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「第8回東京‐北京フォーラム」全体会議の後半には、日中双方から3名ずつが参加してのパネルディスカッションが開かれました。
日本側からは、細野豪志氏(環境大臣、衆議院議員)、長谷川閑史氏(経済同友会代表幹事)、林芳正氏(自民党政務調査会長代理、参議院議員)が、また中国側からは趙啓正氏(全国政治協商会議外事委員会主任)、呂祖善氏(全人代財政経済委員会副主任委員)、魏建国氏(中国国際経済交流センター副理事長兼秘書長)が参加し、宮本雄二氏(前駐中国大使)と王一鳴氏(国家発展改革委員会マクロ経済研究院常務副院長)が司会を務めました。
最初に発言した細野環境大臣は、自身の担当する環境やエネルギー政策に関連して、「日中は環境面やエネルギーの課題についての『共同体』と捉えることができる。これは両国で協力していくべき重要なテーマである」と述べたのち、原子力エネルギーや中国の環境問題、さらには地球温暖化問題について、「世界に方向性を示していくことが重要であり、ひとつひとつの課題に対して着実に結果を出していくことが、これからの日中関係において求められている」と指摘しました。
続いて発言した趙啓正氏は、中国と米国で行われた世論調査を引き合いに出しつつ日中関係と中米関係を経済や国民感情といった面から比較したのち、自身が原子力物理学を専攻した経験から、「原子力の平和的利用に関する日中間の協力のポテンシャルは非常に高い」と述べ、原子力の安全性に関する日中協力や、エネルギー分野における情報交換に期待を示しました。
長谷川氏は、世界の地域別人口予測といった数値を示しながら、中長期的な将来においては「食糧・エネルギー・環境問題・水不足・などの様々な問題が深刻化していく。その中では、ある程度の解決策を提供できる技術先進国としての日本と中国が、手を差し伸べる義務がある。日中がお互いを助け、補完し合い、これらの課題を解決していく必要がある」と述べました。そしてTPPやFTAといった経済連携の枠組みについても、可能なものから実現し、包括的なアジア経済圏を実現していくべきであると主張しました。
続いて中国側より呂祖善氏が発言しました。呂氏は自身がかつて省長を務めた浙江省と日本とのつながりの強さを様々な例を引きつつ説明した上で、日中間の地方と民間の連携について「大局、長期的かつ戦略的な視野を持つことが大切である」と指摘し、そのために、「地方と民間の交流を日中関係の交流全体の過程の一部に位置づけ重視する」「より遠大な目標を立て、それに向かって友好関係を構築していく」「地方と民間の交流における文化・人的交流の拡大」「青少年交流の重視」という4つの視点を提案しました。
林氏は、日中友好議連の事務局長としての体験をもとに、日中関係が悪化した際には両国の指導者の間の信頼関係が重要である旨指摘するとともに、今後の日中関係について、「戦略的互恵関係の次はどのような関係を目指すのか、互いに感情的にぶつかりあうのではない、大国間の『大人の関係』を考えていくべきではないか」と問題提起しました。そして、日中両国間に複数のパイプがあり、アジア諸国から見ても、「日中がアジア太平洋をリードしていくと安心してみていられる関係となること」が重要であると指摘しました。
魏建国氏は、今回の世論調査の結果に対して、「現在の日中関係がきわめて困難な時期にあるとは思わない」と指摘した上で、その根拠として、日中経済関係や相互の人的往来が再びそうか傾向にあることを様々な数値をあげつつ説明しました。そして、「日中双方の相互信頼と理解の深化は現在の急務であり、今後の日中間の協力についてこのフォーラムも知恵を出さねばならない」と述べ、「民間による中日双方の戦略的産業に関するタスクフォースの設立」「日中FTAの締結に向けた具体的な工程表の作成と提示」「中継型から市場投資型への対中投資の戦略的転換」の3点を提案し、これらによって「未来へ向けた中日の斬新な協力の局面が実現できる」と主張しました。
そして最後に、日本側司会を務めた宮本氏からパネリストに対し、「世界と未来に向けた新しい日中関係」という今回のフォーラムのテーマにふさわしく、様々な具体的提案を行った日中双方のパネリストに対する感謝が示され、全体会議は閉幕しました。
午後には、政治、経済、メディア、安全保障、地方の5つのテーマに分かれた分科会が開催されます。議論の詳細は各分科会の報告記事をご覧ください。
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