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11月2日午後に開催された分科会「地方対話」においては、全体の議題を「地方交流の促進、協力分野の開拓」と設定し、前半部では「地方間の交流を促進し、相互に有益な協力関係を推進する」をテーマとし、議論が交わされました。
前半部には日本側パネリストとして香山充弘氏(財団法人自治体国際化協会理事長、元総務省事務次官)、森民夫氏(全国市長会会長、長岡市長)、青山裕治氏(青森県副知事)が、中国側パネリストとして白庚勝氏(雲南省人民政府副事務総長)、朱英璜氏(中国日報社前総編集長)、戴玉林氏(大連市副市長)、李崴氏(広東省江門市副市長)、湯超穎氏(中国科学院博士)が出席しました。基調報告は山田啓二氏(京都府知事)と戴玉林氏が行い、司会は増田寛也氏(株式会社野村総合研究所顧問、元総務大臣)と唐聞生氏(宋慶齢基金会副主席、中華全国帰国華僑聯合会顧問)が務めました。
まず、司会の増田氏が「日中の地方同士の交流を促進することが両国の経済発展にも重要だということで昨年から地方対話が始まった。この分科会をwin-winの関係を築くために何ができるかを探る場にしたい」と挨拶し、地方対話が始まりました。
最初に中国側の基調報告を行った戴玉林氏は、日中関係のさらなる深化のために、1.企業間における技術サービスの共同利用 2.省エネ、環境保全技術 3.物流の強化 4.港都市との連携強化 5.日本の地方各都市と連携し、win-win の関係をつくること 6.文化交流の促進、を行なうことで、「両国関係が今後新たな段階に入ることを望む」と述べました。
続いて山田啓二氏が日本側の基調報告を行いました。山田氏は、「今回のフォーラムにあわせて行われた世論調査によると、『民冷経熱』と言われるように、日中両国民はお互いに相手国に対し悪い印象を持っているのは残念だが、厳しい事態を打開する大きな原動力になるのがこの地方対話ではないか」と述べました。そして、「地方は具体的、実体的な行政を担い、生活に肉薄した交流がある」とし、地域交流を続けることによって、経済、観光に留まらず、文化の相互理解まで到る「面的な交流を続けられる」ことが地方対話のいい点だと強調し、最後に「地方対話は日中関係を強固にする役割を果たせると思う」と述べました。
これに対し、司会の唐聞生氏は「民間の交流が熱くなれば、両国間の関係も熱くなるでしょう」と賛同しました。
基調報告ののち、各パネリストによる議論が行われました。まず朱英璜氏が発言し、「中国では急激に都市化が進んでいるが、過度の開発、文化破壊など課題もかつてないほど大きい」と述べました。そして「中国の都市は独自の都市化を進めるべきだが、公害問題への対応や、個性ある都市の発展など日本の経験も参考にすべきだ」と主張しました。
これに対し増田氏も、「日本は深刻な公害問題に対面して、技術開発を行ったいい例になる。日本は高齢化社会を迎え、都市間の格差問題に直面している。日本の都市は、中国の都市の一歩先に課題を抱えており、こうした日本の経験を中国と共有する意義は大きい」と応じました。
香山充弘氏は「金融危機を契機として、日中関係を深め、アジア的な経済モデルを支配的にしていく必要があるとの認識が深まった。現在は、日中両国が鳩山首相の言う東アジア共同体を共通の目標とする時期にある」としました。そして、こうした時に地方政府が力を発揮できる第一のこととして、「共同体の機運をもりあげること」を挙げ、第二のこととして、「共同体ができたかのように先進的に地方間の交流をすすめ、具体的な問題の解決をはかっていくことだ」と述べ、その例として青少年の交流促進プログラムを共同で行なうことと中小企業の海外進出のサポートを挙げました。
次に、白庚勝氏は地域の独自な文化に着目し、お茶や仏教僧の往来など、古来からの雲南省と日本の交流に触れながら、「雲南省の豊かな文化と日本の先進的技術を用いて、文化産業を育成し、両国で大きな利益を生み出していきたい。」と述べました。
増田氏も、「文化の基礎が東アジア共同体の基礎としても重要だということがよくわかった」と賛同しました。
さらに森民夫氏は、「地方の特色を活かし、自分の頭で考えることが重要であり地方分権を目標としている」「市民が受動的では、地方が活性化しないため、住民自治を重視していきたい」と語りました。そして「中国は国土が大きく、日本より地域性があるという印象を持っており、経済発展のみならず地域性も重視してほしい」と述べました。
唐氏も「中国の市長も同じ考えだと思う」と賛同し、広東省江門市副市長である李崴氏に発言を求めました。
今回のフォーラムのテーマである金融危機について、李氏は「経済の大幅衰退は避けられたものの、経済回復のための道のりは長」く、「経済の回復を目指し、日中両国で協力分野を開拓していくことが重要だ」と述べました。そして、1.経済危機の中で温暖化対策、2.経済危機による地方企業の構造転換、3.グローバル化について日中で協力していくことが「経済危機を乗り越える上で重要だ」とし、「中央はマクロな交流を、地方は実効的な交流を行う。両者は車の両輪」だと述べました。
青山佑治氏はこれに応えて、「経済面の交流、環境問題など国内のみでは解決できない問題などに地方間交流は大事なものになってくる。中央の外交、民間の交流に並び、地方の交流は大事だ」と語りました。
最後に湯超穎氏が、組織行為と技術イノベーション管理の教育に従事する立場から、「管理人材の育成についても日中での連携が必要」と述べ、司会の増田氏が賛同の意を表明し、前半の議論は終了しました。
「地方対話」の後半部では、「都市の発展の機会と挑戦」をテーマとして、参加者が入れ替わり、パネリストとして日本側から齋藤彰氏(舞鶴市長)、増田寛也氏、山田啓二氏、松本盛雄氏(在瀋陽日本国総領事)、中国側から陳昊蘇氏(中国人民対外友好協会会長)、周漢民氏(上海万国博覧会執行委員会副主任 上海市政治協商会議副主席、民主建国中央委員会副主席)、孫尭氏(黒竜江省人民政府副省)が出席しました。基調報告を行ったのは、森民夫氏(全国市長会会長、長岡市長)、陶斯亮氏(中国市長協会専任副会長)、司会を務めたのは日本側は香山充弘氏、中国側は陳永明氏(上海師範大学教育学院院長)でした。
まず日本側の基調報告から後半の分科会は始まりました。森民夫氏は、新潟中越地震で被災した長岡市が、「住民の意欲の再生」を目指して生活再建を行った経験を語りました。そして、「四川大震災を機に、四川省との交流が始まり、長岡市民は交流を通じて元気になっていると感じる」と述べました。そして、「都市が元気であるためには、『交流』と『市民自身の創意工夫』の2つがポイント」であり、特に「市民が自ら元気になる力をどう引き出すかが行政の力だと思う」と語りました。
中国側の基調報告者である陶斯亮氏は、森氏が強調する「交流」について、「中日の姉妹都市は200を越え、地方都市間の交流は、政の冷・熱に左右されない、中日関係の楚となる強固な関係になっているのではないか」と応じました。また、後半の分科会のテーマである「都市の発展」にも触れ、中国の「環渤海地域などの都市化による潜在的成長力の高さに注目すべきだ」としながらも、「都市化の発展に関する考え方は変わりつつあり、工業化が完全に終わっていない地域では、環境意識が高まっている」と注意を促しました。そして、環境意識の高まりに伴い、行政も経済
成長と環境の両立のために「都市をどう管理するかを重視するようになってきた」と指摘しました。
この発言を受けて陳昊蘇氏は、「都市間の交流は点と点の交流だが、一連の都市、数が増えれば面になり、より積極的な役割が生まれるだろう」と述べ、「環境などで協力し、都市間交流のプラットフォームをつくっていきたい」と語りました。
これに対し増田寛也氏は、「プラットフォームづくりは極めて重要なことだ」と賛同しました。また、度々話題となった「都市化」について触れ、「都市化とは、人口膨張によって都市の外へエネルギーが向かうことである。しかし中国はこれから高齢化の進展に直面し、都市は空洞化して、逆に内にエネルギーを向けていくことが必要になる。しかし、外側に張り巡らせていたインフラを内部に移していくことは、周辺部のインフラから撤退するという大きな課題に直面することを意味」し、「街の構造ががらっと変わることの難しさをいたるところで感じている」と述べました。
そして青森が、高齢者を中心部に集めて、できるだけコンパクトに街を再構成することに成功したという例を紹介しました。また、「都市は経済の裏打ちがあって成り立つもの」であるから、「都市の中に消費者がいない場合、会社は消費者を求めて外に向かうことになる」と述べ、中小企業も消費者を求め、経済的には外に向かって新たなビジネスチャンスを持ちたいと考えている会社は多い」と指摘しました。そして、規模の大きくない企業が外に目を向けている時に、チャンスを実現させるために手を貸すことが地方政府の大事な役割ではないか、と問題を提起しました。
来年に上海万博を控え、周漢民氏は「日本の万博の経験から中国は示唆を得て、万博を成功させたい」と述べました。それに対し、司会の香山氏は「日本側としてもできるだけ協力したい」と応じました。
山田啓二氏は都道府県の立場から、後半の分科会のテーマ「都市の発展の機会と挑戦」を取り上げ、「都市には都市の管理という観点から、都市としての個性をどう活かすか、が問題になる。」と述べました。そして京都を例にとり、文化や環境との調和を図りながら、都市の発展を抑制する方向に京都は向かっている」と説明し、具体例として、景観への配慮、環境への配慮を重視していることを説明しました。
孫尭氏は、黒竜江省の資源、観光資源の潜在力について説明しました。
また、香山氏から、「国レベルのエキスパートとして地方をどう見ているか」と問われ、松本盛雄氏は自身の東北三省での勤務の経験を踏まえながら、「日中の都市交流は、長年の交流を経て、お互いに厚い信頼の基礎ができている。今後は、いかに実質的な利益を求めていくかが課題だ」としました。しかし「実質的な利益を得たい場合に、必ずしも両国の思惑が一致していないことが多い」「都市により状況、環境は違うのだから、何が一番必要かを追求して求めることが大事だ」と述べ、「都市と都市との協調が必要であり、お互いに協力しながら補完的に発展していこうという動きは歓迎すべき」としました。そして度々話題になった中小企業の誘致についても、「日本も中国も関心を持っているが、お互いの接点が少ない。接点をいかに作っていくかが課題であり、具体的なひとつひとつの接点をを積み重ねていくことが交流の基礎になるのではないか」と述べました。
最後に香山氏が「各都市が色んな顔を持っていることがわかってもらえたと思う。ぶれることなく本当に有効な地域交流を担えるのが地方都市であり、その意欲が高い人がたくさんいることがわかったのは大きな収穫である」と述べて、本日の討論を締めくくりました。
時間 | 日本側 | 中国側 | |
13:30-
15:30 (現地時間)
14:30-
16:30 (日本時間)
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司会 | 増田 寛也 (株式会社野村総合研究所顧問、元総務大臣) |
唐 聞生 (宋慶齢基金会副主席) |
基調報告 | 山田 啓二 (京都府知事) |
戴 玉林 (大連市委員会常務委員、人民政府副市長) |
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パネリスト |
青山 祐治 (青森県副知事) |
白 庚勝 (雲南省人民政府副事務総長) |
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森 民夫 (全国市長会会長、長岡市長) |
李 崴 (広東省江門市副市長) |
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香山 充弘 (財団法人自治体国際化協会理事長、元総務省事務次官) |
湯 超穎 (中国科学院博士) |
時間 | 日本側 | 中国側 | |
15:50-
17:50 (現地時間)
16:50-
18:50 (日本時間)
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司会 | 香山 充弘 (財団法人自治体国際化協会理事長、元総務省事務次官) |
陳 永明 (上海師範大学教育学院院長) |
基調報告 | 森 民夫 (全国市長会会長、長岡市長) |
陶 斯亮 (中国市長協会専任副会長) |
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パネリスト | 齋藤 彰 (舞鶴市長) |
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増田 寛也 (株式会社野村総合研究所顧問・元総務大臣) |
周 漢民 (上海万国博覧会執行委員会副主任、上海市政治協商会議副主席、民主建国中央委員会副主席) |
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山田 啓二 (京都府知事) |
孫 尭(黒竜江省人民政府副省長) | ||
松本 盛雄 (在瀋陽日本国総領事) |
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