中国に関する報道が過剰で偏っているという中国側の批判に対しては、山田氏が、「報道が過熱するのはメディア間の視聴率競争、功名心、また食の安全のような日本人にとってセンシティブな話題であるからであって、メディアに反中バイアスがあるからというわけではないと思う」と発言しました。

 さらに木村氏から「インターネットなどの新たなメディアは中国にどのような影響を及ぼすと思うか」という問いかけが中国側に対してなされ、これに対して馬氏が、「新たなメディアと伝統的メディアとは明確に判別できないのではないか。これらのメディアは融合してあり続けると思う」と述べたところで定刻となり、議論は終了しました。

親カテゴリ: 2010年 第6回
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