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全体会議の終了後、30日午前11:00頃より、政治対話の前半が開催されました。テーマは「アジア、太平洋の未来と政治の責任」です。今年の政治対話は、パネリスト同士、あるいはパネリストと日本の学生を含む参加者との対話促進を重視した会議です。
出席者は、司会含め日中双方4名ずつ。日本側は司会が松本健一氏(評論家、麗澤大学経済学部教授)、パネリストとして加藤紘一氏(衆議院議員、日中友好協会会長)・枝野幸男氏(民主党幹事長、衆議院議員)・鈴木寛氏(文部科学副大臣、参議院議員)の3氏が参加されました。中国側の司会は劉江永氏(清華大学国際問題研究所副所長、教授)、パネリストは李肇星氏(全国人民代表大会外事委員会主任委員、前中国外交部長)・趙啓正氏(中国人民政治協商会議全国委員会外事委員会主任)・魏建国氏(中国国際経済交流センター秘書長)でした。
前半は、司会およびパネリストによる発言を中心に進行しました。
日本側からは、冒頭に司会の松本氏が、「日本は戦後、脱亜入欧で戦前は英仏独、戦後はアメリカをモデルとしてきたが、昨年の政権交代でアジア重視へと変化してきた」と述べました。その上で、鳩山前首相が構想した、30年後のアジア共同体形成に触れつつ、『アジアの未来』を、2025年をイメージして検討することを提案しました。2025年には世界のGNPに対して、中国が15%、インドが10%、日本が5%になることが予想され、その他の東アジアの国々を加えると40%にも達し、まさに「アジアの世紀」の到来が実現する。そのときアメリカは2020年には中国に抜かれて世界第2位となるとの予測を述べ、「このようにアジアの世紀がやってくることが予想される現在、日中はどういう構想を持ち、行動していくか」が問題だと課題提起しました。
これを受けて、日本側の加藤氏が、「日本の政局を見ると、各党の政治家がそのような状況をどれだけ理解し、どれほどの志を持って、行動しているかは簡単には言えない」と指摘しました。その原因として、政権交代・脱官僚・アメリカからの自立・国民感覚に則った新しい政治感覚の4点を掲げる民主党政権が、国民からの期待に十分に応えられない一方、自民党にも支持は集まらず、政治の姿が見えないことを挙げました。
そして、過度なグローバリゼーションで地方が疲弊、国民が抵抗しはじめており、こうした日本が抱える悩みは、いずれ中国やインドも直面すると述べました。最後に加藤氏は、「日中両国が悩みを打ちあけながら、率直に話し合うことで、保護主義にならないようリザベーションをしていくべき」で、松本氏が提起した意識を民主党と自民党が共有すれば、問題も整理されるだろうと指摘しました。
さらに加藤氏は、過度なグローバリゼーションで地方が疲弊、国民が抵抗しはじめている日本の現状に触れ、こうした日本が抱える悩みは、いずれ中国やインドも直面するだろうと指摘、「日中両国がこのような悩みを打ちあけながら、率直に話し合うことで、保護主義に陥らないよう努力していくべき」だと指摘しました。
これに対し、民主党幹事長の枝野氏は、「民主党の見解ではなく、極力自分の意見を述べたい」と前置きした上で、「産業革命以来この100~150年間、日本は近代化に遅れた形で急激に巻き込まれ、少子高齢化(いびつな人口構造)・環境破壊・地方の過疎化などの問題が急激に出てきたが、これは今後のアジア共通の課題になるだろう」と指摘しました。そして、ヨーロッパがEUをつくり、マーケットの共有で争いを防ごうとしてきたこと例に挙げ、資源の共有化、また分業化して近代化の負の課題を解決するとともに、アジア各国のそれぞれにみあった新しいアイデンティティーを探そうと提起しました。
日本側の最後には、文部科学副大臣の鈴木氏が、政府の実務に関わった経験からの現状認識として、「日中関係はPDCAのDOのサイクルに入ってきた。それは日中韓サミットで一気に加速してきた」とし、鳩山政権になってから(自民党政権時代からあった)日中間の年間4000人の青少年交流に加えて700人のメディア関係者と研究者の交流が開始されたこと、7月からは訪日中国人のビザ規制が緩和されたことを例としてあげ、「これまでは年単位で変化していた日中関係が、月単位で変化しているのを感じる」と述べました。それは、過去5年間にわたる、この東京‐北京フォーラムでの議論と日中共同の世論調査がベースとなり、具体的なアクションがはじまってきたとし、中国人観光ビザの緩和・キャンパスアジア構想などの実例を挙げました。最後に鈴木氏は、「これからは日中が一緒になってアジアのために何をするかが重要。我々もこの東京‐北京フォーラムを羅針盤として参考にしたい」と発言を締め括りました。
中国側では、まず司会の劉江永氏がパネリストの簡単な紹介をし、李肇星氏に発言を求めました。
李肇星氏(全国人民代表大会外事委員会主任委員)は「中国は世界最大の発展途上国」と指摘し、フォーラム直前に終了した全人代に出席していたことも踏まえ、中国の基本的状況を説明したいと述べました。李氏は2010年のGDPが世界第3位の4.9兆ドル、農業生産量は世界第1位となり、外貨準備高も上昇、これで、まずは中国国内の食糧問題を解決したと総括。その一方、現在の中国の課題として、①経済成長は人件費の安さを中心とした組み立て工業に依存していること、②工業・農業ともに生産性が低くエネルギーなどの無駄な消費が多いこと、③コア技術、有名ブランドがなく製品の付加価値が低いことなどを指摘しました。そして、都市化の進行と都市・農村の所得格差、教育問題など未解決の問題があり、1人あたりのGDPはまだ日本の1/11であることを示して、日本や世界と協力して人民の幸せに貢献したいと述べました。
これを受け趙啓正氏は、「グローバリゼーションが進むなか、地域の統合も進んでいるが、地域の統合は、他の地域に対しては保護主義的な面もある」と述べました。そして、EUを参考にするのは良いが、それだけではアジアの存在価値がなくなるとし、「アジアの夢」はアジア人が設計すべきと提起しました。発言の末尾で、趙氏は、「『アジアの夢』をどう設計するかを日中間で考えよう。本フォーラムの今後のテーマにしてはどうか」と提案しました。
中国側の最後には、中国国際経済交流センター秘書長の魏氏が、今回のフォーラムのテーマは、日中だけでなく世界の目を惹くと指摘し、ASEANフォーラムでも、輸出依存によるアジアの発展を維持するかがテーマになったことに触れました。さらに魏氏は、「貿易による発展をこのまま続けて良いのか問われており、中国は発展の方式を転換し、都市化を進めつつ消費―投資一体型の市場に変えていき、発展の持続性を保っていく」と述べました。そして中日が経済協力をしていくには、大企業だけではなく中小企業同士の協力の促進、日本が先行しているグリーンニューディールなどが重要だと指摘しました。
その後は質疑応答となり、会場からの「菅首相となり、日本では中日関係が調整局面にあるのではないか?」との質問に、枝野氏が「選挙の後始末があり、対外的な発信は遅れているが、基本的な考え方は変わっていない」と応じ、鈴木氏は「むしろ具体的な行動段階に入っている」と付け加えました。対話前半は、「後半での積極的な対話を期待したい」との松本氏の言葉で終了しました。
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