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山口廣秀
日興リサーチセンター株式会社理事長、前日本銀行副総裁
日中関係を語る時によく言われるのが、「日本と中国は一衣帯水の隣国」ということである。その隣国関係にある国同士が、現在は世界第2と第3の経済大国である。従って両国が、それぞれの立場でそれぞれの経済について考えていくことはもちろん、両国の経済関係について考えていくことが、世界の経済にとって非常に意味があることだと思う。そして、両国がウインウインの関係を築いていくこと、またその重要性をお互いに認識することがまずは必要であろう。
私自身、これまでパネリストとして東京-北京フォーラムに参加してきたし、ここ2年ほどは副実行委員会長として、このフォーラムの企画・運営にも参画している。その経験から、これまでの東京-北京フォーラムの役割について考えてみたい。
常々感じるのは、フォーラムに参加するパネリストたちの思いが非常に熱いということだ。私自身もフォーラムに参加をしながら、他の参加者たちの熱意、すなわち、両国関係を温かいものにしたいという思いを常に感じ続けてきた。この熱意そのものが、日中関係において非常に意義がある。
ただし10年間の過程を振り返ってみると、やはり政治的にも外交的にも、さまざまな困難があったのはまぎれもない事実である。しかしそうした困難の中、東京-北京フォーラムは毎年の開催を決して休止せず、継続的に行ってきた。現在の実績を見る限り、このフォーラムは「継続は力なり」をまさに具現していると言えよう。特に私が参画している経済対話では、お互いが抱えているマクロ的な問題、あるいはミクロ的な問題に対して、率直に意見交換を展開してきた。こうした意見交換を続けていくことは、今後の日本経済、中国経済にとって、極めて意味のあることだと思っている。
一方、民間外交ということは、中国にとってはなかなか理解が難しい面もあるようだ。しかし10年継続したことにより、ようやくこの民間外交というコンセプトが理解されつつあるように思われる。今後、ますます民間外交を活発化させるためにも、関係者の努力が重要である。私も、民間外交のプラットフォームである東京-北京フォーラムの位置づけを、今後も大切にしていきたいと思っている。これから迎える新しい10年に向け、日中関係が必ずしも盤石とは言えない現状だけに、今後一層の努力が必要であろう。政治対話、外交・安保対話、メディア対話、経済対話といった、分科会で討論されるあらゆる分野において、しっかりとした議論を展開しながら、東京-北京フォーラム発の情報発信を明確に行い、両国の実際の立ち位置に対して積極的に影響を与えていくことを目指し、新しい10年を進めていくべきだと思っている。
言論NPOは2001年に設立、2005年6月1日から34番目の認定NPO法人として認定を受けています。(継続中) また言論NPOの活動が「非政治性・非宗教性」を満たすものであることを示すため、米国IRS(内国歳入庁)作成のガイドラインに基づいて作成した「ネガティブチェックリスト」による客観的評価を行なっています。評価結果の詳細はこちらから。