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「政治対話」の後半では、主に会場からの質問に回答する形式で進行されました。
まず、「日本に歴史修正主義的な動きがあることについてどう考えるか」という質問に対して、松本氏は「日本はあの戦争を『太平洋戦争』と呼んでいるため、日本では中国と戦争をしたということを忘れがちになるのではないか」と指摘し、「アジア解放を理念として掲げていたが、実態は侵略だったということを、若い人たちにしっかりと教えていかなければならない」と語りました。
「日本の政治家の靖国神社参拝によって中国人の感情が傷つけられている」ことへの見解を問う質問では、例年、靖国神社に参拝している逢沢氏は、「戦没者に向き合うことで、戦争を忘れず、二度と戦争を起こさないという決意を新たにするために参拝している」と回答。加藤氏は、「靖国神社は反中国的なものではなく、性質としてはむしろ反米」と説明した上で、「日本人も自分たちの先人にいかにして頭を垂れるのか、あの戦争をどう考えるのか、ということについては、いろいろと迷っている最中なので、靖国に対する『答え』が出るのにはまだ時間がかかる」と述べ、中国側に「猶予」を求めました。
また、楊氏は「来日したケリー米国務長官が千鳥ヶ淵で献花したことは、靖国神社参拝問題における日本に対する一定のメッセージになっていくのではないか」という見方を示しました。
「日本社会の右傾化は一部の傾向に過ぎないのか、それとも普遍的なものになっているのか」という質問では、王氏は、安倍首相の歴史認識に関する一連の発言や改憲への動き、安全保障政策における中国封じ込めの動向を踏まえて、「日本が右寄りの方向性に傾きつつある」と指摘しました。
それに対して趙氏は「何が右で何が左なのか、その概念は曖昧である」と安易なレッテル張りに対しては注意を促すとともに、「少なくとも国民レベルでは右傾化していないのではないか」という見解を示しました。
一方、加藤氏は、辛亥革命を成し遂げた孫文を支援したのは日本の右翼だった、ということを紹介し、「かつては右翼勢力の方が中国と親和的であった」と述べました。その上で、「現在の日本の右翼は中国を敵視しているが、なぜこのような逆転現象が起きたのか、その経緯を勉強してみると日中関係の歴史を良く理解できる」と参加者に対して「宿題」を出しました。
「日中両国は大国として、東アジア地域の秩序を積極的に構築するべきではないのか」という問いかけに対して逢沢氏は同意し、「韓国も含めた東アジア全体が一致結束すれば、世界における様々な課題解決に向けた動きをリードすることができる」と、その意義を語りました。
また、中国人の参加者から「日本の報道は反中国を煽るような偏った報道なのではないか」という質問が出されたところ、日本人参加者から「あたかも日中開戦前夜のような報道を繰り返している中国の報道こそ偏向しているのではないか」と反論がされるなど、参加者同士で「対話」がなされる一幕もありました。これに対し、王氏は「日本に対する中国メディアの報道は客観的で公平でない面もある」との認識を示しました。
最後に、日本側を代表して加藤氏が、中国側を代表して趙氏がこの政治対話を終了するにあたっての所感を述べました。ここでは、両氏ともに会場に多くの若い参加者がいたことに触れて、「これから何世代にもわたってじっくりと日中関係を再構築すべき」という点で認識が一致。約3時間に及んだ議論が締めくくられました。
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