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2日、「第8回東京-北京フォーラム」がホテル・オークラ東京で開幕しました。2日の午前には日中双方のパネリスト全員が参加する全体会議が開催され、前半部分として日中双方からの主催者挨拶、政府挨拶、基調講演が行われました。
まず日本側より、日本側副実行委員長の武藤敏郎氏(株式会社大和総研理事長、前日本銀行副総裁)が主催者挨拶を行いました。この中で武藤氏は、世論調査の結果を踏まえ「日中双方の国民の相互理解が順調に深まっているとはいえず、むしろ後退していると懸念される」としつつも、両国国民の8割が「日中関係は重要である」と回答している事実にも触れ、「日中関係の重要性の十分に認識しながらも、相互理解が深まらないという現実を直視し、何をすべきか考えるのがこのフォーラムの使命である」と指摘しました。
続いて中国側より、朱霊氏(中国日報総編集長)が主催者挨拶を行いました。朱霊氏は今年が日中国交正常化40周年の節目の年であることから、「本フォーラムは40年の歩みを振り返り、今日の問題に向き合い、未来の発展を展望し、相互の交流を強化するという重要な意義を有する」と述べました。そして「日中間の友好の基礎は民間にあり、両国民の心の交流にある」と指摘し、「本フォーラムが民間の友好交流を強め、国民感情の悪化を食い止め、相互理解と信頼を増やす上で有効な会議としたい」と結びました。
続いて、日本政府を代表して玄葉光一郎外務大臣が挨拶を行いました。玄葉大臣も世論調査の結果と国交正常化に言及し、「中国の発展は日本にとってチャンスであるが、地域・国際社会全体にとってのチャンスでもある。現在、国際社会の平和と安定のために、双方が責任ある振る舞いをどれだけできるかが問われている」と訴えました。その上で、双方のパネリストに対して、特に両国の報道及びネット世論、教育、文化などについて議論してほしいと呼びかけました。そして、「個別の問題が全体に影響を与えないよう、強靭な関係を築かねばならない。名実ともに戦略的互恵の関係が深化するための、このフォーラムが契機となってほしい」と呼びかけ、挨拶を締めくくりました。
中国政府からは程永華駐日大使が挨拶しました。程氏は国交正常化以来の歴史と今回の世論調査の結果を踏まえ、「日中関係は(国交正常化から)すでに40年が経過したが、依然として問題に直面しており、これを、力を尽くして解決せねばならない」と述べました。その上でパネリストに対し、「いかにして両国の政治と安全保障の相互信頼を増進するか」「いかにして両国の国民感情を引き上げるか」「いかにしてより広範な視野で日中間の協力を広げていくか」という3点を重点的に議論してほしいと提案しました。
続いて、福田康夫氏(元内閣総理大臣)、明石康氏(公益財団法人国際文化会館理事長、元国連事務次長)、曾培炎氏(元国務院副総理)、王晨氏(国務院新聞弁公室主任)の4名が基調講演を行いました。
日本側からは、まず福田氏が講演しました。福田氏は、国交正常化とともに、日中関係のもうひとつの原点として、1978年の日中平和友好条約締結時の「日中関係にとって、平和友好以外の選択肢はあり得ない」という考え方をあげ、日中両国は「平和的で、友好的な、協力しあう関係を、後の世代のために築かなければならない」と強調しました。そして、日中関係においては「『小異』が『大同』を振り回すことはあってはならず、そのためには大衆迎合に陥ることなく、安定して良好な日中関係の維持、発展に向けての強い政治的意志とリーダーシップをもって事に当たる」ことが重要であると指摘しました。
次いで中国側より、曾培炎氏が講演を行いました。同氏は「相互信頼と互恵が中日関係の大きな基本的な要素であり、この基本的な相互信頼があったからこそ絶えず深化してきた」と述べ、「この二つがバランスよく発展すれば中日関係はうまくいくが、さもなければ様々な要因に発展を阻害されてしまう」と指摘しました。そして、日中韓のFTA交渉を早めると同時に、日中FTAを含む二国間の経済協力も様々な分野で強化していくべきであると強調するとともに、「両国関係の発展のためには民間によるセカンド・トラックの交流が重要である。両国の関係者はそれぞれの卓見を生かし、戦略的互恵関係の発展に貢献してほしい」と呼びかけました。
明石氏は、日中間に問題が発生するのは不可避であると指摘した上で、「常に問題を冷静に見つめ、長期的な相互利益の観点から実際的な解決策を探る」努力を惜しんではならないと述べました。そして、現在両国は、「現実に存在する課題に一喜一憂するのではなく、長期的に共生し、協力し、栄える道を探りあい、多層的なネットワークを地道に創っていくことによって揺るぎない相互信頼を構築すること」と、「早急に危機管理と事態冷却の強固なメカニズムを構築すること」という二つの課題に直面していると指摘しました。
王晨氏は、「本フォーラムはすでに日中両国が公共外交を行うための重要なプラットフォームとなっている」と指摘した上で、現在の日中関係を様々な側面から分析しました。そして孔子の言葉を引用しながら、「将来の日中関係は『不惑』の智者の境地を必要としている」と述べ、ハイレベル交流、経済、文化といった様々な分野における日中両国の協力の可能性を列挙し、日中「戦略的互恵関係」のさらなる発展を呼びかけました。
休憩を挟んで行われる後半部分では、日中双方の参加者によるパネルディスカッションが行われます。
「第8回東京‐北京フォーラム」全体会議の後半には、日中双方から3名ずつが参加してのパネルディスカッションが開かれました。
日本側からは、細野豪志氏(環境大臣、衆議院議員)、長谷川閑史氏(経済同友会代表幹事)、林芳正氏(自民党政務調査会長代理、参議院議員)が、また中国側からは趙啓正氏(全国政治協商会議外事委員会主任)、呂祖善氏(全人代財政経済委員会副主任委員)、魏建国氏(中国国際経済交流センター副理事長兼秘書長)が参加し、宮本雄二氏(前駐中国大使)と王一鳴氏(国家発展改革委員会マクロ経済研究院常務副院長)が司会を務めました。
最初に発言した細野環境大臣は、自身の担当する環境やエネルギー政策に関連して、「日中は環境面やエネルギーの課題についての『共同体』と捉えることができる。これは両国で協力していくべき重要なテーマである」と述べたのち、原子力エネルギーや中国の環境問題、さらには地球温暖化問題について、「世界に方向性を示していくことが重要であり、ひとつひとつの課題に対して着実に結果を出していくことが、これからの日中関係において求められている」と指摘しました。
続いて発言した趙啓正氏は、中国と米国で行われた世論調査を引き合いに出しつつ日中関係と中米関係を経済や国民感情といった面から比較したのち、自身が原子力物理学を専攻した経験から、「原子力の平和的利用に関する日中間の協力のポテンシャルは非常に高い」と述べ、原子力の安全性に関する日中協力や、エネルギー分野における情報交換に期待を示しました。
長谷川氏は、世界の地域別人口予測といった数値を示しながら、中長期的な将来においては「食糧・エネルギー・環境問題・水不足・などの様々な問題が深刻化していく。その中では、ある程度の解決策を提供できる技術先進国としての日本と中国が、手を差し伸べる義務がある。日中がお互いを助け、補完し合い、これらの課題を解決していく必要がある」と述べました。そしてTPPやFTAといった経済連携の枠組みについても、可能なものから実現し、包括的なアジア経済圏を実現していくべきであると主張しました。
続いて中国側より呂祖善氏が発言しました。呂氏は自身がかつて省長を務めた浙江省と日本とのつながりの強さを様々な例を引きつつ説明した上で、日中間の地方と民間の連携について「大局、長期的かつ戦略的な視野を持つことが大切である」と指摘し、そのために、「地方と民間の交流を日中関係の交流全体の過程の一部に位置づけ重視する」「より遠大な目標を立て、それに向かって友好関係を構築していく」「地方と民間の交流における文化・人的交流の拡大」「青少年交流の重視」という4つの視点を提案しました。
林氏は、日中友好議連の事務局長としての体験をもとに、日中関係が悪化した際には両国の指導者の間の信頼関係が重要である旨指摘するとともに、今後の日中関係について、「戦略的互恵関係の次はどのような関係を目指すのか、互いに感情的にぶつかりあうのではない、大国間の『大人の関係』を考えていくべきではないか」と問題提起しました。そして、日中両国間に複数のパイプがあり、アジア諸国から見ても、「日中がアジア太平洋をリードしていくと安心してみていられる関係となること」が重要であると指摘しました。
魏建国氏は、今回の世論調査の結果に対して、「現在の日中関係がきわめて困難な時期にあるとは思わない」と指摘した上で、その根拠として、日中経済関係や相互の人的往来が再びそうか傾向にあることを様々な数値をあげつつ説明しました。そして、「日中双方の相互信頼と理解の深化は現在の急務であり、今後の日中間の協力についてこのフォーラムも知恵を出さねばならない」と述べ、「民間による中日双方の戦略的産業に関するタスクフォースの設立」「日中FTAの締結に向けた具体的な工程表の作成と提示」「中継型から市場投資型への対中投資の戦略的転換」の3点を提案し、これらによって「未来へ向けた中日の斬新な協力の局面が実現できる」と主張しました。
そして最後に、日本側司会を務めた宮本氏からパネリストに対し、「世界と未来に向けた新しい日中関係」という今回のフォーラムのテーマにふさわしく、様々な具体的提案を行った日中双方のパネリストに対する感謝が示され、全体会議は閉幕しました。
午後には、政治、経済、メディア、安全保障、地方の5つのテーマに分かれた分科会が開催されます。議論の詳細は各分科会の報告記事をご覧ください。
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