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「東アジアの平和・発展と日中両国の責任 ―日中平和友好条約の意義を再確認する」、をメインテーマに、「第9回 東京-北京フォーラム」の全体会議が26日、北京で開催されました。
まず、双方の主催者を代表して、中国側から趙啓正氏(中国人民大学新聞学院院長)が、尖閣諸島問題によって日中関係が大きな困難に直面している点に言及し、現在の日中関係はかつての「政冷経熱」ではなく「政冷経冷」の状態であると指摘。その上で、このフォーラムは「すでに中日間における最高水準の公共外交のプラットフォームとなった」と話し、こうした困難な時期にこそ、フォーラム本来の役割を果たさなければならず、膝を突き合わせた議論で互いの誤解を解消し、実りある成果を得たいと述べました。
日本側からは同フォーラム実行委員長の明石康氏(国際文化会館理事長、元国連事務次長)が今回のフォーラムについて、「外交や国境の問題に関して、行き詰まった交渉をよい方向に転換するためのアイデアや構想を生み出すことこそ、トラック2ないしトラック1.5の対話に期待されている役割である」と、その重要性を指摘。また、両国における排他的ナショナリズムの蔓延が、両国関係にとって最も危険なことと述べ、それを食い止めるためにも両国間の民間対話が重要であると強調しました。さらに、日中平和友好条約に謳われた「不戦の誓い」をより不可逆的にするため、危機管理システムの構築に両国が緊急に力を合わせるべきだ、と主張しました。
続いて、両国政府を代表して、蔡名照氏(国務院新聞弁公室主任)と、木寺昌人氏(駐中国大使)が挨拶。
蔡氏は、2005年に開始された本フォーラムについて、「公共外交の成功事例であり、困難な時期にこそ役割を果たさなければならない」と大きな期待感を示しました。そして今後の日中関係の改善に必要なこととして、①歴史を直視して鑑とし、相手国との意見の食い違いは協議を通じて解決、②相互利益の拡大、③民間交流の強化、④両国メディアの交流と協力の強化、の4点を指摘しました。最後に、「このフォーラムにおいて積極的な議論を重ねることによって、中日関係にとってよい提案をすることが重要である。実り多い議論を期待する」と述べました。
これに対し木寺氏は、1972年の国交正常化後の両国関係について、両国間の貿易総額が同年の約11億ドルから2012年には約3,336億ドルと300倍以上に拡大したことなど、具体的数値を引いて振り返り、その関係強化、発展を強調。さらなる協力の重要性を指摘し、現在の悪化した日中関係を脱するために、特に両国間の青少年交流を日本として重視し、国民レベルの相互理解を深めていきたいと述べました。最後に、「外交にはマジックやミラクルはない。これからも地道に日中関係の改善に尽力したい」と決意を述べ、同フォーラムが今後の両国関係をさらに発展させることへ強い期待感を表明しました。
続く基調講演では、中日友好協会会長の唐家セン氏(元国務委員、中国国際経済交流センター顧問)が、かつて鄧小平氏(当時、第一副首相)の訪日に同行した際の経験に触れながら、日中両国の21世紀の東アジアおよび世界における重要性を改めて確認し、戦後の日中両国における「4つの政治文書(1972年日中共同宣言など)」を「(両国間の)貴重な政治的財産である」と高く評価。そして、尖閣諸島に関し「釣魚島は本来、中国の領土」と従来の主張を強く述べ、「日本は中国を脅威と考えているのか、それともパートナーと考えているのか。東アジアを重視するのか、それとも域外の大国との協力を重視するのか」と、日本の対米関係および安倍政権の外交政策に対して強い調子で牽制しました。
一方、日本側代表として基調講演した加藤紘一氏(日中友好協会会長)は、日中両国の経済的発展の差がもたらすお互いの誤解に触れ、双方が相互に話し合って解決していくべきと、長年、両国関係発展に努めてきた経験から提案しました。また、戦後の日本の急速な経済発展が日本の文化と伝統を破壊したと語り、「中国は一人当たりGDP(国内総生産)まで世界第二位を目指すべきではない。中国の文化を破壊するだろう」と、別の発展の道を目指すべきだと示唆しました。さらに、宮崎アニメに代表される日本の文化が中国の青少年にも大きな人気があることを指摘し、もし宮崎駿氏の訪中が実現し、あるいは日本の人気歌手が北京で公演すれば、「きっと1万人の中国の青年が集まるだろう。その時我々は、私たちは日中間の政治的な問題を小さく感じることでしょう。両国の若者がともに抱いている、良い感情的な共通点を強めるために、今後も青少年の交流強化に努力していきたい」と決意を述べ、全体会議の前半は終了しました。
26日全体会議の後半では、松本健一氏(麗澤大学教授)と呉寄南(上海国際問題研究院学術委員会副主任)による司会の下、「東アジアの平和・発展と日中両国の責任―日中平和友好条約の意義を再確認する―」と題したパネルディスカッションが行われました。
日本側からは、數土文夫氏(JFEホールディングス元代表取締役社長)、逢沢一郎氏(衆議院議院運営委員長)、中谷元氏(自民党副幹事長)、宮本雄二氏(元駐中国特命全権大使)の各氏が、中国側からは呂祖善氏(全国人民代表大会財政経済委員会副主任委員)、徐敦信氏(元外交部副部長、元駐日本国大使)、蘆樹民氏(中国人民外交学会常務副会長)の各氏が参加し、様々な視点から日中平和友好条約の今日的な意義について活発な議論が展開されました。
まず、日本側司会の松本氏が、日中平和友好条約第1条に示されている「紛争の平和的解決や武力行使、威嚇の否定」、そして、第2条に示されている「覇権主義の否定」という2つの原則を確認しながら対話をしていくことを呼びかけ、議論がスタートしました。
日本側最初の基調報告に臨んだ數土氏は、まず日中平和友好条約について、「今後の両国の経済の発展を考える上で、今がまさにこの条約の今日的な意味を考えるタイミングになっている」と述べ、この「東京-北京フォーラム」による対話の意義を強調しました。
続いて、1972年の日中国交正常化当時の日本の田中角栄首相と中国の周恩来首相という両国の首脳同士が、「論語」、「新唐書」など中国の古典への理解を基礎とした信頼関係を築いていたことを紹介し、「その精神こそが戦後の日中関係を考える原点となるものであり、我々はそこに帰るべきだ」と語りました。
最後に、戦後に行われた数々の経済協力をはじめとする日本と中国の共存共栄の歩みを振り返り、「今こそ、その原点に立ち返り、新たな共存共栄の道を見つけ出すときを迎えている」と述べました。
中国側最初の基調報告に臨んだ呂祖善氏は、自身の専門である経済の観点から、各国が経済発展をしたからこそ、平和と繁栄が築かれてきたこれまでの東アジアの歴史について言及し、将来においても、中国と日本が経済協力を進めていくことが、「東アジアの健全な発展と平和維持のために不可欠である」と述べました。
さらに、日中FTAなどの経済分野だけでなく、気候変動、環境、防災、高齢化への対応など両国が協力可能な分野が数多くあることを指摘し、「両国の有識者が手を携えてこの困難な局面を打開していくべきだ」と呼びかけました。
続いて、日本側から中谷氏は、まず、安倍首相が打ち出している「積極的平和主義」の概念について説明した上で、「東アジア地域においてこそ、この積極的平和主義に基づいた外交を展開すべきだ」と述べました。その積極的平和主義を機能させるための条件として、「中国や韓国に対して、歴史認識や外交姿勢について丁寧に説明すること」と、「アベノミクスを成功させ、国家基盤を強化すること」を挙げました。
さらに、尖閣諸島問題に関して、「海洋秩序において、力による現状変更をすべきではなく、法による解決を進めるべき」と述べると同時に、「互いに一方的な主張を繰り返すのではなく、相互理解を醸成するような議論をしよう」と中国側に呼びかけました。
徐敦信氏は、35年前の日中平和友好条約の交渉に関与した経験を踏まえて、この条約の歴史的な意義と現代的意義を強調。「条約は国家間の最高文書であり、両国はこの条約によりどころを持つので、条約で示された原則や精神を遵守すべきだ」と述べました。そして、条約について議論することは、「先人たちの過去の業績を偲ぶだけではなく、将来への針路を定めるためにも必要不可欠である」と述べました。
同時に、歴史認識問題や尖閣問題の進展なくして、日中関係は前進できないことにも言及し、「まず事実を認識すること」を日本側に呼びかけました。
逢沢氏は、「歴史を学ぶことは、戦後生まれの世代においてこそ必要」と述べ、日本人はこの100年間のアジアで何が起こっていたのか。日本は何をしてきたのか」という事実に真摯に向き合うべきだと語りました。同時に、「中国も1945年以降の日本の平和国家としての歩みをしっかりと見て欲しい」と要望しました。
また、尖閣諸島問題については、日本固有の領土であり、領土問題は存在しない、という日本政府の見解を紹介しつつも、「現実には議論になっているので、政治家はこれに向き合うべきだ」と述べ、「この尖閣問題が日中関係全体に影響しないように知恵を出していきたい」と抱負を語りました。
蘆樹民氏は、人民外交の専門家としての視点から、今年の日中共同世論調査で、「相手国に対する印象」が両国ともに過去最悪の水準になった一方で、「日中関係は重要である」と考えている人も両国に7割以上存在していることに言及し、「素晴らしい世論の基盤はあるので、中日関係改善の糸口はある」と将来についての展望を示しました。同時に、「歴史を直視し、領土問題の存在を認めることが関係改善のための基盤である」と日本側に注文しました。
最後に発言した宮本氏は、「世界経済の中心は東アジアであり、その中核となるのが日本と中国である」と述べ、「日中関係はアジアのみならず世界にとっても重要であり、両国は世界の発展のために重大な責任を負っている」と語りました。
続いて、経済や安全保障など様々な利益を総合したものが「国益」なのであり、尖閣のように一つの問題が総合的な国益より重要になることはないし、この問題のみを理由として日中全体の関係を途絶するべきではない」と指摘。
最後に、東アジアでは「力ではなく、正義や公平など理念に基づいて課題に向き合うことを重視すべき」と述べ、「日中両国は、その中核となって東アジアから世界をリードするような秩序のモデルを構築していくべきだ」と主張しました。
これで、26日午前の議論は終了しました。午後からは、政治、経済、メディア、安全保障の4つのテーマに分かれた分科会が開催されます。議論の詳細は各分科会の報告記事をご覧ください。
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