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「東京―北京フォーラム」は今年で4回目の開催となります。3年前、日中関係は最も深刻な時期でした。経済関係では強い関係を持ちながら、政治や 国民レベルになると感情的な反発が高まっている。 中国では北京など主要都市で反日デモが広がり、政府間の外交も途切れた状況でした。
この光景を実際に見て、私たちは、両国民に広く開かれた、民間主導の強い議論の舞台が両国には必要だと考えました。表面的に友好を取り繕ったり、儀礼的な関係ではなく、お互いを尊重し本音で議論できる関係、たとえ喧嘩になっても何でも言い合える関係。それこそがこれからの両国関係やアジアの未来を切り開くことになると思えたからです。
こうした提案に日本と中国の実に多くの友人に協力していただきました。そして、「東京‐北京フォーラム」は2005年、両国民にとって特別な時期でもある8月に、しかも反日デモの余韻が残る北京で立ち上がったのです。
その後、フォーラムは北京、東京と回を重ね、わずか3年で大きく成長を遂げました。
歴史認識問題やメディア報道を巡る対立などの国民間の相互認識に関わる対話から、環境、経済、安全保障など両国の政策課題への議論まで幅を広げ、ハイレベルの民間対話として議論の内容も両国民に広く伝わるようになりました。そして、06年8月の第2回目となる東京でのフォーラムは、その2ヶ月後の10月の首脳会談再開に向けて歴史的な役割に果たすことになったのです。
政府関係は両国首脳の相互訪問に見られるように劇的に改善しました。しかし、本当の改善はまだこれからだと私たちは思っています。このフォーラムに合わせ て毎年実施している世論調査でも、日本人と中国人のお互いに対する理解や認識にはまだ大きなギャップが存在しています。こうした状況を解決することはそう 簡単ではありません。が、それを乗り越えるためにも民間対話の質と幅を大きく広げる必要があります。
第4回フォーラムはこの一年間に両国民の間で表面化した様々な問題に対する相互理解に正面から取り組むと同時に、両国だけではなく、アジアの課題となっている食料、境、安全保障、災害協力、マクロ経済運営で本気の議論を行うつもりです。ご期待ください。
工藤泰志 認定NPO法人言論NPO代表
1958 年生まれ。横浜市立大学大学院経済学修士修了後、東洋経済新報社入社。「金融ビジネス」編集長を経て、99年4月から2001年4月まで「論争 東洋経済」編集長を務める。同年11月「言論NPO」を立ち上げ、多彩な言論状況を作り出している。同名の雑誌も創刊。主著に『土地神話の行方』。
言論NPOは2001年に設立、2005年6月1日から34番目の認定NPO法人として認定を受けています。(継続中) また言論NPOの活動が「非政治性・非宗教性」を満たすものであることを示すため、米国IRS(内国歳入庁)作成のガイドラインに基づいて作成した「ネガティブチェックリスト」による客観的評価を行なっています。評価結果の詳細はこちらから。