. 言論NPO主催「東京-北京フォーラム」公式サイト - 第5回 北京-東京フォーラム 全体会議(後半・政治対話)報告

11月2日 全体会議(後半・政治対話)報告

 11月2日、中国大連市で開催中の「第5回 北京-東京フォーラムin大連」は2日目を迎え、午前中の全体会議では「政治対話」が開催されました。
これは、午後に大連理工大学で行われる政治分科会に先だって行われたもので、日本側からは元防衛庁長官の中谷元氏(衆議院議員)のほか、民主党国際局長の藤田幸久氏(参議院議員、民主党国際局長)、同じく民主党の笹木竜三氏(衆議院議員)が出席し、また中国側からは趙啓正氏(全国政治協商会議外事委員会主任)、陳昊蘇氏(中国人民対外友好協会会長)、劉洪才氏(中共中央対外連絡部副部長)が出席しました。司会は松本健一氏(評論家、麗澤大学教授)と劉江永氏(精華大学国際問題研究所教授)が務めました。

1102zentai.seiji1 冒頭、日本側司会の松本氏は、「本フォーラムの立ち上げ直後は日中関係における困難の克服が中心的話題だったが、近年はアジアの中で日中関係をどのように考えるべきかが論点になっている」と述べ、「政治の相互信頼、戦略的協力の強化」をテーマにこの議論を進めていくことを確認しました。また、日本の鳩山首相が説く「東アジア共同体」にも触れ、「政治が率先してこうしたメッセージを発することには意味がある」と評価しました。

 まず、全国政治協商会議外事委員会主任の趙啓正氏が発言しました。趙氏は松本氏の言葉を受け、「かつては両国間の問題や不満についての議論だったが、近年になってアジア、さらには世界的問題まで議論するようになった」として、本フォーラムの発展を評価しました。趙氏はその後、昨今の経済危機についての議論を展開し、「グローバル化の中、一国だけで問題を解決することは難しい」、「危機を克服することは、逆にチャンスでもある」と述べました。その上で趙氏は、経済危機の中での中日関係の在り方につき、「第1に、両国は台頭しつつある保護主義の潮流を防いでいかねばならない。第2に、アジアにおける金融面の協力を深めていくべきである。第3に、アジアの経済構造の変化を促進していくこと。第4に、気候変動という大きな問題に挑戦すること」と提案しました。

 続いて、元防衛庁長官の中谷元氏、「日中関係は、世界の問題でもある」と、両国のグローバルな位置づけについて確認しました。そしてアジア共同体の実現について、「共通の理念、そしてロードマップが必要」であり、「両国のエキスパートを、国際機関などで活躍させていくことが重要だ」と述べました。最後に、「東アジア共同体、と言っているだけでは前には進まない、双方が役割を担って実行していく必要がある」と締めくくりました。

 次に、中国人民対外友好協会会長の陳昊蘇氏が発言しました。陳氏はまず、「政府・民間両部門の共同努力の結果、本フォーラムは大きな成果を収めている」「日中関係は現在、良好なチャンスに恵まれている」と語りました。アジアの統合に関しては、「ヨーロッパよりも苦しい道程にはなるだろう。しかしアジアの中でも日中が協力すれば可能だ」という見方を示しました。そして両国の信頼に必要な事柄を「自信」「確信」「恒心(変わらない心)」という言葉で表現しました。

 さらに藤田幸久氏は発言の中で、東アジア共同体に関連して、第二次大戦後のドイツとフランスの和解を例として引きました。それを踏まえて、「経済的及び人的な交流を進化させ、戦争がお互いの利益にならないような関係をつくること、そのために違った国同士がお互いを受け入れることが重要だ」と述べました。また、民主党の政権交代にも触れ、「政治のリーダーシップで生まれた公共財を、アジアにも生かしていきたい」と、政治家としての意気込みを語りました。

 次に、中国共産党対外連絡部副部長の劉洪才氏の発言に移りました。劉氏は日本の政権交代に触れ、「政権交代が生じても、中日関係まで政権交代することのないようにして頂きたい」と、安定的な日中関係への確認を求めました。そして、両国の戦略的互恵関係を強め、経済協力を深めていく必要性を強調しました。最後に、両国間の民間交流について、「若者同士の理解を促進すること、メディア理解の窓口となること、そして政党も交流していくことが重要だ」として述べました。

1102zentai.seiji.panelists 最後に発言した笹木竜三氏は、今後の経済社会のあり方につき「人間第一の経済」という理念を示しました。その上で、「東アジアで、人間第一の経済を築いていく。そこで問題となるのは、環境、エネルギー、食料になるだろう」と述べました。そして、「人間のための経済、共生のための経済という東アジア発の新しい価値観のために、日中で一緒に歩んでいけたらいいと思っている」と語り、発言を終えました。

  各氏の発言を踏まえて中国側司会の劉江永氏は、「政治、経済、文化という三つの車輪、その他多くの車輪によって、日中友好の列車がより友好的に走
っていくようにすること、これが本フォーラムの使命だ」と述べ、議論を締めくくりました。

 午後には5つのテーマに分かれた分科会が開かれます。この全体会議での議論は、大連理工大学での分科会「政治対話」に場所を移し、大学生との対話というかたちで引き続き行われる予定です。

カテゴリ: 2009年 第5回