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 【発言録】 1日目 全体会議 page 3

 

国分氏(司会)  それでは、続きまして中国側程永華大使(中華人民共和国駐日本国特命全権大使)宜しくお願い致します。

発言録 1日目 全体会議 31
中国側政府挨拶
程 永華氏

 

 ご来賓のみなさま、今日のご来場ありがとうございます。今回、第6回のフォーラムが日中関係だけでなく、アジアの発展と繁栄について真剣な議論が成功できることを心より期待し挨拶を申し上げます。

 2005年に、私本人はこのフォーラムの立ち上げに参加しました。中日間が共に関心のあることを真剣に議論をすることで、中日関係に大きな貢献ができました。中国と日本は近隣国であり、両国の歴史も長く、中日友好は言うまでもなく重要であります。中国は改革開放で独自の道を切り拓き、大きな変化をもたらしました。そして、日本は中国の近代化に対して大きなご協力をして下さいました。

 実際、中日関係は戦略的互恵関係に置かれていますが、これは確かにそうだと私は思っています。なぜかと申しますと、中日友好は両国の利益になるからです。両国友好はアジアを振興させるためにも重要な役割があります。日中両国は「和をすればともに利益を得、もし戦争をすれば、ともに損をすることになります」。これはアジア全体にも影響を与えます。中日関係は人文交流や経済貿易など、様々な分野において日中間だけでなく、アジア全体の交流もますます増えるでしょう。現在、国際情勢は深刻な状況の中、中日両国は新しいチャンスに直面しています。友好関係を継続させていくためにも、多くの課題にも直面しています。

 まずは、政治面に関しては相好信頼関係を築くためにはハイランクの直接対話などがより行われることを期待しています。そして、多くの分野において協力関係を結び、省エネ、環境、防災などにおいて、両国の新たな協力パターンを世界に示すべきです。さらに、文化交流面において、文化や地理的な近さを利用して両国の間に意義のある基盤を築くことが大事です。

 次に、中国と日本の間にFTA協定などに関しても、東アジアでの協力を推進すべきだと思っております。

 中国と日本は隣国で、パートナー関係をより高いレベルに発展させるためにも、本フォーラムで率直に話し合い、お互いに刺激を与えることを期待しております。

 

国分氏(司会)  続いて、基調講演に入りたいと思います。まず元日本国内閣総理大臣福田康夫先生宜しくお願い致します。

発言録 1日目 全体会議 32
基調講演
福田 康夫氏(元内閣総理大臣)

 

 今日は大勢の皆さんが集まり盛大に行われますことを、お喜び申し上げます。

 先日、私は上海万博を訪れまして、中国館、日本館の人気があることを知り喜びました。そんな、上海万博は現在、来場者数が4100万人に至っているそうであります。

 さて、このフォーラムは第6回目となりまして日中の重要なチャネルとなってきており、共同事業の一つの成果だと考えています。同様に、言論NPO、チャイナ・デイリー双方が行っている世論調査も重要な調査と位置づけられており、学会やマスコミなど各界から評価を得ております。

 日中関係をどうするかは官房長官時代、私の頭を悩ませたことの一つであります。そんな、日中関係が落ち着いたのは安倍元首相の訪中の時からであります。これには安倍元首相、胡錦濤主席両者の大きな貢献がありました。私が訪中した際は、具体的方向と内容を確立することが重要で、それはどちらかというと内向きになりがちな両国の関係をアジアへ向いた開かれた関係にすることが重要でありました。

 このような、戦略的互恵関係の強化とは具体的には、(1)互恵協力の強化、(2)日中の防衛交流や青少年4000人の交流などの相互理解の促進、(3)地域間の協力、(4)東シナ海問題の早期決着などであります。これらのうち重要な問題は、いくつかは解決され、それ以外も前向きに進んでいるところであります。例えば、日中の防衛交流については自衛隊が中国への訪問を戦後初めて実現しました。地域間の協力として気候変動は現在進行中で、東シナ海問題は最近交渉が再開されたところであります。これらの問題は国民の間のイメージ形成に影響を与えるだけに重要であります。今後はいかに制度化し、継続させていくのかが重要であると思います。

 東京‐北京フォーラムは6回目でありますが、まだ、相互不信は緩和されておらず、改善していかなければなりません。先日行われた世論調査の中で、前向きな成果が現れているのは、改善へ向けての日中の協力の成果だと思います。日中両国の関係発展は、世界の利益になりますが、関係をさらに発展させようとするときに重要な点は、政治的なリーダーシップで、世論に惑わされずに進むことが大切であります。

 一方、経済に目を転じてみると、世界経済は現在苦境に立たされており、日本も経済だけではなく政治も混迷を極めています。これに対して中国は、問題はあるものの今年世界第二位のGDPが期待されているように経済運営は安定しております。今後も世界の成長センターとして成長していくでしょう。こんなときに心に留めてほしいのは驕りを感じないで欲しいということであります。日本はかつて日露戦争の勝利で国としての絶頂期を迎えたことがあります。しかし、その後に第二次大戦で破局への道を歩みました。その背後には日本には「驕り」があったのだと歴史は教えてくれます。中国は大国への道を進んでいますが、アメリカや日本がかつてそうだったように大国は指弾を受ける運命にあります。そのような時には大国として透明性をもって国際社会に説明することが必要ではないかと感じています。

 最後に私から日中関係に関して3つの提案をしたいと思います。一つ目は日中両国ともに大局的観点に立ち、主張すべきところは主張し、譲るべきところは譲る等折り合いをつけることであります。相手の心に思いを馳せ、解決を図る、譲り合いの精神が日中両国には必要なのではないかと思います。二つ目は、日中を単純に比較すべきではないということであります。両国は、国土、経済力、価値観などあまりにも異なる点が多いです。ただ単純に、統計上の数字を指摘するだけでは、両国の感情を逆なでするだけです。日中の真の意味を踏まえた両国の関係を捉えるべきではないでしょうか。三つ目は、東京‐北京フォーラムのような非国家の繋がりを広げるべきであります。日中両国の関係の強化には国家の関係だけではなく、青少年交流など関係の深化が必要であります。若者の交流は思い出となり、やがては両国の関係にとって良い効果が出るのではないかと思います。

 日本と中国の関係は強大な経済大国で、改善の方向に先導することは両国の使命であります。今後とも、両国の関係の発展につながる議論が進むことを期待し、挨拶を終わらせて頂きます。

 

親カテゴリ: 2010年 第6回
カテゴリ: 発言録